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STORY21-2 『二人に頼みがあるんだが』

熱愛報道から数日がたった。

あれから変化もなく深夜達は学生生活を送っていた。

その日も深夜は朝食の準備に追われていた。

勇一と忍はすでにテーブルに座ってコーヒーを飲んでいる。

いつものように勇一がTVをつけてニュースを見ている。

アナウンサーが次のニュースを読み始めた。


『伊集院雫さん、一緒に暮らしている兄は実の兄ではない!?』


テーブルにトーストを運んでいた深夜はそのニュースを聞いて『へぇ~』と呟いた。

呟きを聞いた忍は深夜に話しかけた。


「どうしたの?」

「いや、別に。ただ、そうなんだぁと思っただけ」

「反応薄いわね」

「そう?っていうかそんな兄妹って結構いるだろ。再婚で連れ子とか。こんなんで騒ぐほうがどうかしてる」


深夜の言葉は正論だが少し毒舌なので勇一と忍は苦笑いを浮かべた。

勇一と忍が仕事に行った数分後深夜もカバンを持って家を出た。

学校に向かって歩いていると後ろから駆け寄ってくる音が聞こえた。

深夜が振り返ると翔が走りよってきた。


「おっす」

「うっす。朝のニュース見たか?」


翔が深夜に追いつくと二人は歩きだした。

深夜は翔の言葉に頷いた。


「あぁ。っていうか何であれだけで報道されるのか不思議なんだけど」

「確かに血のつながりがない兄妹って多いしなぁ」

「だろ?俺みたいに拾われた子ってなると話は別だけど」

「いや、お前は特別すぎる」


そんな話をしながら歩いているとまた校門のところに報道陣が集まっていた。

深夜はため息をついて校門に向かった。

深夜と翔が校内に入り教室に入るとまた騒がしかった。

二人が机にカバンを置くと達志が二人に近づいてきた。


「うっす」

「おはよ」

「おっす。っていうかまた騒がしいな」

「お前朝のニュース見てねぇの?」

「伊集院のだろ?見たけど」

「リアクション薄いなぁ」

「っていうか普通だろ。血のつながりがない兄妹って」

「…そうだな」

「気づいてなかったのかよ。再婚とかいろいろあるだろうし兄妹で一緒に住んでるのも別に変じゃねぇし。俺らはまだ未成年だし」


深夜の言葉に達志は何も言い返せなかった。

確かに当然のことだ。ただ、芸能人だからということでつい騒いでしまった自分が少し恥ずかしかった。

それから数日間深夜は雫の姿を見なかった。

とはいっても前から見ない日の方が多かったので特に気にしてない。

そして、ある日の朝。

今日は勇一と忍は二人とも用があるということで朝食用にと弁当を持たせた。

まだ材料が残ってるので深夜は自分の昼食用に弁当を作ったがまだ余っている。

とりあえずもう一つ作り昼に柚子葉と一緒に食べようと考えた。

忘れないように先に弁当をカバンに入れて深夜は朝食をとることにした。

TVを見ながら朝食を取り終えた深夜は後片付けを終え学校に行こうとTVのリモコンに手を伸ばした。

だが、TVの内容を見て手を止めた。

TVでは昨日行われたと思われる会見の内容が行われている。

その会見には雫が出ており内容は血のつながりがない兄と恋人同士にあるというものだ。

これにはさすがの深夜も驚いた。まさか付き合っているとは予想もしていなかった。

その会見の内容を見終えた深夜はとりあえず学校に行くことにした。

エレベータに乗って下降すると8階でエレベータが止まり柚子葉と恭子、秀太が乗り込んできた。


「あ、おはようございます」

「おはようございます」

「おはよう」

「しんやおにいちゃん、おはよう!」


ちなみに上から深夜、恭子、柚子葉、秀太の挨拶だ。

エントランスで保育園に向かう恭子と秀太と別れ深夜達は学校に向かった。

学校に着く間深夜は柚子葉に渡すものがあることに気づき話しかけた。


「柚子、今日の昼って何か予定ある?」

「え?食堂で食べる以外はないけどどうかしたの?」

「今日勇兄と姉貴が朝早かったから朝食用に弁当作ったんだよ。で、材料余ったから俺の昼飯用に作ったけどまだ余ったんだよ。それでもう一つ作ったからよかったら一緒に食わないかなと思って」

