STORY10-3 『えっと、そういうことです』
職員室を出た深夜達は自分達の教室に向かって歩いている。
秀太は柚子葉に抱きかかえられている。
「秀太のこと聞かれたらどうしようか?」
「聞かれたらって何を?」
「何で秀太と深夜が仲がいいかって聞かれたら何て答えるの?」
「あ、そうだな。ん〜、俺が保育園を手伝ってることは言いたくないんだよな。…あのさ、柚子」
「何?」
「俺達が付き合ってることを言ってもいいか?」
「え?」
「俺達が付き合ってることが分かれば俺と秀太が仲がいいことも説明できるだろ?お前はどうだ?嫌か?」
「ううん。嫌じゃないよ」
「俺の我がままで悪いな」
「そんなことないよ」
深夜達が教室に入るとクラス中の目線が三人に向けられた。
特に柚子葉に抱きかかえられている秀太に向けられている。
深夜達が自分の机に向かって歩き出すとこの時間の担当の教師が声をかけた。
「おい、その子はなんだ?」
「私の弟です。訳あって後の授業の時間この子を教室に置きたいんです」
「しかしだな…」
「松田先生にも許可をもらってます」
「…分かった。ただし授業の邪魔をしないこと」
「はい、分かってます」
深夜と柚子葉はそのまま自分の机に座った。
秀太は柚子葉の膝の上に座っている。
教師は授業を再開したがクラスのほとんどの生徒が授業に集中できていないようだ。
授業を再開して数分後、秀太が柚子葉の体の隙間から深夜のほうを振り返った。
「しんやおにいちゃん」
「どうした?」
その声にクラス中の生徒と教師の視線が深夜に向けられた。
が、特に気にせずに深夜は秀太と話している。
「ぼくトイレにいきたい」
「トイレ?」
「うん」
深夜は立ち上がって柚子葉から秀太を預かった。
そして、抱きかかえて教師に声をかけた。
「先生。ちょっとトイレに行っていいですか?」
「え、あぁ。早く戻って来いよ」
「はい」
深夜が歩き出そうとしたときに柚子葉が声をかけた。
「ごめんね」
「別にいいって」
「お願いします」
深夜はそのまま教室を出て行った。
それを見送った柚子葉が前を向くと固まっている教師と目があった。
不思議に思った柚子葉が周りを見渡すとクラス中の視線が自分にむけられていることに気づいた。
柚子葉は近くに座っている翔に声をかけた。
「ねぇ、前田君。みんなどうしたの?」
「あのな〜、みんな深夜と山下のことを知らないんだからこういうリアクションするに決まってるだろうが」
「え?あ、そっか」
「お前と山下の仲がある程度いいのはみんな知ってるだろうけど何であの子供とも仲がいいのは知らないから驚いてるんだよ」
翔の言葉を聞いて柚子葉は今の状況を理解した。
翔がため息をついて教師に声をかける。
「先生。授業しないんですか?」
「え、あぁ。そうだな」
そういって教師は授業を再び再開した。
が、やはりクラスのほとんどの生徒は授業に集中できていないようだ。
そうこうしていると深夜が秀太を連れて戻ってきた。
深夜は自分の机に座ると秀太を自分の膝の上に乗せた。
「秀太こっちにおいで」
柚子葉がその光景をみて秀太に声をかける。
深夜は首を振って断った。
「こいつがいるとお前が授業に集中できないだろ。この時間は俺の膝の上に乗せとくよ」
「いいの?」
「いいから言ってるに決まってるだろ」
「じゃあお願い」
「あぁ」
そのやりとりにまたクラス中の視線が二人に向けられる。
そんな中一人の女子生徒が柚子葉に声をかける。
「ねぇ、山下さん」
「何?」
「どうして山上君が山下さんの弟と仲がいいの?」
「えっとね…」
柚子葉が付き合ってることを言う前に深夜が口を開いた。
「俺と柚子が付き合ってるからだよ」
「え?」
深夜が何を言ってるか理解できていないようでその女子生徒は柚子葉に目をむけた。
柚子葉は深夜の顔を見て少し迷った後頷いた。
「えっと、そういうことです」
その言葉を聞いたクラス中の生徒は皆声をあげた。
皆信じれないようで柚子葉に何度も聞きなおしている。
柚子葉は律儀に同じ答えを口にしている。
深夜と翔は一緒に秀太と遊んでいる。
教師は今日の授業を諦めたようで教卓の椅子に座っている。
その時間は柚子葉は質問攻めにあった。
深夜に質問してくる生徒はほとんどいなかった。
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