STORY2-END 『これって運命なんじゃないの?』
午後の授業も終了し、帰りのHRも終了した。
深夜と翔は二人連れ添って早々と帰っていった。
未だにあの二人が仲がいいのをまだ不思議に思ってる真希と圭を促し柚子葉は一緒に近場のファミレスに入った。
もうすぐ実力テストなので試験勉強をしたかったからだ。
ここだとドリンクバーがあるのでいつも試験勉強をするときはここを使うようにしている。
店の中に入って店員に案内されている時に店の中を見渡しながら歩いていると誰かにぶつかってしまった。
「すいません」
「山下のほうは大丈夫か?」
「へ?」
自分の名前を呼ばれたので顔を上げるとぶつかった相手は翔だった。
「なんでここにいるの?」
「なんでって試験勉強。山下たちは?」
「私達も試験勉強をするためにここに入ったの」
「何だ。じゃあ一緒にするか?」
「う〜ん、真希達どうする?」
「私達よりは前田のほうが成績がいいから教えてくれるんならお願いしたいな」
「私もいいよ」
「よし、じゃあ俺達のテーブルのほうに行くか」
そういって翔は歩き出した。
案内してくれた店員に断りを入れて柚子葉は真希達と翔の後を追った。
柚子葉は翔が言った『俺達』という言葉に引っ掛かっていた。
『達』というには他の人もいるのだろう。
昼の深夜と翔のやりとりを思い出した。
まさかと思いながら歩き続け翔のテーブルが見えると翔のテーブルには翔以外の制服姿の生徒が一人座っていた。
その生徒は案の定深夜だった。
深夜は真希達の姿を見て呟いた。
「翔…」
「いいだろ?大勢でやったほうが楽しいって」
「あのな〜…まぁ、いっか」
「えっと…いいの?」
「別に構わないだろ?」
「あぁ」
「じゃあ座って」
翔が柚子葉たちを座るように促す。
真希と圭は今更断るわけにもいかないので戸惑いながら翔が座ってる列に座った。
柚子葉は深夜の列に座った。
翔 真 圭
______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
深 柚
席の座り方を図で書くと上図である。
5人は試験勉強を始めた。
が、深夜は早くも寝てしまった。
柚子葉は勇一から深夜は学校の試験を真面目に受けないというのを聞かされていたので特に気にすることもなく勉強をしていた。
勉強を始めて少しすると真希が質問をしてきた。
「ねぇ、柚子葉。ここ分かる?」
「え?どこ?」
柚子葉は真希が指差している教科書をのぞきこんだが分からなかった。
圭にも聞いたが分からなかったので翔に聞いてみた。
「ねぇ、前田君。ここなんだけど?」
「う〜ん、俺にも分からん」
翔は少し考えたが分からないようだ。
すると、翔は深夜の頭を叩いた。
「おい、深夜。ここ教えてくれ」
「ん?どこ?」
「これだ。この問題」
「これは一回展開してこの公式を使うと解ける」
「ほ〜、なるほどね。だってさ井上」
「あ、ありがと…」
真希はまさか深夜が解くとは思っていなかったのだろう。
まだ呆然としている。
今度は深夜は柚子葉のノートを指差した。
「あと、山下。ここ違う」
「え、嘘!?」
「途中の式が違うから答えが違う」
「えっと…あ、ホントだ」
「さっすが深夜先生」
「翔は一人でいいな」
「え!?ちょっとここ教えてくれ」
「は〜、どこだ?」
そういって深夜は翔の教科書を覗き込んで教えている。
柚子葉は真希と圭とひっそりと話している。
『ちょっと!どうして山上が前田に教えてるのよ!』
『え?それは山上君のほうが頭良いからじゃない?』
『でも山上はいつも欠点ギリギリじゃない!』
『じゃあ、直接聞いてみたら?』
『聞けるわけ無いじゃない!』
「そこ全部話が筒抜け何だけど」
「「「え!?」」」
三人が深夜と翔のほうを見ると翔は笑いを堪え、深夜は冷ややかな目をしてこちらを見ている。
三人が「アハハハ」と空笑いをしてると深夜がため息をついて口を開いた。
「井上、田中、山下」
「「な、なんでしょう…」」
「俺が良い成績とったらどう思う?」
「えっと…」
「俺が良い成績とったらカンニングと思わないか?」
「思う…」
「だろ?だから俺はテストを真面目に受けないんだ」
「こいつ実際俺よりも頭良いから」
「そうなんだ」
柚子葉は昨日の内に勇一から事情を聞いていたので知ってはいたが深夜が柚子葉も知らないと仮定してこうして話をしているので柚子葉もそれに乗っかった。
まだ、真希と圭は信じれてないようで疑いの目を向けている。
「ま、信じるも信じないもお前ら次第だから」
そういって深夜はまたさっきの問題を翔に教え始めた。
真希達もまだ疑ってるのかいろんな問題を深夜に聞いてみた。
が、深夜は教えない。
「ちょっと!どうして教えてくれないの!」
「お前ら問題を解こうとしてないだろ」
「そんなこと…」
「あるだろ?最初から解こうとしてないなら教える必要は無いし、実力にはならないから。俺間違ってるか?」
「グッ…」
「…正論です」
