STORY8-4 『柚子葉ちゃん、顔を上げて』
「で、何しに日本に帰ってきたんだ?」
「決まってるじゃない。噂の柚子葉ちゃんに会いに来たに決まってるじゃない」
「噂?」
「そうよ。忍からいろいろ聞いてるから」
「例えば?」
「深夜がいきなり家にあげたとか、深夜と一緒にヒーローショー見たりしたって聞いたけど」
「あぁ。あげたし、ヒーローショーも見たなぁ」
「でしょ?さらには深夜と付き合いだしたって聞いたから見たくなったの」
「で、感想は?」
「いい子そうね。この子も私の娘になるんだと思ったら嬉しくなるわ〜」
「え!?」
敬子の発言に二人の会話を聞いていた柚子葉は驚き顔が赤くなった。
深夜も驚いて声を上げた。
「ちょっと待て!いくらなんでも一気に話が飛躍しすぎだろう!」
「あら、深夜は結婚する気も無い子と付き合ったりしてるの?」
「そういうわけじゃないけど、俺らまだ高校生だぞ!」
「だってねぇ〜、ねぇ、お父さん」
「ん?」
敬子に話を振られた浩史は柚子葉のほうを向く。
「柚子葉ちゃんと呼んでも良いかな?」
「あ、はい」
「柚子葉ちゃんは深夜のどこが好きになったのか聞いてもいいかな?」
「えっと…実際よく分からないんです」
「分からない?」
「はい。私が深夜君のことが好きだと自覚したのは手だったんです」
「手?」
「私が風邪引いたときに看病してもらったんです。そのときに深夜君に手を握ってもらったんですけど、その手が大きくて温かくて安心したんです。それが私が深夜君のことを好きだと自覚したときなんです。どこが好きかは私自身分からないんですけど深夜君と一緒にいたいと思うんです。それじゃあいけませんか?」
柚子葉の言葉を聞いて浩史は満足気に頷いた。
「いや、柚子葉ちゃんは本当に深夜のことを好きでいてくれてるんだね」
「えっと…はい」
「深夜」
「あ?」
浩史は浮かべていた笑顔を消して深夜に顔を向けた。
「お前この子をちゃんと守ってやれよ」
「分かってる」
「あ、えっと…」
浩史と深夜が話してると柚子葉が声を出した。
二人が柚子葉のほうを向くとなにやら言いたそうにしている。
「柚子?どうした?」
「えっと…なんて呼べばいいですか?」
「あぁ、私ならどういう風に呼んでもいいよ」
「えっとじゃあ、おじさんでいいですか?」
「うん。君の呼びやすいように呼んでくれ」
「おじさん、すいませんでした!」
いきなり柚子葉が謝ったので浩史は何がなんだか分からない。
深夜も意味が分からないので柚子葉に声をかけた。
「あ〜と、柚子?一体何を謝ってんだ?」
「えっと、この間のパーティで…」
「あぁ、野上のことか?」
「う、うん」
「深夜、どういうことだ?」
浩史はまだ状況がつかめていないようで深夜に聞いてきた。
深夜は頭をかきながら浩史に事情を説明しだした。
「あのさ、親父。この前野上と業務提携無くなったって言っただろ?」
「あぁ、理由はどうしてもお前話さなかったけどな」
「それな…」
「私のせいなんです!」
深夜の話をさえぎって柚子葉が声を上げた。
その声に浩史だけじゃなく、敬子も慎一も葉月も柚子葉のほうを向いた。
浩史が柚子葉に声をかけた。
「柚子葉ちゃん、どういうことかな?」
「私のせいで野上さんと業務提携がなくなったんです!本当にすいませんでした!」
柚子葉はまた謝った。
浩史はどうしていいか分からずおろおろしている。
慎一は深夜に事情を聞いてきた。
「深夜。どういうことだ?」
「野上の御曹司が柚子葉と一対一で話したいって言ってきたんだ。それを俺は断ったんだけどそしたらあっちが業務提携を止めるって言い出してきて」
「それでそのままにした、と」
「柚子をあんな奴と一対一にさせる気はないから」
「だとよ、親父」
深夜の説明を聞いていた浩史は頷いて頭を下げていた柚子葉の肩に手をのせた。
「柚子葉ちゃん、顔を上げて」
浩史の言葉に柚子葉は頭を上げた。
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