STORY7-2 『お前独占欲が強いんだなぁ』
深夜と柚子葉は次の日、忍の友達の真が経営しているブティック店に向かって歩いていた。
「ねぇ?どうして真さんの店には行きたくないの?」
「あ〜、口では伝えれない。行けば分かるから」
「すっごい気になるんだけどな。あ、山上君」
「ん?」
「私、高い服を買えるお金持って無いよ」
「お金は姉貴が立て替えてくれるから心配ない」
「でも…」
「姉貴が用事なんか作るから俺達が来ることになったんだから気にしないでいいって。それとさっき『山上君』って呼んだだろ」
「う…」
「まぁ、まだ時間あるし頑張って呼べるようになってくれよ、柚子」
深夜は柚子葉のことを柚子と呼ぶようにした。
これは深夜が決めた。
他の人とは違う呼び方をしたいと思ったから柚子にしたのだ。
「う、うん」
「えっと…確かこの辺だったと思うんだけどな。あ、ここだ」
深夜と柚子葉はブティック店の前に到着した。
「ここ?」
「あぁ。行くぞ」
深夜と柚子葉は店の中に入った。
店にはおしゃれなドレスなどが置いてあり柚子葉は珍しそうに服を見ている。
深夜は真を探している。
「わぁ〜、これ綺麗…」
「そういってもらえると嬉しいな」
柚子葉が一つのドレスを見て感想を呟くと後ろから男の声がした。
振り向くと一人の男性が立っていた。
サングラスを着けてホストみたいな格好をしていた。
柚子葉が呆然とその男性を見ていると深夜が二人に近づいてきた。
「お久しぶりです、真さん」
「お、深夜か。久しぶりだな」
「はい」
「で、こちらのかわいいお嬢さんはどなた?」
「…俺の彼女です。柚子、こちらが例の真さん」
「おい、例のって何だ?」
「姉貴の友達ってことですよ」
「ふぅ〜ん。まぁ、いいか。お嬢さん、俺が忍の友達の真です」
「あ、山下柚子葉です」
「真さん」
「ん?」
「…柚子に手ぇ出したら俺マジで怒りますからね」
「…お前俺のことなんだと思ってるわけ?」
「真さんが人の彼女に何回も手出したの知ってますから」
「お前俺がそんな最低な奴だと思ってたのか?」
「はい」
「…ヒドイ。ねぇ、柚子葉ちゃん?」
「え?」
「こんなヒドイ奴やめて俺にしない?」
「真さん!」
「冗談だって。お前らの服はもう用意してあるよ。こっちだ」
真は軽い足取りで店の中を歩いていった。
深夜はその後姿を見ながらため息をついた。
「はぁ〜…」
「や、深夜。大丈夫?」
「大丈夫じゃねぇ…。分かったろ?俺があまりここに来たく無い理由。しかも柚子と一緒には…」
「う、うん。なんとなく」
「あの人は俺をからかって遊んで、しかも人の彼女を何度も奪ってるんだ」
深夜は本当に嫌そうに呟いた。
柚子葉はその顔を見て笑みを零した。
「柚子…何笑ってるんだ」
「でも深夜も楽しいんでしょ?」
「…まぁ、楽しいっちゃぁ楽しいけど」
「あんなに構ってもらえるほうが羨ましいけどなぁ」
「お〜い、早く来い!」
二人が話してると真が二人がついてきていないのに気づいて呼んだ。
二人が真のほうに行くと2着の服がかけられていた。
一着は深夜が着るスーツが、もう一着は青色のドレスが用意されていた。
「これが今回俺が用意した服だ。深夜は前に何回か着たものをそのまま使用するけどいいな?」
深夜は真の問いかけに頷いた。
「で、柚子葉ちゃんだけどこれは忍から聞いた人物像に俺が合わせて用意したものだ。とりあえずこれを着てみてくれ。もしイメージと合わないようなら違う服もすぐ用意させるから」
柚子葉は渡されたドレスを持って女性従業員に試着室に連れて行かれた。
残った深夜に真はにこやかに話しかける。
「それにしても…」
「何ですか?」
「お前が彼女を連れて行くとはねぇ」
「俺だって本当は連れて行きたくなんか無いですよ。あんなパーティなんかに」
「お前独占欲が強いんだなぁ」
「俺だって自分で驚いてますよ」
「…深夜。大切にしろよ」
「もちろん」
深夜は自信満々に答えた。
真はその答えを聞いて笑みを零した。
そのとき柚子葉を連れて行った女性従業員が真を呼んだ。
「社長!ちょっといいですか?」
真は深夜も連れて試着室のほうに向かった。
そこにはドレスを着た柚子葉が立っていた。
顔は恥ずかしいのか赤くなっているがドレスは似合っていた。
深夜はその姿に見惚れた。
真も満足そうに頷いて深夜をつつく。
「おい、彼氏なら何か言ってやれよ」
「あ…、似合ってるよ」
「ありがと…」
「…青春だねぇ」
真は見詰め合っている二人を見ながら女性従業員に呟いた。
それを聞いた女性従業員は笑った。
あとがきはYAHOO!blogで書いております
興味があればお越しください
URL↓↓
http://blogs.yahoo.co.jp/in_this_sky