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STORY25-1 『どうだった?大学』

「おはよう」


ある日の朝、柚子葉が教室のドアを開けるとすでに来ている生徒から返事が返ってきた。

柚子葉はカバンを自分の机に置いてマフラーなどの防寒着を外してカバンの中に入れた。

椅子に座って外を眺めてると視界が急に暗くなった。

急いで振り返ると真希と圭が笑顔で立っていた。


「おはよ~」

「おはよう。もう、ビックリするじゃない」

「たまにはこういう挨拶もいいかなと思って」


真希と圭は自分の机の上にカバンを置いて戻ってきた。


「久しぶり」

「久しぶりでいいのかな?」

「約一週間ぶりだよね」


柚子葉達の学校では三年生はすでに家庭学習に入っており、学校へは補習などを受ける生徒しか登校していない。

従ってすでに進学先が決まっている柚子葉、真希、圭は学校へは登校していない。

自動車学校に行く者もいるが、柚子葉は家で秀太と遊んだり深夜の勉強の手伝いなどをしていた。

今日は卒業式の練習などがあるため登校日となっている。

三人で話していると翔が眠たそうに教室に入ってきた。


「…おはよ」

「どうしたの?眠そうだけど」

「今日学校って忘れてて徹夜でゲームしてた…」


翔はそういうなり机に突っ伏してしまった。

柚子葉達は顔を見合わせて笑みを浮かべた。

教室に入ってくる生徒達と話してるとチャイムが鳴った。

が、まだ担任である勇一が入ってこないので生徒達は話を続けている。

柚子葉達のグループも話を続けていて真希が柚子葉に話しかけた。


「そういえば今日山上は?」

「あ、深夜なら…」


「チャイム鳴ったんだから席つけよ~」


柚子葉が答えようとしたところ勇一が教室に入ってきた。

結局答えずに柚子葉は自分の席に戻った。

教壇から勇一が声を出した。


「よぉ~し、皆久しぶりだな。って、前田、起きろ!」


勇一の言葉に翔はゆっくりと体を起こして手をグゥーと上に伸ばした。


「あ~、ねみぃ」

「学校に来て言うセリフじゃないぞ。今日は卒業式の練習だからそれまでにしっかりと目を覚ましておけ。俺はともかく松田先生はうるさいぞ。今日の連絡は…これぐらいかな」

「先生、山上今日は休みなんですか?」

「あぁ、あいつは遅れて来る。今日大学の合格発表だからな」


勇一の答えに教室中から『へぇ~』『ふぅ~ん』といったなんともいえない返事が返ってきた。

勇一はそれには何も言わずに教室から出て行った。

HRが終わると真希と圭が柚子葉のところにやってきた。


「山上今日発表なんだ」

「うん。朝行くからって言ってた」

「でも、山上なら受かってるよ」


真希は笑顔で柚子葉を見た。

柚子葉も笑顔で真希を見返した。

そして、一時限が終わり二時限との間の休憩時間に深夜が登校してきた。


「うっす」


深夜が言うと教室中の視線が深夜に向けられた。

深夜は少したじろいだ。


「…何だよ」

「どうだった?大学」


深夜は生徒の質問には答えずに自分の机に向かった。

どこかその足取りは重たげだ。

こんな深夜を予想していなかったクラスメイトは少し驚いた。

『もしかして落ちた?』『駄目だったのか…』というような言葉も聞こえてきた。

恐らく深夜の耳にも聞こえてるだろうが何も反応しない。

そして、自分の席に座ると『はぁ~…』とため息をついた。

クラスに気まずい空気が流れているが柚子葉と翔だけは少し肩が震えている。

真希は二人を見て声をかけた。


「柚子葉、どうしたの?」

「え?べ、別に」

「前田も?どうかしたの?」

「な、何でも…。も、もう駄目だ!」


そういうなり翔はいきなり笑い出した。

それにつられて柚子葉も笑い出してしまった。

どうしてここで二人が笑い出すのか分かっていないクラスメイトは二人に声をかける。


「何で笑ってるの?」

「だ、だって…」

「…みんな騙されてんだよ。深夜、大学受かったんだろ?」

「受かったけど?」


翔の言葉に深夜は普通に頷いた。

それにクラスメイトは一気に深夜に詰め寄った。


「お前受かったのかよ!」

「だから受かったって」

「じゃあ、何であんなゆっくり歩いて入って来るんだよ!」

「久しぶりに学校に来たら疲れたんだよ」

「じゃあ、あのため息は…」

「『めんどいなぁ』っていうため息」


深夜がそう答えると深夜と仲のいい男子は深夜の頭をはたいて自分の机に戻っていった。

深夜は叩かれた頭に手を添えて笑みを浮かべていた。

それを見ていた真希と圭は思い出したように一度自分の机に戻って何かを取ってきた。

そして、それを深夜と翔に差し出した。


「はい、これ二人に」

「何これ?」

「何って今日は?」

「いや、バレンタインだろ?それは分かるけど何で俺らにってことを聞きたいんだけど?」

「義理チョコだよ。二人には勉強教えてもらってるしね。お礼と思って受け取って」

「ん。じゃ、ありがたくもらうわ」

「俺ももらう」


深夜と翔は真希達からもらったチョコをその場で開けた。

いかにも『義理です』というサイズのチョコだった。

二人ともその場で口に入れて味わった。


「うまいな」

「あぁ。サンキュ」


深夜が真希と圭に礼を言うと二人は笑みを浮かべた。

すると、クラスの女子グループが深夜に近寄ってきた。


「ねぇ、山上君」

「どうした?」

「私達からのももらってくれる?」

「へ?」


グループの一人が深夜にチョコを差し出してきた。

深夜はチョコと女子を見比べてから受け取った。


「…サンキュ」

「ううん、勉強教えてくれてありがとう」


そういって女子達はその場から離れていった。

すると今度は違うグループがチョコを持ってきた。


「私達からももらって」

「は?」

「あ、私達からも」


そういってクラスの女子のほとんどが深夜にチョコを持ってきた。

深夜は何がなんだか分からない様子だが受け取っている。

いや、受け取っているというよりは強引に机に置かれていっているというほうが正しいか…

同じように翔にもチョコが渡されている。

結局深夜と翔の机の上には二桁を越えるチョコが置かれることになった。

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