STORY13-1 『じゃあ行ってくる』
今日は日曜日。
恭子が仕事なので柚子葉はいつもの通り深夜の家に秀太とお邪魔していた。
秀太は勇一と忍に遊んでもらっている。
深夜と柚子葉は一緒に台所に立って料理をしている。
料理を作り終えた深夜達はテーブルに料理を運んだ。
5人揃って食事をとっていると忍が思い出したように深夜に話しかけた。
「深夜。明日からの準備できてるんでしょうね」
「あぁ。ちゃんと終わってるよ」
「明日何かあるんですか?」
柚子葉は二人の会話に入り込んだ。
忍は柚子葉の言葉を聞いて深夜に問いかけた。
「あんた柚子葉ちゃんに言ってないの?」
「あ、忘れてた」
「呆れた…」
忍は深夜に呆れの目を向けた。
深夜は特に気にせずに柚子葉に顔を向けた。
「柚子。俺と姉貴は明日から一週間いないから」
「え!?そうなんですか?」
柚子葉は忍に確認の意味も含め視線を向けた。
忍は軽く頷いた。
「ええ。お父さんから手紙が来て一週間ほどアメリカに行くことになったの」
「手紙?」
「親父の話だとアメリカで急用ができたらしいんだ。それの手伝いに俺と姉貴がかりだされたってわけ。それは3日ぐらいあれば終わると思うけどせっかくだから一週間ほど向こうにいようかと思ってるんだ」
「なるほど…」
柚子葉は深夜の言葉に納得した。
食事を再開しようと茶碗を持つとふと勇一の姿が見えた。
「植田先生は行かないんですか?」
「俺?俺は仕事があるから」
「でも忍さんも保育園があるんじゃないですか?」
「私は一応園長って立場を利用したから」
「それって職権乱用って言うんじゃ?」
柚子葉は忍の言葉に疑問を持った。
忍は柚子葉の疑問に笑ってごまかした。
深夜がため息をついて横から口を出した。
「姉貴は普段仕事を休まないから大丈夫なんだ。いつも園の保育士から『いい加減少しは休んでください』って言われるほどだから」
「へぇ〜」
「俺もまだ有休残ってるけど俺が行っても無駄だから」
柚子葉は勇一の言葉を聞いて納得した。
食事を終えた5人はリビングに座って話している。
話の内容は夕食にでた話題である。
「明日の何時ごろに行くんですか?」
「8時過ぎの飛行機だからマンションを7時ごろには出るつもり」
「俺が学校に行く前に空港まで送っていくから」
「そうですか」
「え〜!しんやお兄ちゃんいないの?」
「あぁ。一週間だからすぐに帰ってくるから。帰ってきたら遊ぼうな」
「…うん」
「そんなに寂しそうにするなって」
深夜は秀太の頭の上に手を乗せ秀太を慰めている。
秀太は渋々頷いた。
柚子葉は秀太を抱きしめた。
「お姉ちゃんと一緒にお兄ちゃんが帰ってくるのを待とう?」
「…うん」
秀太の頭を深夜はまた撫でた。
忍は深夜達に聞こえないように勇一に声をかけた。
「今のセリフって単身赴任に行く夫を待つ妻のセリフよね」
忍の言葉に勇一は笑った。
「確かにな。『お姉ちゃん』を『お母さん』、『お兄ちゃん』を『お父さん』って変えたらそうなるよな」
勇一と忍は声を出して笑った。
その声に深夜と柚子葉は忍たちのほうを向いた。
「何笑ってんだ?」
「え?別に何でもないよ。ねぇ、勇一」
「あぁ。気にするな」
「そういうときは絶対何かあるんだよ」
深夜はまだ疑いの目を二人に向けている。
が、秀太が遊んでくれと足にしがみついてきたので深夜は諦め秀太と遊び始めた。
秀太が寝たので柚子葉は忍と勇一に挨拶をして、秀太を抱えた深夜と自分の部屋に向かった。
部屋の前で柚子葉は深夜から秀太を預かった。
「じゃあ、明日…じゃなくて来週か」
「あ、明日見送りに行くから」
「朝早いから無理しなくてもいいけど」
「無理じゃないよ」
「そうか?じゃあ明日行く前になったらメールするから」
「うん」
そして、次の日の早朝。
マンションの前には勇一の車が止まっており、すでに勇一と忍が乗っている。
深夜と柚子葉が二人で車の前で話している。
「じゃあ、行ってくるわ」
「うん」
柚子葉は寂しそうに頷いた。
深夜は柚子葉の頭に乗せた。
「そんな寂しそうな顔をされたら行きにくいだろ…」
「あ、ごめん」
「夜電話するから」
「え?でも時差があるでしょ?」
「ちゃんと計算して電話するから」
深夜と柚子葉が話していると車から忍が声をかけた。
「そこのご両人。もうそろそろ出ないと飛行機に遅れるんだけど」
その言葉に深夜が車に乗り込み、窓を開けた。
「じゃあ行ってくる」
「うん。行ってらっしゃい」
そうして深夜たちを乗せた車は柚子葉を残して空港に走り出した。
あとがきはYAHOO!blogで書いております
興味があればお越しください
URL↓↓
http://blogs.yahoo.co.jp/in_this_sky