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STORY24-END 『お互い様でしょ?』

柚子葉が寝室に入ると深夜はすでにベッドの中で眠っていた。

ゆっくりと柚子葉はベッドに近づき深夜の顔を見た。


「深夜…寝てるの?」


柚子葉が小声で深夜に声をかけるが返答はない。

柚子葉は深夜の顔を見て呟いた。


「気を遣わせてごめんね…。明日頑張ってね」


柚子葉は深夜を起こさないように気をつけながら深夜の唇に自分の唇を寄せた。

そして、そのまま音を立てないように気をつけて寝室を出た。

ドアが閉まる音がした後、深夜は目を開けた。

寝付けなくて深夜は目を瞑っただけの状態だった。

柚子葉が何しに来たのか分からずにとりあえず声を返すタイミングを逃してしまった。

体を起こして深夜は頭を掻いた。


「…そんなの気にしなくていいのに」


深夜はまたベッドに潜り込んだ。

それから、何分たったのかわからないが勇一が寝室に入ってきた。

深夜はまだ意識があったので今度は体を起こすと勇一は笑みを浮かべていた。


「まだ寝てなかったのか?」

「あぁ。…勇兄の差し金だろ」

「何がだ?」

「柚子。ここに向かわせたの」


勇一は笑みを浮かべたまま寝室に置かれている椅子に腰掛けた。


「正解。山下が気にしてたからな」

「俺が寝てると思ってたんだろうな。『気を遣わせてごめん』って言ってた。そんなの気にする必要ないのに…」

「お前の言葉が足りないんだろうが」

「俺のせい?」

「お前が『一緒にいて欲しい』って言えばあいつだっているだろう。それにさっきだって山下に一言フォローすればあいつも気にすることもなかった」

「…言葉が足らない、か。付き合って一年以上たつけど言われてみればそうかもしれないな。柚子達は?」

「もう家に帰った。明日の朝また下で待ってるってさ」

「そっか。…サンキュ」


深夜がそういうと勇一は深夜の頭を掻きまわした後、寝室を出て行った。

小さい頃、よく勇一はこうやって深夜の頭を掻いたり軽く叩いたりとしていた。

懐かしさと同時に感謝の想いが深夜の心に浮かんだ。

いつも深夜を後押ししてくれたのは勇一だった。

忍には話せないことでも勇一には話せる。

慎一という兄もいるがそれ以上に勇一は深夜にとって大きな存在となっている。

『いつまでたっても勇兄には適わないなぁ』と思いつつ深夜は明日の試験に備え眠りに就いた。

そして、次の日。

深夜がマンションのエントランスに降りるとすでに柚子葉が立っていた。

深夜は柚子葉に駆け寄り声をかけた。


「おはよ」

「あ、おはよう」


二人並んで駅のほうに向かった。

歩いている間二人の間には会話はなかった。

深夜は一つ息を吐いて柚子葉に話しかけた。


「柚子」

「何?」

「試験終わったらどこか行こう」

「え?」

「二人でデートしよう。どこ行きたい?」


深夜の突然の提案に柚子葉は何も答えなかった。

そんな柚子葉を見て深夜は苦笑いを浮かべた。


「俺が柚子と一緒にどこか行きたいんだ」

「…でもいいの?まだ二次試験あるのに」

「いいの。お前と一緒にいるほうがリラックスできるから。俺が試験中に行きたい場所考えてて」

「…うん」


柚子葉が頷いたのを見て深夜は分からないように安堵の表情を浮かべた。

断られるのではないかという気持ちもあったがそれでも誘いたかった。

リフレッシュということもあるが二人でどこかに行きたかった。

深夜が柚子葉の顔を盗み見ると柚子葉もどこか嬉しそうな顔をしていた。

駅には予定よりも早い時間に着いてしまった。

深夜は柚子葉に声をかけた。


「柚子。もう帰っていいぞ」

「電車が来るまでいるよ」

「いや、風邪引かれたら困るから。どうせコンビニにでも行って時間を潰そうと思ってるし。あ、今日は弁当ある?」

「あ、あるよ。忘れてた」


柚子葉はカバンから昨日と同サイズの弁当箱を取り出して深夜に渡した。

深夜はそれをカバンにしまってから柚子葉に顔を向けた。


「サンキュ」

「ううん。頑張ってね」

「あぁ。…帰っていいって」

「ここにいるから」

「帰れ」

「帰らない」

「…ったく。こういうところは強情だよな」

「お互い様でしょ?」


深夜と柚子葉は顔を見合わせて笑みを浮かべた。

こんなやりとりをするのもどこか久しぶりの気がする。

二人で笑っていると駅に電車が入ってきた。


「やっべ!じゃあ、行ってくる!」


深夜はそういって駅に駆け込んで行った。

柚子葉は深夜の後姿を見送った後呟いた。


「頑張ってね。…どこ行こうかな」


マンションに歩いて帰る柚子葉の顔には笑顔が浮かんでいた。

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