STORY1-3 『植田先生!?』
「いいでしょ?」
「ちょっと待て」
「何深夜?」
「そのご飯を作るのは誰だ?」
「それはもちろん深夜に決まってるじゃない」
「やっぱりか…」
深夜はまたため息をついた。
それを見た柚子葉は気まずい感じを受けた。
「山上君もなんか嫌そうですし…」
「深夜嫌なの?」
「え?別に。どうせ姉貴が言ったことは覆らないし。それに多人数分作るのも慣れてるし」
「あの、さっきから気になってることがあるんですけど…」
「「何(だ)?」」
深夜、忍姉弟は声を揃えて柚子葉に聞いてきた。
その声を聞いて柚子葉は言いにくそうに質問してみた。
「もしかして料理するのは…」
「あぁ、俺」
深夜は手を上げて自分が作ることを柚子葉に伝えた。
忍も深夜を指差し「この子」と言っている。
「でも、迷惑じゃないですか?」
「ここで働いてるのがバレたんだし別に構わない。で、どうする?」
「えっと…」
「じゃあ、秀太君に聞いてみよっか?」
そういって忍は秀太を呼んできた。
「ねぇ、秀太君。今日はお姉ちゃんと晩御飯二人きりでしょ?」
「うん。あさママがそういってた」
「じゃあ今日お兄ちゃん達と一緒に食べるか?」
「え!?いいの?」
「あぁ」
「うん。いっしょにたべる!」
「そういうことだから」
深夜は秀太に向けていた笑顔で柚子葉に話しかけた。
秀太が笑顔で柚子葉を方を向く。
その顔を見て柚子葉は観念した。
「じゃあ、お願いします」
「よし、じゃあ帰るか」
そういって深夜は自分の制服を着てカバンを持って柚子葉たちに近づいた。
「先に山下の家に行って着替えるだろ?」
「あ、はい」
「じゃあ姉貴、勇兄にも言っといてくれ」
「あ、勇一にも伝えないとね。分かったわ」
「7時までに帰ってきてくれ。7時まで待って帰らないと先に食うから」
「分かったわ」
深夜は柚子葉と秀太を連れて保育園を出た。
「山下、お前の家どっち?」
「こっちです」
「あ、俺の家の方向じゃん。それと敬語は止めてくれ。同級生なんだしタメ語でいいって」
「はい」
「敬語じゃねぇか…」
「あ…」
「まぁ、いっか」
秀太は深夜と柚子葉と手をつないで帰れることが嬉しいのか笑顔で二人を見上げてくる。
深夜は見上げてきた秀太の頭を笑いながら撫でた。
その行動を見て柚子葉の中の深夜の印象が不良から子供好きな話しにくい同級生に印象が変わった。
秀太が好きな歌を歌いながら歩き、あるマンションの前まで着いた。
「ここです」
「マ、マジ…」
「どうかしたんですか?」
「俺もここに住んでる…」
「え!?」
「お前何号室?」
「805だけど山上君は?」
「905…」
「ってことは真上?」
「そういうことだな…」
二人は顔を見合わせた。
まさか一緒のマンションに住んでるとは思ってもみなかったのだ。
とりあえず深夜はそのまま自分の部屋に、柚子葉は秀太を着替えさせた後に深夜の部屋に行くことにした。
エレベーターが8階に止まり柚子葉たちがエレベーターから降りる。
「じゃあ、山下。また後で」
「あ、はい」
柚子葉は自分の部屋に入り秀太を着替えさせまたエレベーターに乗り深夜の部屋の前に到着した。
インターホンを鳴らすと深夜の声が聞こえた。
『はい』
「あ、山下ですけど」
『あ、ちょっと待って。今開ける』
そういって「プツッ」と音がした後に「ガチャリッ」と音がして深夜がドアから顔を出した。
「いらっしゃい。上がって」
「あ、おじゃまします…」
「わ〜い」
柚子葉が挨拶を言いながらゆっくり入っていくと柚子葉の足元を秀太が走って部屋の中に入っていった。
その後姿を見て深夜は笑みを浮かべた。
「こら!秀太!」
「えらい嬉しそうだな」
「ごめんなさい、山上君」
「え?別にいいって」
深夜が先に歩き柚子葉がその後ろを歩く。
秀太はすでにリビングのソファで座り遊んでいた。
「山下も座って。何か飲み物入れるから」
「あ、ありがとうございます」
深夜はコップにジュースを入れてリビングのほうに持ってきた。
「じゃあ、TVでも見ててくれ。俺は飯作るから」
「あ、私手伝います」
「いいって。お前は客だからここでゆっくりしてろ」
深夜は立とうとした柚子葉を制し、台所に向かった。
柚子葉はその後姿を見送りとりあえずTVをつけた。
この時間から秀太が好きなアニメをしているのでそれを見せようとした。
秀太は案の定そちらに夢中になった。
柚子葉が台所のほうを向くと深夜が慣れた様子で料理をしている。
申し訳ないと思いながら柚子葉も秀太と一緒にアニメを鑑賞し始めた。
柚子葉がTVの番組の合間にふと時計を見るとすでに6時半を回っていた。
台所を見ると深夜はすでに料理は完成したようでエプロンを外していた。
深夜は自分の飲み物を準備して柚子葉たちの近くに座った。
「あとは姉貴と勇兄を待つだけだな」
「そうですね。あの〜、また気になることがあるんですけど」
「ん?何だ?」
「『勇兄』って誰ですか?」
「あぁ、姉貴の旦那さん。ちなみに姉貴と旦那さんは幼馴染だから俺は勇兄と呼んでるんだ」
「園長先生ってもう結婚してるんですか?」
「姉貴の年知ってる?」
「知らないです」
「いくつだと思ってるんだ?」
「えっと…23ぐらいかと思ってるんですけど」
「確か今年で28じゃなかったっけ」
「え!?そんな上なんですか?」
「そ。だから結婚してても不思議じゃないだろ?」
「そうですね」
そのとき部屋に「ピンポピンポーン」とインターホンが二回続けて押された音が聞こえた。
「あ、姉貴か勇兄かどちらかが帰ってきたみたいだな」
「二人は鍵持って無いんですか?」
「いや、姉貴たちは違う部屋に住んでるんだ」
「え?どうしてですか?」
「まぁ、それは後々な」
そういって深夜は料理を温めなおしに台所に戻っていった。
そしてドアが開き「お腹すいた〜」という声が聞こえた。
台所のほうから声が聞こえる。
「おかえり」
「「ただいま〜」」
「あれ?二人とも一緒だったんだ」
「ちょうど下で一緒になったんだ」
「そうそう。柚子葉ちゃんたちは?」
「リビングでTV見てるよ」
リビングから忍と忍の旦那と思われる男の顔が見えた。
その男の顔を見たとき、柚子葉はまた驚いた。
「お、山下。5時間ぶりぐらいか?」
「植田先生!?」
忍の旦那は柚子葉たちの担任の植田勇一だった。
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