STORY15-3 『離せ!今は急いでるんだ!』
二日目は、観光という形で自由行動はないがアメリカの街を見て回った。
深夜も前日は『面倒くさい』と言っていたが達志たちと楽しそうに回っていた。
そして、三日目。
自由行動の時間になった。
深夜達はブラブラと歩いている。
一緒に歩いている男子はお土産を買っているが深夜は何も買っていない。
男子が深夜に声をかける。
「山上は土産とか買わないのか?」
「俺?俺はアメリカに何度か来てるし」
「だからってお土産を買わないっていうのはどうなんだ?」
「姉貴にも別にいらないっていらないって言われたし」
「え?山上って姉貴いんのか?」
「悪いか?」
「いやいやいや、初めて聞いたし」
「そりゃあ初めて聞かれたし。姉貴と兄貴、それで二人とも結婚してるからさらに義理の兄と姉がいる」
「へぇ〜」
深夜が男子と話しながら歩いていると通行人とぶつかった。
「Excuse me」
「Excuse me」
深夜が謝るとぶつかった通行人も謝ってきた。
通行人が深夜の顔を見て日本語で声をかけてきた。
「あれ?深夜君?」
「へ?」
深夜も通行人の顔を良く見る。
「あれ?葉月さん何やってんの?」
「それはこっちのセリフなんだけど…」
「俺は修学旅行だよ。葉月さんのほうこそ一人で何してんの?一人?」
「ううん。慎一さんがこの辺にいるはずよ。お義父さんがここに買い物に行けっていうから来たんだけど」
「あ…」
深夜は初日の浩史との電話の内容を思い出した。
浩史に自由行動ができる範囲を聞かれた。
あれはこれを狙っていたのかと深夜は思った。
「深夜君?どうしたの?」
「あ、ううん。なんでもない。親父にやられたなぁと思ってさ」
さっきまで深夜と話していた男子が深夜と葉月のやりとりを聞いて話しかけてきた。
「あの〜、山上?」
「あ?」
「この人は?」
「あぁ、俺の兄貴の奥さん。つまり、俺の義理の姉さんって訳」
「へぇ〜」
深夜達のところに翔や達志たち他の男子達も集まってきた。
「山上?何やってんだ?」
翔は葉月の顔を見て首をかしげている。
「あれ?どっかで見た覚えがあるなぁ」
「そりゃあそうだろ。翔は一度ぐらい見た覚えあるはずだ」
「へ?え〜と…」
「葉月さんは?翔のこと覚えてる?」
「それが…」
深夜は葉月と翔の顔を見てため息をついた。
「二人とも俺が高二のときに会ってるんだよ。翔は兄貴が学校にきたの覚えてるだろ?」
「あぁ。あれだろ、校門のところに立ってたやつだろ?」
「その後俺と柚子と一緒に帰ったよな?そのとき、親父とお袋と葉月さんがいたのは覚えてないのか?」
「…覚えてない」
「じゃあ、いいや。葉月さんは兄貴の奥さんだよ」
「あ!思い出した!」
翔は深夜の言葉を聞いてやっと思い出したようだ。
葉月は深夜の説明の途中ですでに思い出していたようだ。
「そっか。それで見覚えがあったんだ」
「あぁ。さて、俺らはお土産買いに戻りますか?」
「え?山上いいのか?」
「何が?」
「だってお兄さんも近くにいるんだろ?会わないのか?」
「別にいいさ。つい数ヶ月前にあったばかりだし。じゃあね、葉月さん。親父と兄貴によろしく」
「分かったわ。深夜君も楽しんでね。他の皆さんも」
深夜達は葉月と別れた後、ブラブラと街を歩き店によったりして集合場所に向かった。
深夜も一つだけ買い物をした。
集合場所に着き、少し話をしていると向こうから真希と圭、それに中村が走ってくるのが見えた。
三人は深夜達の目の前に来ると息を整え問いかけてきた。
「山上!柚子葉戻ってきてる?」
「柚子?俺は見てないけど」
深夜は真希の言葉を聞いて周りを見渡した。
すでにほとんどの生徒が戻ってきてるが柚子葉の姿は見当たらない。
深夜は真希達に聞いた。
「井上、柚子はどうしたんだ?」
真希は事情を話し出した。
「集合場所の手前まで来ると柚子葉がトイレに行きたいと言ったの。私たちも行こうかって言ったんだけど柚子葉は『先に戻ってていいよ』って行ってトイレのほうに行っちゃったの。先に戻るのもあれだからその場で待ってたんだけど遅いからもしかしたら先に集合場所に戻ってるんじゃないかって思ったんだけど…」
深夜はゆっくりと真希に問いかけた。
「柚子はどっちに行ったんだ?」
「え?」
「だから柚子はどっちに行ったのか聞いてるんだ」
「えっと…」
真希は柚子葉が行った方向を指差した。
深夜はその方向を確認した後、翔の方向に顔を向けた。
「翔…」
「分かってるよ。後は俺がどうにかするからお前は行って来い」
「…わりぃ」
深夜は翔に礼を言うと先ほど真希が指差した方向に駆け出した。
が、すぐに付き添いで来ていた大竹に止められた。
「こら、待て」
「離せ!今は急いでるんだ!」
深夜と大竹のやりとりを見ていた担任の勇一や生徒指導の松田も集まってきた。
「大竹先生どうしました?」
「いや、山上がここから離れようとしてるんで止めたんですが…」
「離せ!急がないと柚子が危ないかもしれないんだぞ!早く離せよ!」
「柚子?山上、山下がどうかしたのか?」
深夜の言葉に勇一が反応した。
深夜が説明しようとしたとき、翔がいつのまにか近くに来ていて口を開いた。
「詳しいことは俺が説明します。今は深夜を行かしてやってください」
「そんなことできるわけないだろう」
「こんなことをしている間にも山下がどうなってるか分からないんだ。深夜なら英語も話せるし、この辺の地理も俺らに比べて分かってる。行かしてやってください」
翔の言葉に三人の先生は顔を見合わせた。
大竹の手の力が緩まったのを感じた深夜は大竹の手を振りほどき走り出した。
松田は深夜に声をかける。
「こら!待て、山上!」
「説教なら後で受ける!」
深夜は松田の制止を振り切りそのまま走り去った。
勇一も深夜の後を追いかけた。
「山上は俺が追います。先生達は前田から詳しい事情を聞きだしてください」
「え、ちょっと植田先生!」
勇一もそのまま走り去った。
残った大竹と松田は顔を見合わせた。
「松田先生、どうします?」
「どうするってとりあえずは…」
松田はゆっくりと翔のほうに顔を向ける。
「詳しい事情を聞かせてくれるな?」
「いいですよ」
翔は今の状況を二人に話し始めた。
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