19.ちゃっか
外人さんの文明に付いて考察する謎の地衣類、新木です。
身分証明書を発行してもらいました。
うむ、すばらしい。
この惑星にもお役所仕事は存在するのだ。
喜び勇んで外人さんに見せた、読み上げしてくれるので文字は通じた様子だ。
未だ、濁音が不安だけどね。
身分証明書を貰うとテーブルに戻って来た。
おっさんずがテーブルに金属のコップと…。
木皿の何か…芋を茹でた物が乗っている。
この太陽系の枝豆&ビール的なセットか?
外人さんも仕事が終われば打ち上げでビールなのか…。
すばらしい、何処の惑星でも同じなのだ。
シシトウが無いのが残念だ。
興味深い発見が多い外人さんの文明。
解ったコトは、この人類は、旋盤が無い。
鋼は有るけど少量で、主に鉄や青銅、銅を使っている。
椅子が丸太を切り出した物でテーブルの天板は丸太を組み歪で、隙間は有るが水平は出ている。
他のテーブルと全く同じでは無いので|職人《ある程度の技能を持った者》が一品物で作った物だ。
工場での量産品ではない。
木組みでは無く、大きな丸鎹で固定してある。
あ、釘も在るけど、貝折釘の様な形だ。
ハンマーで一個づつの手作りだ。
何処かで火床を作って鉄床とハンマーで叩いて作っているのだ。
外人さん達は金属加工技術を持ち何処かで技能職が手作りで作っている。
家内制手工業的な工房が存在するのだ。
取り合えずカードを自慢する。
うむ、皆に俺の名が通った。(アラギと呼ばれた。)
木片を貰った、お金の引換券で今回獲った獲物の代金でカウンターで引き換えしてもらえるらしい。
木片には焼印と金額が入っている、金貨1枚と銀貨6枚だ…。
価値が解らん。
細いおっさんがコップの中身を飲み干したので観察して見る。
うん、銅だね。
一応錫メッキだ。
たぶん銅板を叩いて作った物だ。
他のおっさんのコップをよく見るとほんの少し形が違うのでコレも一品物の様子だ。
うむ…。何処かで作っているのだ…。
なお、中身は水ではなくジュースの様だが…。謎の液体だ。
おっさん等の反応を見るにエタノール的な物だと思う。
ほら…。この外人さんが本当に、エタノール消化吸収できるか不明だから…。
メチルもアルデヒドでも消化吸収できても可笑しく無い外人さん。
水を入れて中和してみよう…。普通に溶けるな。
あ、細いおっさんにコップを取り返された。
何か文句を言っているが…。飲み干して手を挙げた。
続くおっさん達。耳長女性も手を挙げているので真似をする。
新しいコップが来た。
中身は謎の液体だ。
空のコップは回収したので黄金の蜂蜜酒の御代わりの申請だったのか…。
うむ、難しいな。
この中の液体は消化できないと思う。
しかし、やってみよう。
アルコールの種類を知るために触手を伸ばしてサクサク(量産型)体内に取り込む。
うむ、そんなに冷たくない。
体内の温度を上げて…。別室で冷やして液化…。
何となくエタノールだと思う。
揮発成分の蒸発した残りはコップに戻した。
おう、皆の注目を集めている。
宴会芸の見せ所だっ。
拾った錆びたナイフと火打ち石を取り出し叩く。
火花が飛ぶ、触手の先から蒸発したアルコールを吹き付けると着火した。
うむ、火吹き男だっ。
無論アルコールの量が少ないので着火した炎は小さい。
だが、燃焼色から見るにエタノールに間違いが無い。
良かった、この惑星の住人は水飲んで、酸素吸って、炭水化物を消化しているんだ。
しかも加熱したタンパク質も食べている。
地球と同じ様な生命体なのだ。
炭素の変わりに珪素で出来てるびっくり生物では無いのだ。
でっかいトカゲが居たから、てっきり…。
でも探せば居るかもびっくり生物。
”数日後に残りの清算が終わるから、ココに来て。”
そう言って耳長女性とおっさん達は割符を換金して解散してしまった。
手元には金額の決まっていない割符1個に金貨1枚と銀貨5枚に銅貨6枚…。
飲食代はワリカンか…。
ワリカン文化が他の惑星にも…。
解散したおっさん達は家に帰る様子だ。
未だ日も高いのに…仕事が終わったらそんな感じか?
納品トラックを見送った様な達成感なのだろう。
南に向かいたいが、換金が終わるまで数日間は待つ必要がある。
この町で情報と道具を集めて旅の計画を立てよう。
細いおっさんが歩いて何処かに向かっているので後を付ける。
振り向いたおっさんが何かを話している。
解らないけど、コップを作っている工房に行きたいと身振り手振りで伝える。
押し問答で何とか成った。
付いていった先は、意外にしっかりした鍛冶屋だった。
鍋、鎌、斧の未完成品が壁に掛かっている。
材料用の割れた鍋、鎌も在る…。
何故か銅細工も兼用の様子だ。
細いおっさんと鍛冶師が何かを話している。
”作るところを見せてくれ。”
お願いすると髭のおっさん鍛冶師は。
”欲しい物を何か作ってやるから買え。”
と言う意味らしい。
そうか…。受注生産だから。
発注した製品の製造工程を見るのは良いのか?
