STORY6-1 『うん。上手い』
柚子葉が風邪で寝込んで数日がたった。
柚子葉たちが通っている学校ではもうすぐ中間テストが行われる。
授業もテストに向けての復習などが行われている。
柚子葉は放課後、真希と圭と三人で図書室でテスト勉強をしていた。
テスト勉強を終えた柚子葉は保育園に秀太を迎えに行った。
保育園では深夜がまだ忍の手伝いをしていた。
柚子葉の姿を見つけた深夜が秀太を連れてきた。
「今日は遅かったな」
「テスト勉強をしてたから…」
「へぇ〜、真面目だな。今日はおばさんいないんだろ?飯食いに来いよ」
「えっと…お邪魔します」
「ちょっと待ってろ。今帰り支度してくるから」
そういって深夜は保育園の中に入っていった。
柚子葉はその後姿を見ながらため息をついた。
深夜への気持ちを自覚してから深夜の何気ない仕草が気になって仕方無いのだ。
そんな姉の姿を見た秀太が声をかける。
「おねえちゃん、どうしたの?」
「あ、ううん。何でもないの」
「ほんとに?」
「うん。大丈夫」
「何が大丈夫なんだ?」
「うわ!?」
深夜がいつのまにか柚子葉の背後に立っていた。
いきなり声をかけられた柚子葉はかわいくない叫び声をあげてしまった。
「うわって…」
「だって、山上君が急に声をかけるから…」
「はいはい、俺が悪かった。で、さっきは何が大丈夫って言ってたんだ?」
「ううん。何でもないよ」
「あのね、さっきおねえちゃんためいきついてたんだよ」
「秀太…」
「へぇ〜、ため息をね〜。で、ため息の原因は?」
「えっと…」
『あなたのことが好きだからため息をつきました』とは絶対に言えない…
何か良い言い訳は無いか考えた柚子葉は勉強のことを言おうと決めた。
「勉強が上手く進んでなくて…」
「だったら今日教えてやるよ。その代わり今日は山下が料理作ってくれないか?たまには他人の手料理が食いたい」
「あ、うん。ずっと食べさせてもらうばっかりだったし、今日は私が作るよ」
「じゃあ、さっさと帰るか」
深夜が秀太の手を握って歩き出す。
柚子葉も秀太の空いている手を握って歩く。
マンションに着いて深夜は家のドアを開ける。
柚子葉も深夜に勉強を教わるため、今日は着替えずにそのまま深夜の家にお邪魔することにした。
「山下、今日は料理頼むな。冷蔵庫の中のもの何でも使って構わないから」
「分かった。えっと…じゃあ、オムライスを作ろうと思うけどいい?」
「秀太、今日はオムライスでいいか?」
「うん!」
「じゃあ、オムライスで決定だな。俺達はリビングにいるから出来たら呼んでくれ」
「うん」
深夜は秀太を連れてリビングに歩いていった。
柚子葉はとりあえず深夜のエプロンを借りてオムライスを作り始めた。
料理の合間にリビングのほうを見るとTVをつけて秀太はアニメを見ていた。
深夜は秀太の近くで本を読んでいた。
時間もいつもより遅いので急いで柚子葉は料理を作り終えた。
「山上君、出来たよ」
「早いな。秀太、ご飯だ」
深夜と秀太はテーブルに座る。
柚子葉は三人分オムライスをテーブルに運ぶ。
「忍さんたちは待たないの?」
「待たなくて大丈夫だろ。いつ帰るか分からないし先に食べよう」
「それじゃあ、せ〜の」
「「「いただきます」」」
深夜は柚子葉が作ったオムライスを口に含む。
柚子葉は心配そうに深夜のほうを見る。
「うん。上手い」
「ホント?」
「あぁ。なぁ、秀太?」
「うん。おねえちゃん、おいしいよ」
「良かった〜。急いで作ったから心配だったんだ」
柚子葉は安堵の表情を浮かべた。
三人は話をしながら夕食を食べ終えた。
皿洗いは深夜がして、その間柚子葉は勉強をすることにした。
皿洗いを終えた深夜が自分の部屋から勉強道具を持ってきて柚子葉の近くに座る。
「で、どの辺が分からないんだ?」
「数学の…」
柚子葉は数学で詰まっているところを深夜に告げた。
深夜は学校の先生よりも分かりやすく、なんとか理解することができた。
柚子葉は詰まったら深夜に聞き、柚子葉が詰まらずに問題を解いてる間は深夜は自分の勉強を進めたり秀太の面倒を見ていた。
勉強を始めて1時間がたったころ、勇一が帰宅した。
「勇兄、おかえり」
「お邪魔してます」
「ただいま。山下いらっしゃい。二人とも勉強か?」
「はい。もうすぐ試験ですから山上君に教えてもらってるんです」
「そうか。前回上がったから期待してるぞ」
「頑張ります」
勇一はテーブルに置かれているオムライスに箸を伸ばした。
「ん?このオムライス深夜が作ったのか?」
「何で?」
「いつもと味付けが違う気がするんだよなぁ〜…」
「マズイ?」
「いや、俺はこっちのほうが好きだな」
「だってさ、山下」
深夜が柚子葉のほうを向いた。
勇一も釣られて柚子葉のほうを向く。
「え?これ山下が作ったのか?」
「あ、はい」
「それで味付けが違う気がしたのか。うん、上手いよ」
「あ、ありがとうございます…」
柚子葉は照れながら答えた。
勇一は気に入ったのかすぐに食べ終えた。
自分でコーヒーを入れて二人が勉強をしている近くに座った。
「じゃあ、俺が秀太君見ててやろうか?」
「大丈夫だって。俺はそんなに真面目に勉強して無いし。山下が分からないところを教えてるだけだから」
「俺が見たいんだよ」
「じゃあ、お願いできますか?」
「任された!」
勇一はコーヒーを飲み終え、秀太のほうへ嬉しそうに歩み寄っていった。
そして、秀太の近くに座り秀太を自分の膝の上に乗せて何か話しかけている。
秀太も笑って勇一のほうを見ている。
深夜と柚子葉は勉強を再開した。
それから数分して忍も帰ってきた。
忍も二人の勉強の邪魔をしないように勇一と一緒に秀太と遊び始めた。
さらに数時間して秀太が眠たくなったので、柚子葉と秀太は自分の家に戻った。
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