STORY13-2 『は!?アメリカ!?』
柚子葉が保育園に秀太を送り終え自分の教室に入るとすでに真希と圭が柚子葉の机の近くで話をしていた。
真希と圭は柚子葉に気づき手を振ってきた。
柚子葉は笑顔で二人に近づく。
「二人ともおはよう」
「「おはよう」」
柚子葉が来たので椅子に座っていた真希は立ち上がった。
柚子葉は机の上にカバンを置き椅子に座った。
三人で話をしていると翔が教室に入ってきた。
「うっす」
「「「おはよう」」」
翔は柚子葉に近づいて声をかけた。
「あれ?まだ深夜来てないのか?」
「どうかしたの?」
「いや、来るときに深夜の家に寄ったんだけどいなかったからてっきり先に行ったんだとばっかり思ってた」
翔が柚子葉にもう一度聞いてきた。
「山下は深夜知らない?」
「えっと、深夜なら…」
柚子葉が深夜のことを伝えようとしたが丁度教室の扉が開いて大竹が入ってきた。
大竹が入ってきたのでクラスが騒がしくなった。
「静かに。今日は植田先生は朝遅れて来るそうだ」
大竹はクラスが静かになったので出席を取り始めた。
「…山上。山上いないのか?」
大竹は柚子葉の前の席、深夜の席を見て来てないのを確認した。
「山上は欠席と…。次、山下」
「はい」
「よし。欠席は山上だけだな。じゃあ、連絡事項を伝えるぞ」
連絡事項を伝え終えた大竹は朝礼を終わらせ教室を出て行った。
大竹が教室を出ると翔は柚子葉に声をかけた。
「山下、お前何か知ってるか?勇一さんも遅刻ってことは何かあると思うんだけど」
「えっとね、深夜と忍さん今日から一週間ぐらいアメリカに行くんだって」
「は!?アメリカ!?」
翔は驚いて大声をあげた。
その声を聞いたクラス中の視線が柚子葉と翔に向けられた。
翔はもう一度柚子葉に聞きなおした。
「悪い、山下。もう一度聞かせてくれ。深夜は今どこにいるって?」
「えっと…深夜はアメリカに行ったの」
真希と圭が柚子葉に近づいてきた。
「何?山上アメリカに行ったの?」
「うん」
「何で?」
「急用だって。私も詳しくは知らないんだけど」
「急用って何だろうね」
真希と圭は二人で何か話している。
翔は二人に聞こえないように柚子葉に声をかけた。
「おい、山下。急用っておじさんからの頼みとかか?」
「そう言ってたよ。おじさんから手紙が来てその手伝いに行くって」
「勇一さんは?」
「深夜と忍さんを空港まで送っていってから学校に来るって」
「深夜が帰ってくるのは一週間後だっけ?」
「用事は三日ぐらいで終わるみたいだけどそれから向こうでゆっくりするんだって」
「そっか」
その日の放課後。
柚子葉は一人でマンションに向け歩いている。
一人で歩いていると横に誰もいないのが寂しく感じてしまう。
柚子葉はいつもより気がついたら早足でマンションに向け歩いていた。
自分の家に着くとすでに恭子が秀太を連れて帰ってきていた。
「ただいま」
「おかえり、柚子葉」
柚子葉がリビングに入ると隅のほうでむくれている秀太の姿が見えた。
恭子のほうに目を向けると恭子は首をかしげた。
「今日保育園に迎えに行ったときからああなの」
「どうしたんだろ」
柚子葉は秀太に近づき声をかけた。
恭子も立ち上がり柚子葉の隣に立つ。
「秀太?どうかしたの?」
「べつになんでもない」
「なんでもないならどうしてむくれてるの?」
「なんでもないったらなんでもない!」
秀太は立ち上がって違う部屋に入っていった。
柚子葉と恭子は顔を見合わせた。
「柚子葉。今日の朝はどうだったの?」
「朝は…覚えてない」
「覚えてないの?」
「ちょっとね…。あ!」
柚子葉が大声をあげたので恭子は驚いた。
「そんな声を出してどうしたの?」
「秀太がむくれた理由分かったかも」
「本当に?」
「今日から深夜一週間いないの」
「え?若先生いないの?」
「うん。忍さんもいないよ」
「そういえば今日園長先生の姿見てない」
「急用とかでアメリカに行ったの」
「アメリカ?」
「今、深夜達のおじさんはアメリカにいるの」
「へぇ〜。仕事は何してるの?」
柚子葉はその質問に困った。
『仕事は社長』と言うのはどうだろう。
迷った末、柚子葉は誤魔化すことにした。
「それは聞いてない。ただアメリカにいるってことだけ聞いてる」
「そうなんだ」
恭子は柚子葉の言葉を信じたようだ。
柚子葉は心の中で安堵のため息をついた。
とりあえず秀太のことは放っておくことにした。
お腹がすいたら機嫌も直るだろうと考えた。
二人の思惑通り、秀太は夕食の時間になると『おなかすいた〜』といって部屋から出てきた。
数時間前まで機嫌が悪かったのに今はおいしそうにご飯を食べている秀太に分からないように二人は笑みを零した。
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