STORY23-6 『姉貴!』
※この話には未成年の飲酒シーンが入ってます。お酒は20から!
それからも話をしながらの宴会は続いた。
途中で秀太が眠たそうにあくびをしたので深夜が自分の部屋に布団を敷いて柚子葉が寝かせた。
眠った秀太の頭を触りながら柚子葉が深夜に話しかける。
「秀太、楽しそうだったね」
「あぁ。知らない人がいて最初は俺か柚子の隣にひっついてたのにいつのまにか聖慈さんの膝の上に座ってたし」
「聖慈さんも子供の扱い慣れてたね」
「なんでも大竹の子供と何度か遊んでるらしいから」
二人で話をしていると聖慈が深夜の部屋に顔を出した。
「寝た?」
「あ、寝ましたよ」
「…お前ら本当の家族みたいだな」
眠っている秀太を柚子葉が頭を撫で、深夜がそれを優しく見ている。
聖慈は深夜達を見ながら口に出した。
「まぁ、もう一年半の付き合いなんで。で、用事があったんじゃないですか?」
「いんや、別に。ただ、寝たかなぁと思って顔を出しただけ」
聖慈はそういうと部屋から出て行った。
深夜と柚子葉も立ち上がってリビングに向かった。
すでにTVではカウントダウンの準備が行われている。
それを見て深夜は口を開いた。
「今年ももう終わりかぁ」
「うん」
「で、来年から大学だもんな」
「お前大学で何勉強するんだ?」
深夜と柚子葉の会話に聖慈が口を挟む。
深夜は聖慈のほうを見て答えた。
「俺教師になりたいんでその勉強を」
「へぇ~。地元の大学?」
「ええ。市大を目指してます」
「柚子葉ちゃんは進学?」
「はい。私も市大です」
「二人とも一緒なのか。…一緒にしたっていうほうが正しいか」
「それは違いますよ。付き合う前からお互い進路が市大だっただけです。なぁ?」
深夜の問いかけに柚子葉も頷いた。
「うん。私は保育士になりたいから市大を目指してたんです。初め深夜も市大を目指してるって聞いたときは嘘かと思いました」
「どうして?」
柚子葉の言葉を聞いて雫が首を傾げ柚子葉に聞いてきた。
柚子葉は苦笑いを浮かべた。
「深夜の成績を知ってたから…。市大って地元でもレベルが高いでしょ?そのときは深夜の成績は良くないって思ってたの。だから、まさか同じ大学なんて思ってなかったの」
「あのときは学校の成績なんてどうでもいいと思ってたからなぁ。それに、絶対カンニングと疑われるって分かってたからちゃんと受けなかったんです」
「今は?」
「今はちゃんと受けてますよ。っていうか受けないと怒られます…」
「そういえば山上君って最近のテストで上のほうに名前あるよね?」
「いろいろあって一位を取っちまったからなぁ。それからは真面目に受けてるから」
「いろいろって?」
深夜の言葉に聖慈が突っ込む。
「それは内緒です。伊集院は大学に進まないのか?」
「私?うん、大学に行きたい気はあるんだけど仕事があるから」
「関係ないだろ」
「え?」
雫の話を聞いていた深夜が口を挟む。
雫が深夜の顔を見ると深夜は口を開いた。
「伊集院がやりたいことをやればいいんじゃない?俺達と違ってお前はもう仕事をしてる立場だから責任があるだろうけどやりたいことを我慢してまでやるっていう年でもないだろ。そりゃ、一生その仕事をしていくとか家族がいるからとか、支える人がいるなら嫌なことを我慢してやる必要もあるだろうけど今のお前はまだ選べる段階だと思う」
「…」
「まぁ、これは俺の意見だし?彼氏がなんていうだろうか知らんけど」
深夜は聖慈のほうに視線を向けた。
雫もつられて聖慈に顔をむける。
聖慈は一度咳払いをしてから口を開いた。
「雫の人生だ、雫が決めろ。アドバイスはする。だが、『こうしろあぁしろ』なんてのは言わない」
「…うん、もう少し考えてみる」
雫はゆっくりと頷いた。
聖慈は雫の頭に手を置いてゆっくりと撫でだした。
深夜と柚子葉に二人を見て笑みを零した。
