STORY6-4 『好きな人はいないの?』
柚子葉は翔から受け取った鍵で屋上のドアを開ける。
柚子葉は屋上に出て周りを見渡す。
が、深夜の姿は見つからない。
仕方なく違う場所を探そうと戻ろうとすると声が聞こえた。
「翔?」
深夜の声がどこかから聞こえた。
柚子葉がもう一度周りを見渡すと深夜が給水塔の後ろから顔を覗き込んでいた。
「山下?」
「あ、前田君からこれ借りて…」
「何?俺に用?」
「うん…」
深夜は起き上がって柚子葉の前に立った。
「何?」
「あのね、どうして山上君は今回真面目にテスト受けてくれたの?」
「山下が嫌そうだったから」
「ありがとう。でもごめんね。カンニングと間違えられて」
「別に。そのぐらいは慣れてるし」
「そうなんだ…」
深夜はその場にまた寝転ぶ。
柚子葉も深夜の近くに座った。
それから数分して深夜が口を開く。
「なぁ、山下…」
「何?」
「お前好きな奴がいるって言ってたよな」
「う、うん」
「告白しないのか?」
「…」
「してみろよ。お前だったら上手くいくさ」
「…そういう山上君はどうなの?」
「俺?」
「好きな人はいないの?」
「…いる」
「告白はしないの?」
「しない」
「どうして?」
「好きな奴には他に好きな奴がいるっていうことが分かったから」
「…そうなんだ。好きな人の名前聞いてもいい?」
「…。で、お前は告白しないのか?」
深夜は柚子葉の問いかけには答ず、逆にまた柚子葉に問いかけた。
「う、うん。私も好きな人には他に好きな人がいるってこと分かってるから…」
「そっか…」
「うん」
それから、また沈黙が流れた。
その沈黙は予鈴がなるまで続いた。
柚子葉は深夜に声をかける。
「授業始まるから戻るね」
「あぁ…」
深夜が起き上がる気配がないから柚子葉は一人で教室に戻っていった。
柚子葉が教室に戻ると翔の席の近くに真希と圭が集まっていた。
「柚子葉、どこ行ってたの?」
「ちょっとね…」
「前田に聞いても教えてくれないし」
「だって、俺も知らなかったし」
「それは嘘でしょ?」
「本当だって」
「嘘ばっかり…。柚子葉?どうかしたの?」
「え?別にどうもしてないけど何で?」
「いや、さっきからボーとしてるけど何かあったの?」
「ううん。大丈夫だよ」
教室に先生が入ってきたので真希と圭は自分の席に戻っていった。
それを確認した柚子葉は翔に屋上の鍵を返した。
「前田君、これありがとう」
「深夜に会えた?」
「うん。おかげで話できたよ。ありがとう」
「それはいいけど大丈夫か?」
「え?」
「何かあったのか?」
「ううん。何も無かったよ」
「そうか?」
「うん」
先生が授業を始めたので二人は話を止めて教科書を開いた。
が、柚子葉は屋上での会話を思い出していた。
深夜は告白してみろと言っていた。
柚子葉が好きな人は深夜である。
が、深夜には好きな人がいるということも分かった。
告白なんかできるわけがない…
午後の授業の間、柚子葉は浮かない顔をしていた。
そして放課後。
帰り支度をしている柚子葉に青井が近づいてきた。
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