STORY7-4 『げ…』
二人が向かう先には50代の男性が立っていた。
男性のところにつくと深夜が口を開いた。
「本日はお招きいただきありがとうございます」
「え〜と、どちら様で?」
「失礼しました。私山上グループの者です」
「あぁ、山上グループの。でも、確か本日はご令嬢様がいらっしゃると聞いていたのだが」
「本日姉は急用が出来ましたので代わりに私が出席させていただきました」
「そうですか。ところでそちらのお嬢さんは?」
「私の恋人です」
「失礼ですがどちらのご令嬢で?」
「いえ、彼女は私の高校の同級生ですので」
「あぁ、そうですか。どうぞゆっくりしていってくださいね」
「あ、ありがとうございます」
「それでは」
そういって男性は違う場所へ歩いていった。
その後姿を見送って深夜は柚子葉を連れ隅のほうに歩いていった。
隅に着くと深夜はため息をついた。
「はぁ〜、疲れた」
「凄いね」
「何が?」
「あんな偉そうな人と話が出来て」
「そんなことねぇよ。とりあえずこれでやるべきことは終わったな」
「もういいの?」
「後はいろんな人と話して帰って大丈夫だろ。俺らは未成年だしそんなに遅くまでいるわけにもいかないしな」
二人はそのまま隅のほうで話していたが時々深夜の姿を見て話してくる人もいた。
話しかけてくる人全てに深夜は敬語でにこやかに話した。
そして、去っていくと柚子葉にどういう知り合いかを教えたりして過ごしていた。
それからして深夜が周りを見渡していると知り合いを見つけたようでそちらのほうに歩き出そうとしたときに柚子葉は声をかけた。
「深夜。私ちょっとトイレに行ってくるね」
「あ、俺も行こうか?」
「ううん。大丈夫だよ。知り合いの人がいたんでしょ?そっちのほうに行ってて大丈夫」
「じゃあ、行ってくるわ。終わったらまたこの辺で集まろう」
「うん、分かった」
そういって深夜は知り合いであろう男性のところに歩いていった。
それを見送って柚子葉もトイレのほうに歩き出した。
場所が分からなかったので係りの人に聞いてトイレを済ました。
トイレから出ると女性に囲まれている男性の姿を見かけた。
その男性と目が合った柚子葉はとりあえず会釈をした。
男性はその姿を見て柚子葉のほうに近づいてきた。
周りにいた女性陣も一緒になって近づいてきた。
「野上様、どうされたのですか?」
女性陣の一人が男性に声をかけた。
どうやらこの男性の名前は野上というようだ。
野上は女性陣に向きなおした。
「ん?いや、こちらのお嬢さんが気になってね。失礼ですがお名前は?」
最後のほうは柚子葉に言うように野上は口を開いた。
「山下柚子葉です」
「柚子葉さんと言うんですか。素敵な名前ですね」
「あ、ありがとうございます」
柚子葉は照れながらお礼を言った。
野上は口に笑みを浮かべそんな柚子葉を見ていた。
女性陣は面白くないようで皆去っていった。
「助かりました。あんなに人に囲まれるのは嫌いなんです」
「でも、野上さんがかっこいいからじゃないですか?」
「そうですか?」
野上は柚子葉が言うようにモデルをしていてもおかしくないほどにかっこいい。
「そういってもらえると嬉しいな。柚子葉さんは婚約者とかいらっしゃるんですか?」
「え、えっと…」
柚子葉が困っていると携帯が震えた。
ディスプレイには『山上深夜』と出ていた。
柚子葉は野上に断りをいれ電話に出た。
「もしもし」
『柚子か。今どこにいるんだ?』
「会場の外だけどどうしたの?」
『なかなか帰ってこないから心配したんだ』
「あ、ごめん。今から戻る」
柚子葉が電話を切ると野上が柚子葉に声をかけた。
「お連れの方から?」
「あ、はい。じゃあ、私もう戻りますね」
「うん。じゃあね」
「失礼します」
柚子葉は野上に一礼をして会場の中に戻っていった。
野上はその後姿を見てつぶやいた。
「山下柚子葉か…」
柚子葉が会場に戻ると深夜がさっきの隅のほうに立っていた。
その周りには野上と同様に女性陣が集まっていた。
が、深夜は柚子葉の姿を見つけると女性陣を置いて柚子葉に近づいてきた。
「柚子。遅かったな」
「ごめん。ちょっと話してて」
「話?誰と」
「野上さんっていう人と」
「げ…」
「『げ』ってどうしたの?」
「…その野上ってもしかして」
深夜が何か言おうとしたとき二人の男性がこちらに近づいてきた。
一人は先ほど挨拶をした主催者。もう一人は野上だった。
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