STORY8-END 『俺って親父や兄貴と似てる?』
見送った後深夜と柚子葉は家に入って二人とも床に座った。
「柚子、悪かったな」
「何が?」
「何かドタバタして」
「ううん。私は楽しかったし嬉しかったよ。深夜の家の人って皆優しいね」
「そうか?」
「うん。深夜が優しいのはおじさんや慎一さんの影響なんだなって思ったし」
柚子葉は笑って言った。
それを聞いた深夜は柚子葉を抱きしめた。
「し、深夜?どうしたの?」
「なぁ」
「何?」
「俺って親父や兄貴と似てる?」
「う〜ん、外見は正直似てないと思う。でも、性格は似てると思うよ」
「そっか…」
それから深夜は何も言わずに柚子葉の肩に頭を乗せ動かなくなった。
柚子葉はどうしようか迷ったが深夜の背中に手を回した。
数分して深夜が口を開いた。
「俺って拾われただろ?」
「う、うん」
「小さい頃言われたことがあったんだ。俺は親父と兄貴に似てないって。そりゃあ血のつながりがないから似てないのは当たり前なんだけど当時はすっげぇショックだったんだ」
「うん…」
「だから、柚子が性格が似てるって言ってくれたのが嬉しいんだ。俺に親父や兄貴と似てるところがあるって分かったのが嬉しいんだ」
「ねぇ、深夜」
「何?」
「そんなに気にしなくても良いんじゃないかな」
「え?」
「親子だから似るってわけじゃないでしょ?大事なのは深夜がおじさんや慎一さんをどう思ってるかじゃない?」
「…」
「深夜はおじさんのことを『親父』って呼んでる。おじさんも深夜から『親父』って呼ばれるのを許してる。じゃあ、二人は親子でいいんじゃない?親子でも似てない人はいるんだし」
深夜は柚子葉の言葉に何も言わない。
柚子葉は何か失言をしたのだろうかと困った。
が、深夜は小さい声で呟いた。
「ありがと」
「え?なんて言ったの?」
柚子葉は聞き取れなかったので深夜にもう一度問いかけた。
「何でもない。今日は疲れたな」
そういって深夜は横になろうとした。
が、深夜の頭が柚子葉の膝の上に乗った。
柚子葉はいきなりのことでビックリして膝を動かした。
深夜はそのまま床に頭を打ち付けた。
「痛っ!」
「あ、ごめん。大丈夫?」
柚子葉は心配そうに深夜の頭に手を乗せた。
深夜は痛さで瞑っていた目を開けた。
深夜と柚子葉は目があった。
そして、導かれるように二人とも目を瞑り唇と唇を合わせた。
二人は目を開けた。
間近で深夜の顔を見た柚子葉は顔が真っ赤になった。
「柚子?大丈夫か?」
「う〜、恥ずかしい…。深夜は初めてじゃないんでしょ?」
「ま、まぁ。柚子は?初めてだったのか?」
「…うん」
「そうだったのか」
「嫌だった?」
「そんなわけないだろ。柚子のファーストキスが俺だっていうことは嬉しいよ。そういう柚子はどうなんだ?」
「嫌じゃないです…」
深夜は笑顔を浮かべて柚子葉を抱きしめた。
柚子葉は恥ずかしながらも深夜の背中に手を回した。
抱きしめあっていた二人だが柚子葉の携帯が鳴ったので離れた。
恭子からメールが入っていたので柚子葉は家に帰った。
恭子は柚子葉の様子がおかしいことに気づいたが秀太がいるので何も言わず柚子葉に分からないように笑みを浮かべた。秀太が寝た後に柚子葉に声をかけた。
「柚子葉、深夜君のご両親どんな人だった?」
「えっと、優しい人だったよ。深夜が優しいのはおじさんと慎一さんの影響だと思う」
「しんいちって誰?」
「あ、深夜のお兄さん。忍さんの一個上なんだって」
「へぇ〜、で深夜君と何かあった?」
「え!?ど、どうして?」
「だって、深夜君の家から帰ってきてから様子がおかしいよ」
「そんなことないよ」
「何だ。キスでもしてきたのかと思ったのに」
「え!?」
「え?ホントに?」
「あ、なんでもない。私もう寝るから」
柚子葉はそのまま自分の部屋に入った。
あの行動はどう考えてもキスをしてきたというようなものだ。
恭子はその後姿を見て、笑みを零した。
柚子葉は自分の布団の中に入って今日のことを思い返していた。
深夜の家族と話をした。
そして、深夜と…
それを思い出した柚子葉はまた顔を赤くした。
柚子葉はその日なかなか寝付けなかった。
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