STORY16-END 『…悪質』
朝目が覚めた忍が体を起こすと朝日が窓の外から入ってきていた。
ふと隣を見ると寝てるはずの柚子葉の姿がない。
忍は起き上がってリビングに顔を出す。
が、ここにも柚子葉の姿が見えなかった。
まさかと思い深夜の部屋にも顔を出した。
深夜の部屋には秀太の姿があったが部屋の主の深夜の姿がなかった。
「おかしいわね。二人で散歩にでも行ったのかしら」
忍がそういってリビングのソファーに近づくと人の頭らしきものが見えた。
忍がゆっくり近づくと深夜と柚子葉が幸せそうに寝ていた。
それを見て忍は笑みを零し、携帯を取り出して写真を撮った。
その後、ふと思い出して自分の部屋に戻ってデジカメを持ってきた。
そのカメラを使って写真を撮ろうと構えると深夜が目を開けて睨んできた。
「何やってんだ姉貴」
「あら、起きたの?」
「あぁ。たった今な」
深夜が起き上がろうとすると忍が止めた。
「あんたまだ寝てなさい。柚子葉ちゃんが起きちゃうでしょ」
忍の言葉を聞いて深夜が自分の体を見ると柚子葉が深夜の体に抱きついて寝ていた。
深夜は今の格好を見て深夜のことを思い出した。
「そっか。俺も寝ちまったのか」
「あんた達何でここで寝てたの?」
「深夜に喉が渇いたから飲み物を飲みに起きたら丁度柚子葉も起きたんだ。先に柚子が寝て俺も気がついたら寝たみたいだな」
「あらあら、密会なんてラブラブね」
「密会なんてもんじゃねぇよ」
深夜と忍が話していると柚子葉が目を覚ました。
「あらあら、起きちゃったみたいね」
「おはよう、柚子」
寝起きのためか柚子葉の頭はまだ働いてないようだ。
が、柚子葉の目の前に深夜の顔があったのですぐに深夜から離れた。
「え?あ、え?」
「柚子、少し落ち着け」
柚子葉の反応を見て深夜は笑いながら柚子葉に話しかけた。
柚子葉のほうといえば何故自分の前に深夜の顔があったのかわかっていないようだ。
「あれ?何で私ここで寝てるの?」
「は?お前覚えてないの?」
「え?」
「深夜ここで飲み物飲んだだろうが」
「あ!ここでオレンジジュース飲んでそれから…それからどうしたんだっけ?」
「お前気がついたら寝てたんだよ。俺も寝たみたいだけど」
「あ、ごめんね。もしかして私深夜を枕にした?」
「別にいいよ。さて、じゃあ朝飯の準備するか」
「あ、私も手伝うよ」
「じゃあ、頼むわ」
深夜と柚子葉は二人連れ添って台所に向かった。
忍はそんな二人の後姿を見て笑みを浮かべた。
秀太も起きてきて深夜と柚子葉が作った朝食を4人で食べていると勇一が帰ってきた。
「ただいま」
「あ、おかえり」
「おかえりなさい」
「お邪魔してます」
「あれ?山下と秀太君どうしたんだ?」
「昨日台風だっただろ?だから家に泊めたんだ」
「へぇ〜。あ、俺も朝飯くれよ」
勇一もテーブルに座った。
深夜は勇一の分を準備してテーブルに置いた。
忍はニヤニヤして勇一に話しかけた。
「ねぇねぇ、勇一」
「何だよ。そのニヤニヤ顔」
「これ見てよ」
忍は携帯を勇一に見せた。
勇一はそれを見て目を見開いた。
が、すぐに意地悪な笑みを浮かべた。
「おぉ〜。すげぇなこれ」
「これお父さん達に送ったほうがいいかな」
「送ったほうが喜ぶんじゃないか?」
「何だ?それ」
深夜はそういって忍の手から携帯を奪った。
そしてその携帯に写っている写真を見て声を出した。
「はぁ!何だよこれ!」
「し、深夜?どうしたの?」
「これ」
深夜は携帯を柚子葉に見せた。
柚子葉はそれを見て顔を赤らめた。
携帯には深夜と柚子葉が抱き合って眠っている姿が写っていた。
「いつこんなの撮ったんだよ!」
「え?あんた達が眠ってるとき」
「最悪…。まだ親父達には送ってないんだろ?」
「ええ」
「頼むから親父達には送らないでくれよ」
「もちろんよ。そんなことしたら柚子葉ちゃんが困るでしょ?」
「俺はどうでもいいのかよ…」
「だから送りはしないわ。さっきのは深夜をからかうためだもの」
「…悪質」
「何か言った?」
「別に何も言ってねぇよ」
深夜はそのまま食事を口に運んだ。
忍と勇一は深夜の姿を見て顔を見合わせ笑みを浮かべた。
柚子葉はまだ顔を赤いが食事を再開した。
その日は、恭子が帰ってくるまで柚子葉と秀太は深夜の家で楽しい時間を過ごした。
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