STORY2-1 『俺のこと聞かれてただろ?』
柚子葉が深夜の家に来た次の日、柚子葉は秀太と一緒に保育園に向かっていた。
今日は母親が朝、家にいないので柚子葉が保育園に預けにいくのだ。
帰りは母親がすでに家に帰っているはずなので迎えには母親が行くことになっている。
保育園の門に保育士が立っていたので秀太を預け、柚子葉は学校に向け歩き出した。
柚子葉が学校に着くとまだ真希も圭も来ていなかった。
とりあえず自分の席に座って今日の授業の準備をして予習をしていると真希と圭が二人揃って柚子葉のほうに近づいてきた。
「「おはよう」」
「あ、おはよう」
それから真希と圭と話をしていたが、ふと教室のドアを見ると深夜と翔がこちらのほうを見ている。
柚子葉がどこか違うところを見ているのを気づいた真希と圭はそちらのほうを見て深夜の姿を確認した後、柚子葉に「また後でね」と言葉を交わして元の席に戻っていった。
二人の行動を見て「やっぱり怖いよね〜」と思っていると深夜が翔と言葉を交わしながら自分の席に座った。
柚子葉はまず翔に声をかけた。
「前田君、おはよう」
「山下、おはよう」
次に柚子葉は深夜に返事をしてもらえるか不安になりながら声をかけた。
「山上君もおはよう」
「うっす」
深夜が返事をしてくれたので柚子葉は安堵のため息をついた。
どうやら昨日のことは夢ではないようだ。
二人のやりとりを見た翔が柚子葉に声をかけてきた。
「あれ?山下は深夜の事怖くないの?」
「え?うん、まぁ…」
「翔、山下は俺のこと知ってるから」
「へ?」
「だから、俺が姉貴の保育園を手伝ってることも勇兄のことも昨日バレたんだ。ということは必然的に俺が見た目どおりではないということもバレたってこと」
「へ〜、またなんでバレたんだ?」
「昨日まで俺も知らなかったんだけど姉貴の保育園に山下の弟がいたんだ。その弟は秀太っていうんだけど俺と仲が良いんだ。姉がいることは知ってたんだけどまさか山下とは思わなかった」
「ふぅ〜ん。まぁ、よかったんじゃねぇの。バレたのが山下で」
「翔、それはどういうことだ?」
「他の女子にバレるよりは安心だと俺は思うけど。山下はそういうことを他人に気軽に拡げることはことはしないってこと」
「あぁ〜、それは確かに俺も思う」
翔の言葉に深夜はうなずいた。
昨日の柚子葉とのやりとりで「こいつは信用できる」と思ったから家にも上げたんだと深夜は思った。
ただ、忍の意見に逆らう気も無かったが…
「じゃあ、あのことも知ってるのか?」
「それは言ってない。別に伝える必要もないだろ」
「あのことって何?」
柚子葉は『あのこと』が気になったが翔と深夜が話を誤魔化したのと勇一が教室に入ってきたのでそのまま聞かずじまいだった。
今日の予定を伝え勇一が教室を出る頃には柚子葉は『あのこと』を忘れて一時限目の準備を始めた。
準備をし終え真希達のほうに行くと柚子葉は真希たちに問い詰められた。
「ちょっと!前田君はともかくとしてどうして山上とも親しいの!?」
「え?えっと…」
これには柚子葉も困った。
昨日深夜と約束したのでまさか本当のことを言うわけにはいかない。
「えっとね…その…そう、前田君と私って仲が良いでしょ?」
「うん」
「で、前田君と山上君も仲が良いでしょ?」
「それが不思議だけどまぁそうだね」
「だから私と山上君も昨日挨拶をするぐらいまでは仲が良くなったの。ほら、友達の友達は友達って言うでしょ!」
「う〜ん…、ホントに?」
「ホントだってば!どうしてそんな疑うの?」
「だって、柚子葉って山上みたいな不良って嫌いでしょ?だから何か弱みを握られてるんじゃないかなと思って」
「そんなことないってば」
実際弱みを握ってるほうは柚子葉のほうだ。
真希たちはまだ納得してないようだが授業開始のチャイムが鳴ったのでこれ幸いと柚子葉は自分の席に戻った。
自分の席に座ると深夜から小さい紙が回されてきた。
それを開いてみると文字が書いてあった。
『俺のこと聞かれてただろ?』
柚子葉も紙に文字を書いて深夜に回した。
『うん。でも本当のことは言ってないよ』
『そんな心配はしてない。それよりもどうやって誤魔化したんだ』
『私は前田君と仲が良いでしょ。で、前田君と山上君も仲が良い。だから山上君と私も挨拶を交わせるぐらい仲がよくなったって誤魔化した』
『それは少し無理ないか?』
『やっぱり?でもそれしか思いつかなかったんだから仕方無いじゃない』
『じゃあ、とりあえず後で翔にもそう伝えとくから』
『あ、お願いできる?』
『あぁ』
『じゃあお願いします』
そして、その授業が終わった後深夜は翔に事情を話した。
「とりあえずそういうことで俺と山下はお前を通じて仲が良くなったということにしてくれ」
「そんな言い訳で大丈夫なのか?」
「さぁ」
「さぁって…」
「なんとかなるだろ」
あれだけバレるのを嫌がっていたくせにいざバレたとなると楽観的になった深夜に何も言えなくなった。
そして、昼休みになった。
柚子葉達は食堂に昼食を食べに向かった。
柚子葉は自分で弁当を作ってるので弁当だが真希と圭は食堂で買っている。
だから、必然的に三人は食堂で食べるようになったのだ。
柚子葉たちが開いている席に座って食べていると翔がこちらに向かって歩いてきた。
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