そこに勇一が声をかける。
「いい話をしているところ悪いんだが、もうすぐカウントダウンが始まるぞ」
勇一の言葉を聞いて深夜達がTVを見ると司会者がカウントダウンを観客に促していた。
慌ててTVの前に座ると司会者がカウントダウンを取り出した。。
『…3…2…1…、ゼロ!』
司会者がカウントダウンを終えるとTVからは歓声が上がった。
深夜達もお互い頭を下げた。
「あけましておめでとうございます」
そして、全員で顔を見合わせると笑い出した。
それからもいろいろな話をした。
すると、何故か苦手なものについての話になった。
「柚子葉ちゃんは苦手なものとかないの?」
「私は雷と停電が…。雫ちゃんは?」
「私は虫かなぁ」
「分かる分かる!私も苦手」
「山上君は?」
深夜は酒を飲んでいたがすっと立ち上がって別のところに行こうとした。
が、聖慈が深夜の服を持っていた。
「どこに行くんだ?」
「…トイレ」
「ま、座れ座れ。逃がさないから」
「そういえば私まだ深夜の苦手なもの聞いてない。あるんでしょ?」
「そりゃ、まぁ…」
「深夜はおばけが苦手なのよ」
そこに忍がやってきて深夜の苦手なものを答えた。
それを聞いて深夜は顔を赤くして忍に詰め寄った。
「姉貴!」
「お…」
「ば…」
「け…?」
柚子葉達は深夜の苦手なものを復唱して笑い出した。
特に聖慈はツボに入ったのか深夜の背中を叩きながら笑っている。
「お…おばけとかお前何歳だよ」
「…だから言いたくなかったんだよ」
「あれ?でも、深夜この前おばけ屋敷入ったとき平然としてなかった?」
柚子葉はこの間クリスマスで行った遊園地のことを思い出していた。
深夜と柚子葉、それに秀太でおばけ屋敷に入ったとき深夜は特に怖がっている様子もなかった。
「あぁ…。俺さ、別にホラーとかが苦手って訳じゃないんだよ」
「え?どういうこと?」
「ほら、ジェイソンとかはさ、物理攻撃とか聞きそうだからまだ倒せそうだろ?でもさ、おばけとかから逃げてもあいつら壁を抜けてくるんだぞ」
「…それって苦手って言うの?」
「なんか違うだろ、それって」
深夜の答えに聖慈達は首をかしげた。
確かに苦手というレベルではない気がする。
深夜も苦笑いを浮かべた。
「まぁ、気にしないでください。そういえば柚子どうする?」
「え?」
「初詣」
「あ、そっか。日が変わったら行く予定だったもんね」
「行く?」
「う~ん…、でも雫ちゃんたちもいるし」
「俺達のことは気にしないで行ってこいよ。なぁ?」
「そうだよ。行ってきていいよ。私達はここにいるから」
「…っていうか一緒に行きますか?」
「そうだよ。雫ちゃんたちも一緒に行こう。皆で行ったほうが楽しいよ」
深夜達の提案に聖慈と雫は顔を見合わせた。
そして、少し相談した後頷いた。
「それじゃあ、ご一緒させてもらおうかな」
「あ、じゃあ私着替えてくるね」
「あぁ。それじゃあ、下で待ち合わせよう。…あ、伊集院も柚子と一緒に行ったほうがいいだろ」
「え?」
「それじゃ寒いと思う。柚子、伊集院に上着貸してあげて」
「うん。雫ちゃん、行こう」
「ごめんね」
そういって柚子葉と雫は深夜の家を出て行った。
深夜は聖慈の服を見て声を出した。
「聖慈さんは大丈夫そうですね」
「あぁ。んじゃ行くか。勇一さんはどうします?」
「俺?俺は忍と朝行くわ」
「了解」
深夜と聖慈は二人揃って外に出てエントランスに向かった。
エントランスに着くとまだ柚子葉達の姿はなかった。
二人で話をして待っていると柚子葉達がエレベータから降りてきて深夜達に駆け寄ってきた。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「あ?時間は決めてなかったしいいって。それじゃあ行くか」
そういって4人はマンションを出て初詣に出かけた。