STORY1-2 『うちでご飯食べない?』
「な…な…な…なんでここに…?」
「それはこっちのセリフだ…」
柚子葉は何がなんだか分からない。
どうしてこんなところに深夜がいるのだろうか。
深夜もこんなところで柚子葉と会うとは思っていなかったのだろう。
「ど、ど、どうして?」
「どうして俺がここにいるかって?」
深夜が柚子葉の言いたいことを代弁してくれたので柚子葉はうなずいた。
「これ俺の姉貴」
そういって深夜は忍を指差した。
忍のほうも「深夜の姉です」と自己紹介をしてくれた。
「で、ここで手伝いしてんの。一応男手が足りないっていう話だから」
「ねぇ深夜。彼女とどういう知り合いなの?」
「今年同じクラスになった女子」
「じゃあ、とうとうバレたの?」
「そうみたいだな…」
柚子葉が状況を理解しようとしている間秀太が深夜に話しかけてきた。
「ねぇ、しんやお兄ちゃんはおねえちゃんと知り合いなの?」
「そうだよ」
「じゃあ、まだここで遊んでもいい?」
「姉貴どう?」
「彼女の許しがでたらいいわよ」
「OK。山下?」
柚子葉はまだ状況を理解しようとしてるのか深夜の問いかけに反応しない。
深夜はもう一度柚子葉に問いかけた。
「おい、山下」
「え!?な、何?」
「お前今日これから予定ある?」
「え、別にないけど」
「じゃあ、秀太をここでもう少し遊ばせていいか?」
「お姉ちゃん、ボクまだ遊びたい」
柚子葉は忍にここでまだ遊ばせていいかどうか聞いてみた。
「あの〜、大丈夫ですか?まだここで遊ばせても」
「ええ、別に構いませんよ」
「じゃあ、いいわよ。遊んでらっしゃい」
「わ〜い、しんやお兄ちゃん行こうよ」
そういって秀太は深夜の手を引っ張っていく。
「分かったから引っ張るな。じゃあ、山下。もう少し遊ばせてくるから」
「あ、お願いします」
「何で敬語なんだよ」
そういって深夜と秀太は他の子供達が遊んでいる庭に走っていった。
深夜が庭に行くと子供達が深夜に群がっていく。
それを見ていた柚子葉に忍が話しかける。
「さてと、じゃあ〜、え〜と…」
「あ、柚子葉です。山下柚子葉」
「じゃあ、柚子葉ちゃんって呼んでもいい?」
「はい」
「柚子葉ちゃん中でお茶でも飲まない?」
「いいんですか?」
「もちろん」
そう言って忍は保育園の中に柚子葉を連れて行った。
忍が案内したのは園長室だ。
「えっと、コーヒーでいい?」
「あ、はい」
忍は二杯のコーヒーをいれ一杯を自分の前に、もう一杯を柚子葉の前に置いた。
柚子葉は「ありがとうございます」とお礼を一言いい口をつけた。
「柚子葉ちゃんって今まで秀太君を迎えに来たことないよね?」
「はい」
「どうして今日は?」
「母の仕事のローティションが変わったんです」
「お母さんの仕事って何だっけ?」
「看護師です。今年度からなんか忙しくなったらしいんで母と交代で送り迎えをすることになったんです」
「じゃあ、明日は?」
「明日は私が連れてきて母が迎えにくる予定です。母の仕事にもよりますが」
「え?じゃあ今日は二人きり?」
「ええ」
そういって忍は考え出した。
忍が考えている間に深夜が園長室に入ってきた。
「あれ?姉貴何唸ってんの?」
深夜はコップに飲み物を入れながら忍に尋ねた。
が、当の忍は思考中で気づいて無いようだ。
深夜は飲み物を飲み干し、柚子葉の方を向いた。
「山下」
「は、はい」
「頼みがあるんだけど」
「な、なんでしょう…」
「俺がここで手伝ってること他の人に言わないで欲しいんだ」
「え?どうしてですか?」
「俺のイメージじゃないだろ?子供と遊んでるのは」
「ま、まぁ」
「だから他の人に言わないで欲しいんだ」
「分かりました」
柚子葉の返事を聞いた深夜はホッとしたのか安堵のため息をついた。
「ところで何で敬語なんだ?」
「え?別に理由はないんですけど」
「俺が怖いのか?」
「え!?」
「その返事はそうなんだな…」
柚子葉の驚きの声を聞いた深夜は今度は重いため息をついた。
そのときに忍が考えていた答えが出たのか顔を上げた。
「あれ?深夜いつからいたの?」
「姉貴が考えてるときから」
「そっか。あ、柚子葉ちゃん」
「何ですか?園長先生?」
「忍でいいわよ。柚子葉ちゃんは今日秀太君と二人きりなんでしょう?」
「ええ」
「じゃあ、うちでご飯食べない?」
「「え!?」」
この提案に驚きの声をあげたのは深夜と柚子葉だった。
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