STORY14-4 『少し黙ってろ』
月曜日。
柚子葉は学校に向けて歩いている。
今日、柚子葉は学校に行くのに気分が乗らなかった。
深夜と話をしたくないからだ。
もしかして、別れ話をされるかもしれない…
そんなことを考えていると学校に行く気は失せていく。
それに比例して歩くスピードは段々と落ちていく。
いつもよりも時間がかかったが学校に到着した。
ゆっくりと教室に入ると深夜の姿はまだなかった。
柚子葉は安堵のため息をついた。
真希と圭の姿もない。
今日の授業の準備をして、柚子葉は外に顔を向けた。
数分して、真希と圭が教室に入ってきた。
柚子葉はいつもと変わらないように二人に声をかけた。
「二人ともおはよう」
「お、おはよう」
「おはよう。柚子葉…大丈夫?」
「え?何が?」
「何がって…」
「あんた私達が気づかないとでも思ってるの?それが空元気だってことぐらい分かるわよ」
「…エヘ」
「エヘじゃないわよ。山上に聞かないとね」
「ねぇ、深夜には私から聞くから二人は何も言わないで欲しいの」
「え?」
「柚子葉。大丈夫なの?」
「うん。私が聞かないといけないと思うの…」
真希と圭は顔を見合わせて柚子葉に頷いた。
「分かった。でも私たちも傍にいるよ」
「うん。お願い。それと二人は何も言わないで」
「え?」
「深夜が何て言っても二人は何も言わないで欲しいの」
「…分かった」
「ありがとう」
そんな話をしていると深夜と翔が二人揃って教室に入ってきた。
深夜はいつもと変わらずに自分の席へと歩いてきた。
いや、いつもよりも顔が怒っている。
「三人ともおはよう」
「うっす」
深夜はカバンを自分の机に置き、柚子葉のほうに顔を向ける。
「柚子、昨日おばさん仕事なくなったんだってな」
「う、うん」
「それはいいけどお前俺を着信拒否しただろ?」
「え?山下そうなのか?」
翔が少し驚いた顔をして柚子葉に確認を求める。
柚子葉はその問いに頷いた。
「何でだ?」
「ねぇ、深夜」
「ん?」
「先に聞きたいことがあるの」
「俺に?何だ?」
「昨日深夜何してたの?」
「昨日は…」
深夜は柚子葉から視線を外した。
柚子葉は視線を外されたショックで深夜がどこに視線を向けていたのか見ていなかった。
「姉貴たちと一緒にいたけど何でだ?」
深夜が嘘をついた。
柚子葉はそれにさらにショックを受けた。
「…ううん。もういい」
柚子葉はそういうと立ち上がった。
「柚子?」
「ごめん…。ちょっとトイレ」
柚子葉はそのまま教室を出て行った。
真希と圭は深夜を睨み、柚子葉の後を追った。
残った翔と深夜はまだ事情をつかめていない。
「何なんだ?」
「さぁ。俺に聞くなよ」
「でも、お前山下になにかしたんじゃないのか?」
「全然心当たりがないんだよ…」
深夜がそういったところでチャイムが鳴った。
チャイムが鳴ってから柚子葉達は戻ってきた。
「柚子?どうかしたのか?」
深夜が声をかけるが柚子葉は何も言わずに席に着いた。
深夜は違和感を感じた。
聞こえていなかっただけなのかもしれない。
だが、もしかして無視されているのではないかという不安を抱いた。
その不安はあたっていた。
休憩時間に柚子葉に話しかけるが柚子葉は何も言わずに真希達のほうに歩いて行く。
深夜は柚子葉がそんな行動を取られる意味が分からなかった。
そして、昼休み。
深夜は真希達のところに行く柚子葉の手を強引にとって歩き出した。
「ちょっと…離して」
「少し黙ってろ」
深夜は柚子葉を屋上につれてきた。
ここなら誰にも邪魔されずに話ができるからだ。
「さて、柚子。今日、いや昨日からか。お前の行動を説明してくれ」
「…」
「俺の番号を着信拒否したり、急に俺のことを無視したり一体どういうつもりなんだ」
「それは深夜のほうじゃない…」
「は?俺?」
「悪いけどもう私に話しかけないで。別れて」
「どういうことだ…」
「そのままだよ。深夜には他に彼女がいるじゃない」
「はぁ!?なんだよそれ!」
「お願いだからもう私に関わらないで!」
柚子葉はそのまま屋上を走り去った。
深夜はまだ屋上で立っている。
そして、近くにあったフェンスを殴りつけその場に座り込んだ。
そのままそこに座っていると携帯が鳴った。
「はい…」
「あ、深夜か」
「衛か…」
深夜の携帯に電話してきたのは衛だった。
「深夜?何かあったのか?」
「別に…」
「もしかして…山下が関係あるのか?」
「…」
「あるんだな。やっぱり深夜が関係していたのか」
「え?それどういうことだ?」
「いや、昨日な…」
衛は昨日柚子葉と出会ったことを深夜に伝えた。
そのときに柚子葉の様子がおかしかったことを。
「なぁ。柚子とどこで会ったんだ?」
「えっとあそこは…」
衛は昨日柚子葉と会った場所を深夜に告げた。
深夜はその場所を聞いてやっと理解した。
何故柚子葉があんなことを言ったのかを…
「分かった」
「へ?」
「サンキューな。衛」
「深夜?」
深夜は携帯を切り、今度は自分から電話をかけた。
その相手と少し話した後に屋上を後にした。
その顔にはさっきまでの不安は無い。
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