しかし、今、必要な物は無い。
しいて言えば甲羅が必要か?
触手を振り回すと…、壁に大きな中華(広東)鍋の様な物が掛かっていた。
うむ、他の惑星に広東鍋だと…。
甲羅に最適だ。
思わず触手を指し示す。
細いおっさんと何かを話し合っているが。
金貨1枚で広東鍋を購入した。
無論ココで装備しておく。
背中に鈍く光る鉄の広東鍋…。
良いじゃないか!
感謝の気持を表す。
おっさんずは微妙な表情だったが納得したらしく。
仕事を見せてもらう事に成った。
うむむむ…。プライヤーの様な物に挟んだ切り出し済み材料を変な形のハンマーを使って…。
大小、丸く凹んだ台座に合わせて叩きながらコップの形を作っていく。
ここら辺は地球と同じだ。
周囲を見渡すと壁に数枚の鉄棒や銅板が立てかけてある。
大きさはまちまちだ。
地面には鉄の切り屑もが入った木箱もある。
どうやら、ココでは母材から加工している。
製鉄や精錬等はやっていない様子だ。
完成品と半完成品が机の上に並んでいる。
土で作られた火床に火は着いていないので。
今日は行わないが、内部を錫メッキする工程は在りそうだ。
錫の屑が乗った小皿が置いてある。
枝の長いヤットコとハンマーも隣にあり、汚れた革のエプロンも置いてある。
銅、鉄構わず板金で鉄工所の様子だ。
鋳物や鍛造は行わないのか?
その他、鍛造らしき道具も火床も在るが今日は休みの様子だ。
触手で指し、”今日は鍋を作らないのか?”尋ねると。
”今日はやらない、燃料が…。”理由は不明だが。
多分、燃料の炭が高いか少ないのが理由で、仕事を貯めて一気に作業するのだろう。
各種、先の形が違う金切りはさみが並んだ机も有る。
カットした切りくずも…。
痩せたおっさんが暇そうだ。
”俺も何か作りたい。”
ハンマーで叩く動作の真似をすると鍛冶屋が理解した様子だ。
身振り手振りで伝えると、おっさんずが何か話している。
”この箱の中の物は使って良い。”
三つ並んだ木箱だ。
恐らく端切れのくず入れだ、分別してある。
感謝の合図を行い…。ナニを作ろうか?
この惑星の人間は何処まで聴音域なのだろうか?
ソレを確かめるために笛を作ろう。
金きりばさみを借りて四角板からの扇形の切り残し。
この銅版をL型に切る。
特に問題は無い。
廃材の中に木の棒の切れ端が在ったので、コレを鳴子にする。
L型の一方を丸く折り曲げ、太鼓を作り残った辺を横に巻く。
隙間が出来る様に…。
触手で型を作って加工すると意外と楽だ。
簡単に出来上がる。
太鼓を触手で塞いで減圧した空気を送る。
「ポーーーーーーー。」
おっさんずが喜んでいる。
「ポーポー・ポーポー・ポポポー。」
うむ!音程が出せない。
意外と低い音になった。
笑うおっさん、ハンマーの手を緩めない。
ハンマーの音に合わせて3・3・7拍子を吹く。
怒られた。
やはり音程が出せないのが問題だ…。
木の棒が幾つか有ったので…。
笛を作ろう。
横笛で良いだろう。
この惑星に竹が有れば簡単に出来るのだが。
そういう植物は見ていない。
仕方が無いので穴を開ける。
幸い、この工場にはノミの様な工具がある。
触手で母材を廻して旋盤するのだ。
ドリルまわしまーす!(廻すのは母材)
一瞬で中空のパイプが出来る。
くくくく、散々大地をドリドリしてきたこの地衣類。
この新木に廻せぬ物は無い。
俺は、540モーターを越えた!!
あっと言う間に木管が出来る。
くくくく、どうだ。外人さんコレが地球の工作技術だっ。
ほそいおっさんに渡す。
穴を覗いて驚いている。
鍛冶屋のおっさんも手を止めて確かめている。
どんどん削る。
試作なので沢山必要だ。
課長の趣味が横笛作りだったので計算式は聞いたコトが在る。
何故、横笛なのか聞いた事は有った理由は。
”波長と波高だから普通にLC発振器と同じだよ?高校の頃の友人が管楽器をやっていて。音がどうこう言われても解んないから、チューニングメータ作ってやったんだ。簡単なヤツ。そうしたら、文句が多くてね。改良するために色々やったんだ、初め基準発振器で調整してたら調整すると音が硬いって言われて。計算して最適な音が出る笛作ってたら。笛を作るほうが面白くなってきてね。でも楽譜読めないから演奏は出来ないんだけどね。”
うむ、相変わらず会社の連中は残念なