STORY10-END 『いえ、お似合いだと思います!』
深夜と柚子葉は廊下を歩いているだけで周りの生徒からじろじろ見られてる気がした。
どうやら生徒の間の連絡網が回ったようでほとんどの生徒が二人が付き合ってることを知ったようだ。
深夜は特に気にして無いようで秀太を抱きかかえたまま歩いている。
柚子葉は少し居心地が悪いが深夜について歩いている。
昇降口で履き替え外に出るとまた生徒に見られた。
そんな中、一人の生徒が深夜に話しかけてきた。
「山上先輩!」
去年、深夜が助けた生徒だ。
その生徒の名前は大村という。
あれから何回か話しをして今は廊下ですれ違うときに話をするようになった。
「おぉ、大村」
「聞きました。山上先輩と山下先輩って付き合ってるんですね」
「あぁ。それが何だ?」
「いえ、お似合いだと思います!」
「サンキュ」
深夜は大村の頭を軽く叩いてそのまま歩いて行く。
大村は深夜の後ろにいた柚子葉に会釈した。
柚子葉も大村に会釈を返し、深夜の後ろについていった。
深夜と柚子葉が保育園に着くと忍が門に出てきた。
「柚子葉ちゃん。今日はごめんなさい。私達の監督不届きで」
「いえ、秀太が無事に見つかったんだからいいですよ」
「本当にごめんなさい」
「姉貴、今度こういうことが起こらないようにどうにか対策をしないと」
「ええ。分かってるわ。それで、秀太君が保育園を出た理由は分かったの?」
「あぁ。それで姉貴に頼みがあるんだけど」
深夜は忍に数人の園児を呼んできてもらった。
その園児が秀太に『おまえおとうさんいないだろ』と言った園児達だった。
深夜はその園児達と同じ目線になるようにしゃがみこんだ。
「なぁ、君達は休みの日に何して遊ぶ?お父さんと一緒に遊んだりするだろ?」
「うん!」
「じゃあ、もしもうお父さんと遊べなくなるとしたらどう思う?寂しいだろ?」
「寂しい…」
「だろ?秀太はそんな寂しい気持ちを毎日してるんだ。だから、もう秀太に『お父さんがいない』なんて馬鹿にしたりしたら駄目だ。いいね?」
「うん!」
「よし!」
「ねぇ、しんやおにいちゃん。ぼくたちがしゅうたくんにできることないの?」
「あるよ。それは秀太と一緒になって遊ぶこと。それが秀太にとって一番嬉しいことだから明日からまた一緒になって遊んでやろうな」
「うん!」
「さ、秀太に言うことあるだろ?」
深夜は立ち上がって園児達の前から退いた。
園児達は秀太の前に立って謝った。
「ごめんなさい」
「ううん」
秀太は笑顔を浮かべた。
そして、その園児達と一緒に保育園の中に入って行った。
深夜はそれを見てため息をついた。
深夜は忍のほうを向いた。
「姉貴。悪いけど秀太の荷物を取ってきてくれ。それと、秀太も帰るって呼んできてくれ」
「分かった」
忍が保育園の中に入っていくのを見て深夜は柚子葉のほうを向いた。
「ふ〜、これでひと段落かな」
「そうだね」
数分して秀太と荷物を持った忍が近づいてきた。
「はい、これ秀太君の荷物」
その荷物を深夜に渡した。
柚子葉は秀太の手を取った。
「じゃあ、また後で」
深夜達は忍に声をかけてマンションのほうに歩き出した。
マンションに着いて柚子葉と秀太は着替え深夜の家に向かった。
柚子葉がインターホーンを鳴らすと私服に着替えた深夜が出てきた。
「上がって」
「うん。お邪魔します」
柚子葉は深夜の家に上がって椅子に座り秀太はTVの前に座り深夜があらかじめつけていた番組を見始めた。
二人分の飲み物を持った深夜が柚子葉の近くに座り柚子葉に飲み物を渡す。
「ありがとう」
その声に深夜は微笑んだ。
それから少し世間話をして食事の仕度を二人で始めた。
食事を作り終え食卓に並べていると丁度勇一と忍が二人揃って帰宅した。
「「ただいま」」
「おかえり。丁度今できたところ」
勇一と忍が食卓に座ったところで食事を開始した。
そして、食後いつも通りリビングでくつろいでいると勇一が思い出したように口を開いた。
「あ、そういえば深夜。お前山下と付き合ってること言ったらしいな」
「え?そうなの?」
「あぁ。秀太のこと聞かれたから俺と柚子が付き合ってるからだって言ったけど何で?」
「今日職員室でその話が出たんだよ。先生達は何でお前達が付き合ってるか疑問に思ってた」
「そりゃあ俺と柚子の接点が分からないと不思議だろ」
「でも、松田先生と大竹先生は納得してたぞ」
「納得?」
「あぁ。山下が電話でショックを受けたとき深夜普通に『柚子』って言っただろ?あのときから不思議に思ってたらしい。でも、それで納得したってさ。二人の接点までは分かってないけどお似合いだって言ってたぞ」
「そっか」
深夜と柚子葉はその言葉に顔を見合わせて照れ笑いを浮かべた。
「今日後輩にも言われたんだ。お似合いだって。なんか照れるな」
「うん」
「あら、いいじゃない。周りにも認められてるってことでしょ?」
「一部だけだけどな。今日帰るのにどれだけ知らない生徒から見られたことか…」
「あれは凄かったね…」
「え?そんなに見られたの?」
「あぁ。知らない奴らからじろじろ見られた。もうあんな思いはしたくねぇな」
「それは無理だろ。後一週間ぐらいは見られるって」
「勇兄。教師の特権でどうにかしてくれよ」
「無理言うなよ。俺にそんな力ないって分かって言ってるだろ?」
「試しに言ってみただけだって」
「まぁ、すぐに落ち着くって」
勇一は笑いながら言った。
深夜と柚子葉も諦めたように肩を落として苦笑を浮かべた。
柚子葉は家に帰ったあと、深夜とメールのやりとりをして眠りについた。
数日は深夜と柚子葉を見る視線はあったが、落ち着いた。
不本意ながら二人は校内でも知らない生徒はいないというほどの公認カップルとなってしまった。
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