「あ、じゃあ食べようかな」


柚子葉の言葉を聞いた深夜はカバンから弁当箱を一つ取り出し柚子葉に渡した。

受け取った柚子葉は弁当箱が傾かないように気をつけてカバンに閉まった。

二人が学校に向かうと案の定校門のところに報道陣が集まっていた。

二人は気にせずに校内に入り自分達の教室に向かった。

教室に入るとざわざわ騒がしかった。

深夜はカバンを机に置いて柚子葉に話しかけた。


「俺ちょっと校内ブラブラしてくる」

「あ、うん」


深夜は校内を歩くがどこのクラスも騒がしかった。

やはり、朝の雫の会見の内容が関係しているようだ。

深夜が歩いていると陰から話し声が聞こえた。


「伊集院、大丈夫か?」

「はい。大竹先生、心配かけてすみません」


どうやら話してるのは雫と大竹のようだ。

深夜は二人の会話に耳を傾けた。


「俺も教師だからお前だけを特別扱いするわけにはいかないんだ」

「分かってます。優奈ちゃんもいますから大丈夫です」

「そうか」


二人の会話を聞いていると前から生徒が歩いてくるのに深夜は気づいた。

あまり他の生徒に二人の会話を聞かせないほうがいいと考えた深夜は二人に近づいた。


「おはよ」

「え!?」

「や、山上…」

「他の生徒来てるから」

「あ、あぁ」


こちらに近づいてきていた生徒は雫を一度見た後大竹に挨拶をしてそのまま去っていった。

深夜は生徒が遠ざかったことを確認して二人に話しかけた。


「二人はどういう関係?」

「え?」

「悪いけどさっきの話少しだけ聞いてた。聞いてた限りだと普通の教師と生徒の会話じゃなかったから。言いにくかったら別にいいけど」

「伊集院の兄貴と俺が知り合いなんだよ」


深夜の疑問に大竹が答えた。


「へぇ~、そうなんだ」

「あぁ、伊集院の兄貴、聖慈っていうんだがそいつもこの学校の卒業生で今でも飲んだりするから」

「あ、じゃあ私もうそろそろ教室に戻ります。優奈ちゃんも心配しているだろうし」


雫はそういって教室に戻っていった。

残った大竹は深夜に話しかけた。


「…お前朝のニュース見た?」

「見た。まさか付き合ってるとは思わなかったけど」

「お前どう思う?」

「へ?別にいいんじゃない?血のつながりはないんだし」

「本当にそう思ってるのか?」

「嘘ついてどうすんの。じゃあ、俺も戻るから」


深夜は大竹にそう言って教室に戻った。

大竹は深夜の後姿を見送った後、頭を掻いて職員室に戻っていった。

そして、昼休み。

深夜は授業が終わると同時に柚子葉に声をかけた。


「柚子。昼休みどこで飯食う?」

「えっと、どうしようかな」


二人の会話を聞いていた翔は机の中に教科書をしまいおえた後声をかけた。


「何?どうかしたの?」

「今日俺ら弁当なんだよ」

「じゃあ、二人で屋上で食べてくれば。普段二人だけで食べないんだから」


翔の言葉を聞いて深夜と柚子葉は顔を見合わせた。


「じゃあ、そうするか」

「うん。私真希と圭に声かけてくるね」


柚子葉は深夜に言うと真希と圭のところに向かった。

残った深夜に翔が話しかけた。


「でも、珍しいな。二人揃って弁当って」

「今日勇兄と姉貴が仕事で朝飯食う余裕がないっていうから弁当を持たせたんだよ。で、材料余ったんで二つ作ったから一つを柚子に渡しただけ」

「あ~、じゃあ合わせたわけじゃねぇんだ?」

「そういうこと」


深夜と翔は話をしながら柚子葉達のほうに視線をむけている。

真希と圭に何かからかわれたのか柚子葉が急ぎ足で戻ってきた。

後ろで真希と圭が笑みを零して教室を後にした。


「井上たちに何か言われた?」

「何でもない。さ、行こう」

「あぁ」


深夜は翔に声をかけて柚子葉と共に屋上に向かった。

屋上に行く途中で大竹に会った深夜達は頭を下げそのまま通り過ぎようとした。

だが、大竹が深夜を引き止めた。


「山上、ちょっといいか」

「俺?」

「あ、じゃあ私先に行くね」

「いや、山下も一緒でいい。5分だけでいい。時間をくれないか」


深夜と柚子葉は一度顔を見合わせて頷いた。

大竹は二人を人気が少ない特別棟に連れてきた。


「なんすか?」

「二人に頼みがあるんだが」

「あ~、だいたい分かった。伊集院のこと?」

「まぁな」

「えっと、事情が掴めないんだけど」


深夜と大竹が二人だけで通じ合ってるのに対し柚子葉は事情が掴めない。

深夜は苦笑いを浮かべて柚子葉に話しかけた。


「後で説明する。柚子もここにいるってことは説明してもいいってことだろ?」

「あぁ。お前らは信用できると俺は思うから。でだ、頼みたいことっていうのは伊集院を守ってやって欲しいんだ」

「は?」

「特に何をしろってわけでもないけど聖慈に頼まれたんだが俺は教師だろ?だから、俺が出るのは不味い場面があるから生徒のお前らに頼みたいんだ」

「それぐらいならいいっすけど。柚子は?」

「まだよく事情が掴めないからなんとも言えない…」

「飯食いながら説明するわ。多分柚子も賛同すると思うから。後で先生に報告します」

「あぁ、頼むな」


深夜と柚子葉は大竹と別れて屋上に向かった。

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