STORY15-2 『お前ら本当に俺達と同い年か?』
この話では「(セリフ)」で書かれた記述があります
()の中は英語だと考えてください
深夜達はバスと飛行機を乗り継ぎ、アメリカに辿り着いた。
アメリカではバスでホテルの近くまで送ってもらい、後は歩く予定だ。
深夜達のクラスは最後尾になった。
クラスの中でも一番後ろを、深夜と翔が達志を含めた数人のクラスの男子と話しながら歩いている。
その前を柚子葉と真希、圭の他に数人の女子が歩いている。
話に夢中になっていると、一人の女子が一人のアメリカ人にぶつかってしまった。
「そ、そーりー…」
「Excuse me」
アメリカ人は謝ってそのまま歩き出した。
柚子葉たちはぶつかった女子に話しかけた。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「でも、向こうの人はエクスキューズミーって言ってたね」
「ぶつかったらエクスキューズミーみたいだね。いい勉強になった」
そんなことを柚子葉達が話していると柚子葉たちの後ろから『山上!?』と驚く声が聞こえた。
柚子葉達がそちらのほうを向くと深夜が先ほどクラスの女子とぶつかったアメリカ人の腕を掴みあげていた。
周りにいた翔以外の男子も何がなんだか分からない様子で深夜を見ている。
その光景を見た柚子葉達は翔達に近寄る。
状況がつかめていない女子と男子は翔に聞いた。
「翔君、深夜は一体どうしたの?」
「あ〜と、さっきぶつかったのは誰だっけ?」
「え?私だけど」
「中村か。お前ポケットの中に財布入れてなかったか?」
「入れてたけどどうして?」
「ポケットの中見てみ」
中村と呼ばれた生徒がポケットの中を探すが財布は出てこない。
「あれ?財布がない」
中村が翔のほうを見ると翔は深夜のほうを指差した。
柚子葉達女子と男子は深夜のほうを見る。
深夜はアメリカ人の手から財布を奪い返した後にアメリカ人に英語で話しかけた。
「(今回は見逃してやる。次は無いと思え)」
「(チッ!)」
アメリカ人はそのまま走り去っていった。
深夜は柚子葉達のほうを振り返り財布を中村に渡した。
「ほら、今度は気をつけろよ」
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。それよりも前の奴らに追いつかないと怒られるぞ。…もう遅いか」
深夜の言葉に翔達が首をかしげていると担任の勇一がこちらに近づいてきた。
「こら!何そこで突っ立ってるんだ!」
「私が財布を取られたんですけど山上君が取り返してくれたんです」
「何?それで中身は大丈夫なのか?」
勇一の言葉に中村が財布の中身を確認する。
「大丈夫です。すぐに取り返してくれましたから」
「そうか。じゃあ、早くきなさい。中村は今度から気をつけるように」
勇一の言葉に頷き深夜達は歩き出した。
今度は深夜達男子グループと柚子葉達女子グループは一緒になって歩き出した。
歩き出してすぐに達志は深夜と翔に話しかけた。
「でも、よく山上と翔は財布取られたって分かったな」
「あんな下手なスリなら分かる。あいつ中村にぶつかる前に少しだけ横にズレたからな。すぐにスリだって分かった」
「俺もだよ。上手い奴は本当に分からないけどあんぐらいならすぐに分かる」
「お前ら本当に俺達と同い年か?」
「当たり前だろうが」
「でも、山上はすげぇな」
「何がだ?」
「喧嘩は強いし英語も話せるし」
「喧嘩はともかく英語は何度もこっちに来てたら自然に覚える。翔だって話せるだろ?」
「まぁな」
「へぇ〜」
そんなことを話しながら歩いていると今日泊まるホテルに着いた。
ホテルに着いた深夜達はあらかじめ決めていた部屋に入った。
深夜は翔と達志、他に二人と一緒の部屋だ。
カバンを置いた深夜に翔が話しかける。
「深夜。ホテルの中歩こうぜ」
「あ〜、俺ちょっと親父に連絡してくる。一応こっちに来たら連絡するように姉貴に言われたし」
「え?山上のオヤジさんってアメリカにいるのか?」
深夜と翔の話を聞いていた達志が深夜に聞いた。
他の二人の生徒も興味があるようで深夜のほうに顔を向けた。
深夜は達志の問いに頷き口を開いた。
「あぁ。親父だけじゃなくてお袋も兄貴も兄貴の嫁さんも皆アメリカにいるんだ」
「それって家族全員じゃないのか?」
