STORY16-3 『柚子。…人気者だな』
部屋に入ると深夜が園児達に囲まれている。
柚子葉はその光景をうらやましそうに見ている。
忍はそんな柚子葉を見て話しかけた。
「柚子葉ちゃん?どうしたの?」
「あ、いえ。ただ、深夜がうらやましいと思って。私もあんなに子供好かれたいなぁ」
「柚子葉ちゃんだってすぐに好かれるわよ」
柚子葉と忍に気づいたのか深夜が園児達になにやら耳打ちをしている。
深夜と話していた園児達が数人柚子葉のほうに向かってきた。
園児達は柚子葉の手を取って話しかけた。
「おねえちゃんもあそぼ?」
「え?いいの?」
「うん。しんやおにいちゃんがよんでこいって」
柚子葉が深夜のほうを見ると柚子葉を手招きしている。
柚子葉を呼びに来てくれた園児達の手を取って柚子葉は深夜に向かって歩み寄る。
「深夜?どうしたの?」
「俺だけだときついから柚子も手伝ってくれよ。慣れてるだろ?」
「う、うん」
柚子葉が頷くと秀太が近づいてきた。
「おねえちゃん。いっしょにあそぶの?」
「そうだ。さ、皆お姉ちゃんに遊んでもらえ」
「わ〜い」
深夜の言葉に秀太が最初に柚子葉に近づいた。
それに続いて園児達も柚子葉に近づいた。
柚子葉は園児達に囲まれて困ったように深夜に顔を向けた。
「し、深夜。こんなにいっぱいは無理だよ」
「はいはい。俺もいっしょになって遊んでやるからそんな情けない声出すなよ」
深夜は柚子葉の周りにいる一人の園児を抱き上げた。
他の園児達も抱き上げて欲しいのか深夜に集まった。
女の子は柚子葉に折り紙を教えてもらっている。
忍はそんな光景を見て笑みを零した。
園児達と遊んでいると深夜の携帯が鳴り出した。
深夜は携帯を取り出して着信相手を確認した後、園児達に向け口を開いた。
「ちょっとストップ」
深夜はその部屋を出て廊下に行くと電話に出た。
「もしもし。勇兄?」
『深夜か?今から学校出るから5分後ぐらいには保育園に着くと思う。保育園に着いたらまた電話する』
「分かった」
深夜は電話を切りさっきまで遊んでいた部屋に顔を出して柚子葉を呼んだ。
「柚子。…人気者だな」
少し部屋を出ていたら柚子葉の周りを園児達が囲んでいた。
普段遊べないお姉ちゃんがいるので園児達も嬉しいようだ。
「そんなこと言ってないで助けてよ」
「分かった分かった」
深夜は柚子葉を囲んでいる園児達に近づいた。
「ほら、皆お姉ちゃんが困ってるだろ?もうすぐ俺達は帰るからまた今度な」
「え〜」
「また遊びに来るから。なぁ、柚子」
「う、うん。ね、また今度遊ぼう?」
「やくそくだよ?」
「うん。約束」
柚子葉は園児達と指きりげんまんをしている。
深夜は秀太に声をかけた。
「秀太。帰る仕度をしような」
「うん」
「いいなぁ〜、しゅうたくん。おにいちゃんとおねえちゃんがいて〜」
「えへへ」
「また遊んでやるから。さて、柚子。俺達は園長室に戻ろう」
「そうだね」
深夜と柚子葉は園児達に手を振って園長室に入った。
園長室に入ると忍が仕事をしていたが深夜達が入ってきたのを見て仕事の手を止めた。
「あら?どうしたの?」
「勇兄から電話があって学校出るって言うから戻ってきた」
「あ、そうなんだ。じゃあ、秀太君に帰り支度をさせないとね」
忍はそういって園長室を出て行った。
深夜は自分のカバンと柚子葉のカバンを持った。
「柚子。悪いけど俺の制服も持ってきてくれないか?」
「分かった」
柚子葉は深夜に言われたとおり自分の制服と深夜の制服を持った。
深夜が玄関に向かって歩き出したのを見て柚子葉も深夜に後を追って歩き出した。
深夜と柚子葉は玄関に着くと持っていた荷物を降ろした。
玄関で話してると深夜の携帯が鳴り出した。
深夜は携帯を耳に当てる。
「はい」
『着いたぞ』
「了解。じゃあ、今から車まで行くわ。どこにいる?」
『駐車場に一番近いドアのところ。ここならあまり濡れないで済むだろ』
「分かった」
深夜は携帯を切って柚子葉に話しかけた。
「勇兄着いたってさ。で。駐車場のほうにいるからそっちのほうに行こう」
深夜は二人分のカバンを持って駐車場のほうに歩き出した。
柚子葉も二人分の制服を持って深夜の後を追って歩き出した。
途中で深夜達は園児達が集まっている部屋に顔を出した。
「お〜い、秀太。帰るぞ」
「あ、は〜い」
帰り支度を済ませた秀太が深夜達のところに駆け寄ってきた。
深夜は片手にカバンを持ち直して空いている手で秀太の手を握った。
そのまま駐車場のほうに歩いて行くと勇一と忍が話していた。
勇一が深夜達に気づき手を振った。
「お〜い、ここだ」
「仕事中ごめん」
「いいって。そんなに大切な仕事もなかったし。とりあえず車まで行くか」
勇一の言葉に深夜達は頷いた。
勇一の車までは屋根が続いているので濡れなかった。
後部座席に秀太と柚子葉が、助手席には深夜が座った。
運転席に座った勇一が話しかける。
「じゃあ、出すぞ」
「あぁ」
「すいません。よろしくお願いします」
勇一は前を向いて車を走らせた。
マンションの地下駐車場に車を入れ、深夜達を降ろした勇一は深夜に話しかけた。
「じゃあ、俺仕事に戻るから。もしかしたら今日は深夜の家には行かないかも」
「分かった。仕事中ありがとう」
「いいって。じゃあな」
勇一はそういって車をまた走らせた。
深夜と柚子葉、それに秀太はエレベータに乗った。
エレベータの中で深夜は柚子葉に話しかけた。
「柚子。今日も来るんだろう?」
「うん。そのつもり」
「分かった」
エレベータが8階に止まったので柚子葉と秀太はエレベータを降りた。
「じゃあまた後で」
「うん」
深夜の乗せたエレベータはそのまま9階に昇っていった。
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