STORY7-1 『絶対連れて行かねぇ』
深夜と柚子葉が付き合いだした次の日。
今日は土曜日だ。
二人は深夜の家で忍と勇一と秀太と一緒に夕食をとっていた。
夕食を食べ終わり、リビングで話をしていると忍が思いついたように深夜に話しかけてきた。
「あ、深夜。明日あけときなさいね」
「明日?何で?」
忍は立ち上がって深夜の家を出て行った。
数分して、忍は手紙を持って戻ってきてその手紙を深夜に手渡した。
深夜はそれを受け取って読み始めた。
「何これ?…えっと、パーティ?」
「そう。本当は私と勇一が行くはずだったんだけど私たち用事が出来たの。だから、深夜代わりに行って頂戴」
「ふぅ〜ん。どうせ、もう断れないんだろ?」
「あら、よく分かってるじゃない」
「別にいいけど、これパートナー同伴じゃねぇか。俺そんな奴いないんだけど…」
「あら、柚子葉ちゃんがいるじゃない」
「え!?」
柚子葉は急に話を振られて驚いた。
「私ですか?」
「そう。明日暇?」
「ええ。母の仕事も夜はないですけど…」
「ちょっと待て」
「何よ、深夜」
「このパーティってこの会社の御曹司の婚約者を探すものだろ?」
「え?そうなんですか?」
「表はただの記念パーティだけど、裏はそうでしょうね。あそこの御曹司もいい年だし」
「絶対連れて行かねぇ」
「でも、深夜他にパートナーとかいないでしょ?どうするの?」
「…パーティに行かねぇ」
「それは駄目よ」
「あの〜、私行きます」
「はぁ!?」
「ありがとう!」
柚子葉の言葉に深夜と忍は正反対の反応を示した。
その反応に柚子葉は驚き、後ろのほうで勇一は笑っている。
「ちょっと待て!山下、お前本当に分かってるのか!」
「え、うん。御曹司さんの婚約者を探すパーティに参加するんでしょ?」
「だから、それでいいのかって言ってんだ!」
「だって、行かないと困るんでしょ?じゃあ、行くしかないじゃない」
「あのなぁ〜…」
「それに、私が選ばれるわけないじゃない。だから大丈夫だよ」
柚子葉の言葉に深夜が呆れていると勇一が笑いながら深夜に話しかけた。
「深夜諦めろ」
「勇兄…」
「お前が守ってやればいいだろ?」
「…分かったよ」
「ごめんね。山上君」
「山下が悪いんじゃないから」
「じゃあ、明日昼に二人で真の店行きなさい」
「マコトって誰ですか?」
「私の友達。ブティックを経営してるの」
「そこでパーティ用の服買わないと柚子葉ちゃん持ってないでしょ?」
「持って無いですけど」
「だからそこで買いなさい。真には私から言っておくから」
「あんまり真さんの店には行きたくないんだけどなぁ…」
深夜は本当に嫌そうに呟いた。
それを聞いた柚子葉は深夜に聞いてみた。
「え?どうして?」
「まぁ、お前も明日行けば分かるって」
「ふぅ〜ん。山上君、明日はいつごろ行くの?」
「そうだな、パーティは7時からだから2時ぐらいに真さんの店に行けば大丈夫だろ」
「分かった」
「ねぇねぇ、柚子葉ちゃん」
「何ですか?」
忍がニヤニヤ意地悪な笑いを浮かべながら柚子葉を呼んだ。
柚子葉はあまり気にしていないようだが、深夜は嫌な予感がしていた。
「いつまで深夜を『山上君』って呼ぶの?」
「え?」
「いやね、柚子葉ちゃんと深夜は恋人同士でしょ?」
「え、えっと…」
柚子葉は顔を真っ赤にして困惑している。
それを見た深夜は助け舟を出した。
「姉貴、山下をからかうのもそれぐらいにしてやれよ」
「あら、深夜だって柚子葉ちゃんをいつまで『山下』って呼ぶの?」
「だって俺達付き合ってまだそんなに日にちはたってないんだからまだ呼びやすい名前でいいだろ。なぁ、山下」
「え?そ、そうですよ」
「む〜、面白くない…」
「俺らをからかって遊ぶのはやめてくれ…」
「でも…」
勇一が口を開いたので3人は勇一のほうを向いた。
「勇兄?『でも』って何?」
「ん〜、そんなパーティに行くのに苗字で呼ぶのはまずいだろ」
「確かに…」
「そのときだけでも名前で呼ぶようにしたほうがいいだろ」
「じゃあ、…柚子葉」
「う…、深夜…君」
「山下、『君』はいらない。パーティで君付けされてる男性の方はいないから」
「あ、はい…」
「そんな神経質にならなくても大丈夫だから」
「そうそう。明日までに練習しとけば大丈夫だって」
「う、うん」
柚子葉はそれから『深夜』と呼べるように頑張ったが結局その日は照れて『深夜』と呼べなかった。
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