STORY11-1 『もしかしてそいつが言ったこと信じた?』
二人が校内で公認のカップルになってから数ヶ月がたった。
深夜と柚子葉はいつものように保育園に秀太を迎えに教室を出た。
下駄箱に向かおうとすると、廊下を歩いていた勇一が深夜を呼び止めた。
「おい、山上。ちょっといいか?」
「何ですか?」
「お前まだ全員提出のアンケート出して無いだろ。出してないのお前だけだぞ。今から書いて出してくれ」
「あ、忘れてた。でも紙が無いっすよ」
「職員室にあるから書いて帰れ。いいな」
「はい」
「というわけだ。山下、悪いけど山上を借りるな」
「あ、はい。じゃあ、深夜私先に保育園に行くね?」
「あぁ。俺もなるべく急いで行くから」
深夜と勇一は手を振って職員室に向かって歩き出した。
柚子葉が下駄箱で靴を履き替え正門に歩き出そうとしたときに前から大村が走ってきた。
大村は柚子葉の姿を見るとスピードを抑え柚子葉の前に止まった。
「山下先輩!山上先輩はもう帰りましたか!?」
「深夜なら職員室に行ったけど大村君どうしたの?そんなに急いで」
「今校門のところに南高の生徒がいるですけどその生徒が山上先輩を呼んで欲しいって言ってるんです。それでですね…その子は自分の事を山上先輩の彼女だって言ってるんです」
「え!?それ本当?」
「ええ。山上先輩は二股するような人じゃないと思うんですけどうちの生徒も興味津々みたいで山上先輩が来るのを待ってるんです」
柚子葉が大村の言葉に戸惑っていると下駄箱に翔が降りてきた。
翔は柚子葉に声をかけた。
「山下一人なのか?」
翔が柚子葉に声をかけると柚子葉は頷いた。
「うん。深夜は職員室に行ってる」
翔は隣に立っている大村に声をかける。
「大村は何してるんだ?」
「前田先輩、実は…」
大村は翔にも同じ説明をした。
翔も最初は驚いていたようだが少し考え柚子葉のほうに振り返った。
「山下、お前本当に深夜が他の子と付き合ってると思ってるのか?」
「ううん。でも、ちょっと驚いちゃって」
「大丈夫だって。深夜はお前を裏切ったりしないって。でも南高か…」
「何か心当たりでもあるの?」
「あぁ、ちょっとな」
翔が考え出したので柚子葉と大村もその場で翔が口を開くのを待った。
翔が口を開こうとすると、深夜がアンケートを書き終えたのか下駄箱に降りてきた。
「あれ?柚子まだ残ってたのか?」
深夜が柚子葉たちに近づくとその場の雰囲気に気づいたのか深夜は口を開いた。
「何かあったのか?」
深夜の言葉に翔が口を開いた。
「実はな…」
翔は今の状況を深夜に説明した。
深夜は事情を聞くと『なんだそれ』と口を開いた。
「俺の彼女は柚子だけだ。どこのどいつかは知らないけどそんな戯言に付き合ってるほど俺は暇じゃないんだ。柚子、秀太を迎えに行こうぜ」
「あ、うん」
「もしかしてそいつが言ったこと信じた?」
「信じてはないけどちょっと驚いただけ」
「大丈夫だって。俺はお前以外の奴と付き合って無いから安心しろ」
「うん」
「さてと、とりあえずそいつの顔を見に行くか」
深夜は靴を履き替え、校門に向かって歩き出した。
その後ろに柚子葉、翔、大村が続いた。
校門のところにに生徒が集まっていたが深夜の姿を見ると生徒が深夜達の歩く場所を開けていく。
深夜達は深夜を呼んでいた女生徒の前に立ち止まった。
深夜はその顔を見ると固まってしまった。
柚子葉は深夜の様子を見て翔のほうを向くと翔も驚いているようだ。
その女生徒は固まっている深夜のほうに近づいてきた。
「久しぶりね深夜。翔も。二人とも相変わらずね」
その女生徒は笑顔を浮かべ深夜と翔に話しかけてきた。
深夜はまだ固まっている。
翔は口を開いた。
「何でお前がここにいるんだよ!まだ深夜を苦しめる気か!」
「何よその言葉。私がいつ深夜を苦しめたって言うのよ」
「ここに一体何しに来たんだ!」
「私はあんたと喧嘩をするために来たんじゃないの。ねぇ、深夜。私達まだ付き合ってるんでしょ?」
その女生徒は深夜のほうを向いて艶やかに微笑んだ。
深夜はその言葉にピクッと反応した。
「だって私は別れるって承諾してないわよ」
女生徒は深夜の手に触ってきた。
女生徒の手が触れた瞬間深夜はその手を振り払った。
深夜の体が震えだした。
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