STORY11-6 『深夜の幼馴染に戻ったんだよね?』
深夜は柚子葉に近づき柚子葉を縛っている縄を外した。
「柚子、大丈夫か?」
「私は大丈夫。あ!大村君が!」
「大村なら無事だよ。俺に連絡してきたから」
「良かった…。深夜は大丈夫なの?今陽子さんに抱きつかれてたけど」
「お前のところに急いで行こうと思っていたら大丈夫だった。柚子お前頬が赤くなってるけど何かされたのか?」
深夜が柚子葉の頬が赤くなっていることに気づき頬に手をやる。
深夜が触ったところが痛かったので柚子葉は反射的に顔をしかめた。
それを見た深夜は柚子葉を抱きしめた。
「ごめんな。俺の事情に巻き込んで」
「ううん。それよりも深夜」
「あぁ。分かってるって」
深夜は柚子葉を抱きしめている力を緩め衛の方に顔を向けた。
衛はゆっくりと深夜たちに近づいてきた。
「衛…」
「深夜…」
「久しぶりだな」
「あぁ」
「さっき柚子が言ったのは本当だ。陽子は昨日俺に会いに来た。俺ともう一度付き合いたいと言いにな」
「そうか…。じゃあ、お前がカンニングの犯人に俺を仕立て上げようとしたのも嘘なのか?」
「カンニングの犯人?なんだそれ?」
「やっぱり嘘なのか…」
「ちょっと待ちなさいよ!」
二人の会話に陽子が入ってきた。
「何よそれ!私が嘘をついてるとでも言うの!」
「そうだな。陽子、お前が嘘ついてるんだろうな」
「衛!あんた裏切るの!」
「裏切る?お前にそんなことを言われる筋合いはないな」
陽子が衛に詰め寄って何かを言い始めた。
柚子葉がそれを見ていると深夜が柚子葉のほうに倒れてきた。
抱きとめきれなくて柚子葉も一緒に倒れそうになると衛が手を貸してくれた。
「大丈夫か?」
「あ、うん。ありがとう、衛君」
「…あんたつくづくおかしいな。何で今さっきまであんたに酷いことをしようとした奴にお礼が言えるんだ?」
「だって、もう衛君は深夜の幼馴染に戻ったんでしょ?それに今助けてくれたのは間違えようのない事実なんだからお礼をいうのは当然でしょ?」
「深夜は幸せ者だな」
「え?」
衛がなんて言ったのか聞こえなかったので柚子葉が聞きなおすと衛は「なんでもない」と呟いて深夜の顔を見た。
「深夜はどうしたんだ?」
「今日深夜体調悪いの。多分心労みたいなものだと思う」
「心労?」
「うん。昨日陽子さんが来たときに発作が出たの。多分その影響じゃないかな。前田君が言うには明日になったら治るって言ってたけど」
「そうか。じゃあ、早く寝かさないとな」
衛が深夜を背中に背負い歩き出そうとしたとき気がついたのか深夜が顔を上げた。
「衛…。悪いけど降ろしてくれないか」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないけど最後の一仕事が残ってるだろ」
衛はその言葉を聞いて軽く頷き深夜を降ろした。
深夜が歩き出そうとしたとき軽くふらついたので衛が支えようと手を差し出そうとしたが、柚子葉のほうが一歩早く深夜に肩を貸した。
「何をするか知らないけど無理はしないでね」
「あぁ。大丈夫だよ」
深夜は笑みを浮かべ柚子葉に答えた。
柚子葉に肩を貸してもらいながら深夜は陽子に近づく。
深夜が目の前に来たのを見た陽子は『今度こそ』という思いからか笑顔を浮かべ深夜に手を差し出した。
深夜はその手を払いのけ陽子の胸倉を掴んだ。
「おい。今回は許してやる。だが、今度もう一度柚子に何かしてみろ。俺は女だろうと容赦はしない。二度と俺の前に顔を出すな」
そういって深夜は陽子の胸倉を離す。
その反動で陽子は転んだ。
深夜は陽子を冷たい目で睨み出口へ向かって歩き出した。
今度は衛が深夜に肩を貸してやった。
深夜たちが出口から外に出ると前から一台の車が来た。
車からは忍と翔が降りてきた。
忍と翔は衛の姿を見て最初は驚いた。
「何で衛がここに…」
「俺は…」
「深夜の幼馴染に戻ったんだよね?」
柚子葉のその言葉に翔と衛が柚子葉の顔を見た。
柚子葉は満面の笑みを浮かべていた。
柚子葉は深夜にも声をかけた。
「ねぇ、深夜?そうだよね?」
「あぁ。衛は俺の幼馴染で親友の一人だよ」
衛はその言葉を聞いて涙を流した。
深夜は衛の肩に手を置いた。
翔は詳しい事情はつかめていないだろうが深夜の手の上に自分の手を置いた。
「詳しい事情は分からんけどとりあえず元の仲に戻ったんだな?」
「まぁ、そういうことだ」
「そうか」
翔はその言葉を聞いて嬉しそうに微笑んだ。
忍も後ろで涙を流している。
が、急に深夜の体がふらついた。
慌てて翔が深夜の体を支えた。
「深夜、大丈夫か?…うわ!すげぇ熱だ」
翔の言葉を聞いた忍は皆を乗せてすぐにマンションに向かった。
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