STORY20-END 『何で泣いてんの?』
一方柚子葉を捜していた深夜は校庭の周りを見ていた。
だが、柚子葉の姿は見つからなかった。
「どこ行ったんだあいつ」
深夜が頭を掻きながら考えていると前から大竹が歩いてきた。
「山上、こんなところで何してるんだ?」
「柚子を探してるんだけど見つからなくて」
「俺は見てないぞ。あ、でもさっき中庭のほうに誰か走っていくのを見た気がする」
「中庭?行ってみるわ」
深夜はそういって駆け出した。
が、すぐに足を止めて大竹に聞いてみた。
「先生。さっきの俺の話を聞いてどう思った?」
「ん?そうだな…正直同情を思った。けれど、今のお前が望んでいるのは同情じゃないだろ?だったら俺は今までどおりお前と接するつもりだけど?」
「…ありがと。やっぱ先生はいい人だよ」
深夜は笑顔で大竹に礼を言ってまた駆け出していった。
大竹は深夜が言った言葉に目を丸くしたがすぐに笑みを浮かべて職員達が集まっているところに歩きだした。
中庭に着いた深夜は中庭を歩いた。
校庭に比べて中庭は暗かった。
だが、だんだん暗闇に目が慣れてきた深夜はゆっくりと周りを見渡した。
すると、ある一本の木の下で柚子葉が立っているのが分かった。
そちらに近づくと足音で気づいたのか柚子葉が深夜に気づいた。
慌てて柚子葉は目の下でこすり、深夜のほうに歩いてきた。
「深夜、どうしたの?」
「どうしたのってお前を探しに来たんだよ。っていうか泣いてる?」
深夜は柚子葉の目が赤いことに気づいた。
目を凝らしてよく見るとまだ目尻に涙が溜まっている。
柚子葉は首を振るがこれで泣いていないと言われても簡単には信じれない。
深夜はゆっくりと柚子葉を抱きしめた。
「何で泣いてんの?」
「だって…まさかあんなこと言うなんて思わなかったし」
「あ〜、倉田に言われたからな」
「え?」
「『俺のことをよく知って欲しい』んだと。ま、別に隠してるつもりもなかったし」
深夜はそういって柚子葉を抱きしめている腕の力を緩めた。
そして柚子葉の目尻に溜まっている涙を指で拭った。
「それに今なら支えてくれる彼女もいるし、な」
深夜はそういって柚子葉の唇にキスを落とした。
柚子葉はまた涙を零しながら深夜に抱きついた。
深夜は柚子葉をしっかりと抱きしめ返した。
柚子葉が落ち着いたので校庭に戻ることにした。
二人はしっかりと手を握って歩いた。
校庭に着くとフォークダンスが始まっていた。
「フォークダンスか。…俺らも踊るか?」
「え?」
「せっかくだし。こういう機会じゃないとフォークダンスを踊ることもないだろうし。どうする?」
「う〜ん…踊ろうか」
「よし。行こうぜ」
深夜は柚子葉の手を引っ張ってダンスの輪の中に入った。
輪の中に入ると詳しいダンスは知らないので適当に踊り始めた。
だが、そんなダンスでも様になっていて二人ともこの時間を楽しんだ。
ダンスの相手が変わるタイミングで二人はダンスの輪から出た。
どうしようかと周りを見渡すと翔が輪から外れたところに立っていたのでそちらに向かって歩き出した。
翔も二人に気づいたのか手を上げた。
「おっす。戻ってきてたのか」
「あぁ。ダンスも踊ってきた。お前は踊らないのか?」
「同じ高校に彼女がいる人と一緒にすんなよ〜。華がいたら一緒に踊るけど」
「そういや学校祭には呼ばなかったのか?」
「呼んだけど今日は友達と遊ぶ約束が入ってるんだってよ。せっかく一緒に回ろうと思ってたのに…」
「それはお気の毒に」
「顔が笑ってるぞ…」
翔は深夜を軽く睨んだ。
翔の言うとおり深夜はお気の毒とは言ったが顔はにやけていた。
「どんまい」
「明日デートなんでいいけど」
そんな話をしているとフォークダンスも終わりクラスメイトが少しずつ深夜達の周りに集まってきた。
後夜祭はフォークダンスで終了となり深夜達はクラスメイトと教室に戻った。
教室に戻って数分すると勇一が入ってきた。
「みんな今日はお疲れ様。明日は休みだからゆっくり休んでくれ。俺からは以上だ」
勇一がそういうと濱田が号令をかけた。
HRが終わると深夜はクラスメイトと共に打ち上げに出た。
その日は終電ギリギリまでクラスメイトと一緒に楽しい時間を過ごした。