「まずは自分の力で解け。俺を疑うのはいいが勉強しないと困るのはお前達だろ」
「「はい…」」
真希と圭が深夜に攻められて小さくなったのを見た柚子葉は翔と顔を見合わせて笑みを零した。
それから深夜は真希達が考えて分からなかった問題は教えてくれた。
6時過ぎに勉強会は終了した。
入り口で帰り道によって真希と圭、深夜と柚子葉と翔のグループに別れた。
二人は深夜と一緒に帰る柚子葉を心配していたが大丈夫だからと二人をなんとか帰した。
そして、三人も家に向けて歩き始めた。
「山上君ごめんね」
「何が?」
「私のせいで勉強のことバレて」
「山下のせいじゃないだろ。なぁ、深夜」
「あぁ、それと山下」
「何?」
「あの二人は信用できるか?」
「え?」
「もし、信用できるなら別に俺のこと言っても良いぞ」
「いいの?」
「あぁ。内緒にしてくれって言ったけど友達に嘘つくのは嫌だろ?」
「うん」
「だから信用できるなら別に言っても構わない」
「分かった」
それから二人が住んでるマンションに着いた。
「じゃあな、翔」
「おぉ。山下の家はどの辺なんだ」
「ここ…」
柚子葉はマンションを指差した。
「へ?一緒なのか?」
「あぁ、俺も昨日知ったんだけど俺の部屋の真下に山下の部屋があるんだ」
「へぇ〜」
「じゃあ、前田君また明日」
「あ、また明日」
そういって翔は自分の家に向けて歩き始めた。
二人はマンションに入りエレベーターを待っている。
「そういや、山下。なんていって説明するんだ」
「う〜ん、全部は話さないよ。とりあえず秀太を預けている保育園が山上君のお姉さんが勤めている保育園で丁度手伝いにきてた山上君と仲良くなったって言うつもり」
「そっか」
「うん」
二人は来たエレベータに乗り柚子葉は8階で降りた。
自分の部屋に入ると秀太が出迎えてくれた。
「お姉ちゃんおかえりなさい」
「ただいま」
「柚子葉おかえり。もうすぐご飯にするから」
「あ、うん」
母親の恭子が料理をしながら柚子葉に声をかける。
柚子葉は部屋着に着替えリビングで秀太の相手をしてると恭子に呼ばれた。
それから食事をしていると秀太が嬉しそうに昨日のことを恭子に喋りだした。
「あのね、きのうねしんやお兄ちゃんのいえにいったんだ!」
「深夜お兄ちゃん?あぁ、若先生ね」
「お母さん…。若先生って」
「あら、知らなかったの?皆若先生って呼んでるのよ」
「知らなかった…」
「でも、なんで若先生の家に行くことになったの?」
「実は…」
柚子葉は昨日のことを恭子に話した。
恭子は柚子葉の説明を聞きおわると驚いた様子で呆然としている。
「お母さん大丈夫?」
「ええ…。なんか凄いことになったのね」
「うん、まぁ。でも秀太が楽しんでいたし私も楽しかったよ」
「今度お礼言わないとね」
「うん」
「それにしても上に住んでて柚子葉と同じクラスなんて…」
「何?どうしたの?」
「これって運命なんじゃないの?」
「はいはい。運命ですね」
「あ〜、信じてないな〜」
「何かあるたび運命とか言われたって信じれないって」
柚子葉は食器を下げ自分の部屋に戻った。
そして柚子葉は真希と圭にメールで「明日話があるから早めに来て欲しい」と送信した。
二人から「いいよ」と返信が来た。
そして、次の日の朝三人は中庭に集まった。
柚子葉は真希と圭に昨日深夜に言った内容を伝えた。
伝え終わった後柚子葉は二人から責められた。
「何で昨日言ってくれなかったの!」
「えっと、山上君に内緒にしてくれって言われてて…」
「私達より山上のほうが大事だって言うの!」
「そんなことはないけど…」
「な〜んてね嘘だよ」
「え?」
「柚子葉がそうやって人の秘密をペラペラ喋る子じゃないことは知ってるから」
「そうそう。だから気にしなくていいよ」
「ありがと!」
「それよりも…」
「何?どうしたの?」
「山上が子供の遊び相手だっていうのは似合わないよね〜」
「そうそう!あの顔で子供達は怖くないのかね〜」
三人は朝のHRまでずっと中庭で話し合った。
そして教室に戻ると深夜と翔が話していた。
三人は深夜たちに近づいた。
「二人ともおはよう」
「うっす」
「おはよう〜」
「で、話したのか?」
「あ、うん。朝中庭でね」
「そっか」
「井上と田中も内緒にしてやって」
「分かってるって」
「そうそう。山上を敵に回したくないし」
「なんだよそれ」
「え?だってね〜」
「そうそう」
「「試験勉強を教えてもらえないじゃない」」
「あのな〜、俺をなんだと思ってるんだ?」
「不良の優等生?」
「子供好きな不良?」
「もう好きにしてくれ…」
「まぁまぁ、井上も田中も深夜いじめはそのぐらいにしてやって席に戻ったら」
「あ、そうだね」
真希と圭は自分の席に戻っていった。
深夜はまだ机に突っ伏している。
柚子葉と翔はそんな深夜の姿を見て笑みを零した。
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