STORY14-5 『え!?婚約者?』
その日の放課後。
深夜は真希達と別れた柚子葉に声をかけた。
「柚子」
「…」
「これが最後でもいい。今からお前を連れて行きたいところがあるんだ」
「…」
「衛に聞いたんだ。昨日柚子と会ったんだって。それで場所を聞いて分かった。何を見て誤解してるのかって事を。これが最後でいい。俺についてきてくれないか?」
「誤解?誤解って何よ!」
「あぁ〜、もう!会えば分かる!」
深夜は結局強引に柚子葉の手を取って歩き出した。
「分かった!付いていくから離して!」
深夜はその言葉を聞いて柚子葉の手を離した。
「絶対だぞ。このままだと誤解したまま俺と別れるとか言い出しそうだからな。今から全部伝える。それでまだ別れたいって言うんだったら俺も何も言わない」
深夜はそのまま歩き出した。
柚子葉は渋々深夜の後をついていった。
深夜は柚子葉を近くのファミレスに連れて行った。
「あ〜と、まだ来てないみたいだな」
近くの店員に案内はいいと断り、柚子葉を連れて席についた。
気まずい空気が流れる中、柚子葉は深夜と歩いていた女子高生が店の中に入ってくるのが分かった。
その女子高生は深夜達が座っているほうに近づいてきた。
深夜がその女子高生に声をかける。
「悪いな」
「ううん。私のほうこそ遅れてごめんね」
その女子高生は柚子葉に声を掛ける。
「えっと、山下さんよね?」
「…」
柚子葉が何も言わないのでその女子高生は深夜に顔を向けた。
深夜は苦笑を浮かべ柚子葉に声をかける。
「柚子。何も言わないでいいから頷くか首を振るかだけしてくれ。お前が見たのはこいつなんだろ?」
柚子葉はその問いに頷いた。
「で、俺とこいつが一緒に歩いているのを見て新しい彼女が出来たと思った?」
「え?私と山上君が?」
柚子葉はその問いにも頷いた。
深夜は女子高生を指差して口を開いた。
「こいつの名前は中田華。中学の同級生で翔の彼女だよ」
「え!?」
柚子葉は深夜の言葉に驚きの声をあげた。
深夜と華と紹介された女子高生は顔を見合わせて笑った。
「自己紹介が遅れてごめんね。私中田華って言うの。さっき山上君が言ったとおり翔君の彼女…じゃなくて婚約者よ」
「え!?婚約者?」
「あぁ、そっか。もう婚約してたんだっけ?」
「うん。忘れてたの?」
「お前ら変わらねぇからな。婚約する前とした後で」
「だって、私達は私達だもん」
「確かにな」
「あの〜…」
深夜と華が話していると柚子葉が口を開いた。
「もう少し詳しく説明してくれる?」
柚子葉の問いに深夜は頷いた。
「中田と翔は中学の頃に付き合いだしたんだ。言ってないと思うけど翔の家は病院なんだ。で、中田の家も同じ病院でな。病院の跡継ぎとして翔は誰かとお見合いさせられることになった。中田も親の都合で同じようにお見合いさせられることになったんだ」
「私も翔君もお見合いするときは誰が相手なのか知らなかったの。で、本当は嫌で嫌でしょうがなかったんだけど、断ってもいいけど顔合わせぐらいはしないといけないって親に言われたから仕方なく行ったの。そしたら、そこに翔君が座ってるんだもん。驚いたわよ」
「翔のお見合いの相手は中田だったんだよ。二人は付き合ってたしそのまま婚約になったわけ。ここまではいいか?」
柚子葉は深夜の問いかけに頷いた。
深夜は飲み物を飲みまた話を続けた。
「でだ。昨日のことなんだけど。もうすぐ翔の誕生日なんだ」
「私達もう18でしょ?だから、何か思い出に残るプレゼントを翔君に送りたくて山上君にお願いしたの」
「じゃあ、どうして深夜は今朝嘘ついたの?」
「嘘?」
「忍さんと出かけたって言ってたじゃない?」
「あそこでこいつと出かけたって言えるわけないだろ?翔がいるのに」
「あ、視線を外したのは」
「翔の顔を見たんだよ。あそこで言うわけにもいかないから姉貴と出かけたっていう嘘をついたんだ」
「そうなんだ…」
「これで誤解だってことが分かってくれたか?」
「う、うん」
「悪いな、中田」
「ううん。じゃあ、私これから翔君とデートだから」
華は深夜達に手を振りながらファミレスを出て行った。
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