「いや、まだ姉貴と姉貴の旦那が日本にいるから家族全員って訳じゃない。じゃあ、俺電話してくる。翔、電話が終わったらでいいなら歩いていいぞ」
「じゃあ、部屋で待ってるわ」
深夜は翔の言葉に手を振って部屋を出て行った。
ホテルのロビーにある公衆電話で深夜は父親である浩史の携帯に電話をかけた。
コール音が数回流れた後浩史が電話に出た。
『もしもし?』
「あ、親父?」
『ん?慎一…じゃあないよな』
「深夜だよ」
『深夜?深夜が何でアメリカの公衆電話から電話してきたんだ?』
「俺は修学旅行でアメリカに来てるって言っただろうが」
『あれ?修学旅行って今日だったか』
「あのなぁ…まぁ、いいや。姉貴がアメリカに着いたら電話しとけって言ったから電話しただけだから」
『そっか。家に寄る時間とかあるか?』
「それは難しいだろうな。自由行動があるにしてもそれは限られた範囲と時間だし」
『自由行動の範囲はどこまでなんだ?』
「え?えっと…」
深夜は自由行動で動ける範囲を浩史に説明した。
『分かった。まぁ、楽しめよ』
「あぁ。じゃあな」
深夜は公衆電話の受話器を置いた。
その後ろから勇一が声をかける。
「山上、何してるんだ?」
「親に電話しただけです」
勇一は周りを見渡して近くに生徒がいないことを確認した後にまた深夜に声をかける。
「おじさん、なんだって?」
「修学旅行が今日だって言ってたけど忘れてた。後は家に寄る時間はあるのかって聞かれて無いって答えた後、じゃあ楽しめってそれだけ」
「そうか」
勇一はその後深夜と一言二言交わした後、また歩いていった。
深夜も自分の部屋に戻った。
部屋に戻ると翔は寝ていた。
達志が笑って深夜に事情を伝えた。
「こいつ『時差ボケで眠たいなぁ』って言った後すぐに眠ったんだよ」
「ったく。おい、翔!ホテルの中歩くんだろうが!」
深夜は翔の頭を叩いた。
翔はゆっくりと目を開いて起き上がった。
「あ、深夜。電話終わったのか」
「あぁ。ほら、さっさとホテルの中見て回ろうぜ」
「山上俺も行っていいか。部屋の中にいるのも暇だし」
「別にかまわねぇよ」
他の二人は部屋でゆっくりとくつろぎたいということで深夜、翔、達志は三人揃ってホテルの部屋を出た。
ホテルの歩いていると他の部屋のメンバーとすれ違ったりもした。
三人で歩いていると向こうから柚子葉と、真希、圭に中村を加えた4人で歩いてきているのが見えた。
柚子葉が手を振ってきたので深夜も手をあげて近づく。
「なに?散歩?」
「うん。深夜も?」
「あぁ。翔がホテルの中を歩きたいって言うからな」
廊下で話すのも何だからとその階にあった談話室に移動した。
深夜は柚子葉に話しかけた。
「明日は何するんだっけ?」
「えっと、観光で何箇所か回るんじゃなかったっけ」
「めんどくせぇ…」
「そりゃあ深夜はそうかもしれないけどさ、私にしたら楽しみなんだけど」
「まぁな」
「あの…山上君」
深夜と柚子葉が話してると中村が深夜に話しかけた。
深夜は中村のほうに顔を向ける。
「なんだ?」
「えっと、さっきはありがとう」
「さっき?あぁ、財布のことか?」
深夜の言葉に中村は頷いた。
深夜はため息を一度吐いて口を開いた。
「助けたときにお礼を言われたんだからもういいって。あのまま見逃すわけもいかんだろうし」
「でも…」
「深夜がいいって言うんだからもう気にしなくていいって」
深夜と中村のやりとりを聞いていた翔が口を挟んできた。
その隣で達志も頷いている。
「そうそう。山上だって別にお礼を言われたいために助けたって訳じゃないだろうし」
「たりめぇだろうが。誰がお礼目当てに人助けをすんだよ」
「ね?だから、中村ももう気にしなくていいよ」
最後の翔の言葉に中村はゆっくりと頷いた。
それを見た深夜は立ち上がった。
「じゃあもう戻るか。もうそろそろ先生の見回りも始まるだろうし」
深夜の言葉に翔は部屋にかけられている時計を見た。
「あ、もうそんな時計か。達志行こうぜ」
「おう」
翔と達志も深夜に続いて立ち上がった。
「じゃあ、俺ら戻るわ。ちょっと部屋まで遠いし」
「うん。私たちももう戻ろうか」
結局皆戻ることにした。
談話室を出て深夜達男性陣は右に、柚子葉達女性陣は左に別れた。
あとがきはYAHOO!blogで書いております
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