STORY9-2 『それは誤解です』
深夜が職員室に入ると深夜を呼んだ生徒指導の教師と担任の勇一、そのほかにも数人の教師が揃っていた。
「何すか」
「お前今日の昼休みに下級生からお金を巻き上げていたって言うのは本当か?」
深夜に生徒指導の教師が問いかけた。
が、深夜は何も答えようとしない。
生徒指導の教師がさらに深夜に問い詰めようと深夜に近づこうとしたときに職員室のドアが開いた。
柚子葉、翔、そして1年の学年主任と一緒に先ほど深夜と一緒に教室を出て行った1年生が入ってきた。
「ご苦労様です古川先生。で、そちらの二年生二人は?」
生徒指導の教師が古川と言う名前の1年の学年主任に話しかけた。
「私が職員室に戻ると職員室を覗いていたから一緒に入れたんです」
「そうですか。お前らは何で職員室を覗いていたんだ?」
生活指導の教師が柚子葉たちに向かって聞いてきた。
その問いかけに翔が答えた。
「深夜が何をやって職員室に連れて行かれたのか気になったんです」
「山下は?」
「私も前田君と一緒です」
「そうか。今のは見なかったことにする。早く教室に戻りなさい。もうすぐ授業が始まる」
「「嫌です」」
生徒指導の言葉に柚子葉と翔は声を揃えて拒否した。
「俺は深夜が下級生からお金を巻き上げるなんてしないと思います」
「私もそう思います。深夜がそんなことをするわけがありません」
「君たちがどう思っていようが現にここに被害者がいるのだ」
生徒指導の教師は柚子葉たちから古川が連れてきた1年生に声をかけた。
「君か。山上にお金を巻き上げられていたというのは」
「え?」
「昼休みに君が山上にお金を取り上げられている現場を見た生徒がいるんだ」
「それは誤解です」
生徒指導の教師の言葉を1年生が否定した。
古川が1年生に聞いた。
「どういうことだ?」
「昨日違う高校の生徒にからまれたんです。そこを山上先輩が助けてくれたんですけど、もう塾の月謝のお金を取られた後だったんです。ボクの財布に入っていた金額じゃ足らなかったんですけど山上先輩がお金を貸してくれて。だから今日そのお金を返したんです」
1年生の言葉にその場にいた教師は勇一ともう一人の教師を除いて皆疑った。
「その話は本当か?」
「はい」
「しかしな…」
生徒指導の教師はまだ信じないようだ。
そこに一人の教師が声をかけた。
「生徒がそう言ってるんだから信じましょう」
「大竹先生?」
大竹と呼ばれた教師はその場に集まっている教師に向かって口を開く。
「逆に聞きたいんですが何故先生方はその言葉を信じようとしないんですか?」
「何故って…」
「目撃情報があったから最初に山上を疑ったのは分かります。がそれは真実ではなかった。ならば、これ以上理由も無いのに山上を疑うのはおかしいでしょう。こちらの生徒は山上に借りていたお金を返した。これで十分でしょう」
大竹の言葉に一人の教師が反論した。
「しかし、その生徒が山上に脅されているという可能性もあるのでは?」
「そんなこと無いです!」
教師の言葉に1年生が答えた。
「他の通行人は見てみぬ振りをしてたのに山上先輩はボクを助けてくれました。ボクは脅されてなんかいません!」
その1年生の肩を大竹が叩く。
「ということです。これ以上山上を疑うのはおかしいでしょう」
勇一も立ち上がって口を開いた。
「さ、皆もう教室に戻りなさい。もうすぐ授業が始まる」
「分かりました」
勇一の言葉に深夜、柚子葉、翔、そして1年生は職員室の出口に向かって歩き出した。
三人が出た後、深夜は職員室を出口に立って教師のほうを向き直った。
「大竹先生、植田先生ありがとうございました。俺を信じてくれて」
深夜は二人に向かって頭を下げた。
勇一と大竹は顔を見合わせ『気にするな』という意思表示で手を振った。
深夜はもう一度頭を下げ職員室を出た。
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