STORY12-END 『ちょっと心配になった』
大村と別れた深夜と柚子葉、それに衛は秀太を迎えに保育園に向かって歩いている。
保育園で秀太と合流しマンションに向け歩き出した。
秀太は知らない人がいるので柚子葉に引っ付いて歩いている。
衛は柚子葉に声をかけた。
「その子があんたの弟なのか?」
「そうだよ。秀太っていうの。それと衛君。『あんた』はやめてよ」
「じゃあ、何て呼べばいいんだ?」
「何だっていいけど『あんた』だけはやめてほしいな」
「そうだな。柚子葉…いや、山下にしとくわ」
衛は柚子葉と呼ぼうとしたが深夜がいるほうから殺気を感じたのか言い直した。
柚子葉は頷いた。
「じゃあ、それでよろしくね」
「あぁ」
柚子葉は秀太のほうを向いて声をかけた。
「秀太今日静かね。どうかしたの?」
秀太は何も言わない。
深夜が秀太の代わりに答えた。
「多分知らない奴がいるからだろ」
「知らない奴って俺か?」
「衛以外に誰がいるんだよ」
衛は深夜の言葉に軽く笑った。
深夜はため息をついて秀太に話しかけた。
「秀太。こいつは俺の友達だ」
「しんやお兄ちゃんのおともだちなの?」
「そうだよ。初めまして。秀太君でいいのかな?」
「はじめまして。やましたしゅうたです」
「加藤衛だ」
「まもるお兄ちゃん?」
「あぁ」
衛は秀太と目線を合わせるようにかがみこみ秀太に向けて手を差し出した。
秀太は柚子葉のほうを振り返った。
柚子葉は笑顔で頷いた。
秀太は衛の手をとった。
「よろしくな」
「うん!」
深夜は二人に声をかける。
「仲が良くなったところで帰るか」
「そうだね」
柚子葉も深夜の言葉に続いた。
衛と秀太も頷いた。
マンションの前まで来ると衛が深夜と柚子葉に声をかけた。
「じゃあな」
「あれ?帰るのか?」
「あぁ」
「そうか。じゃあまたな」
衛は深夜の言葉に手を振って歩き出した。
深夜と柚子葉、秀太はマンションの中に入った。
柚子葉と秀太は着替えた後に深夜の部屋に向かった。
部屋に入ると柚子葉はリビングに入り秀太がいつも見ている番組をつけた。
秀太が番組に熱中すると柚子葉は立ち上がり深夜が料理をしている台所に向かった。
「深夜何か手伝うことある?」
「じゃあ、これ洗ってくれるか?」
「分かった」
柚子葉は深夜が指差した野菜類を洗い始めた。
深夜と柚子葉が料理を作り終えテーブルに運び込むと深夜の携帯が鳴った。
「もしもし」
深夜が何か喋っている横で柚子葉は秀太を呼んだ。
秀太を椅子に座らせ先に食べさせようとしたが深夜が電話を切ってテーブルに近づいてきた。
深夜は柚子葉の顔を見て電話の内容を話し出した。
「姉貴から。今日姉貴と勇兄飯いらないんだと」
「そうなんだ」
「とりあえず飯食おうか」
深夜の言葉をきっかけに夕食が始まった。
夕食後、深夜は洗い物を始めた。
柚子葉と秀太はリビングで一緒にTVを見ている。
洗い物を終えた深夜が三人分の飲み物を持ってリビングに入ってきた。
深夜と柚子葉が話をしていると秀太がいつのまにか眠っていた。
深夜と柚子葉は顔を見合わせて微笑んだ。
が、この部屋に二人きりということに気づいた二人は視線を外した。
「あ、私帰るね」
「え、あ、あぁ。家まで送るよ」
深夜は秀太を抱えて歩き出した。
柚子葉は深夜の後について歩き出した。
柚子葉の部屋まで二人の間に会話はなかった。
「あ、ありがとう」
「秀太のベッドまで運ぶから鍵開けてくれ」
「え、うん」
今まで深夜は秀太をベッドまで運ぶことはなかった。
今までにないことに柚子葉は少し戸惑っているようだ。
柚子葉をリビングに待たせ深夜は秀太をベッドに運びリビングに戻ってきた。
「じゃあ、帰るから」
「うん。また明日」
柚子葉は玄関まで深夜を見送った。
深夜は玄関に立っている柚子葉を見つめ抱きしめた。
柚子葉は突然のことで戸惑った。
「し、深夜?」
「少しだけ。少しだけこうさせてくれ」
柚子葉は深夜の言葉を聞いて深夜のしたいがままにさせた。
数秒して深夜は柚子葉を放した。
「悪い」
「ううん。でもどうしたの?」
「ちょっと心配になった」
「心配?」
「ここに柚子がいるってことを確認したくなった」
「意味がわからないんだけど…」
「大丈夫だ。俺も自分で意味が分からないから。ただ、気がついたらお前を抱きしめていた」
深夜はそういって柚子葉にキスを落とした。
「じゃあ、また明日」
「う、うん」
深夜はそういって玄関を出て行った。
柚子葉はその場で少しの間立ちつくした。
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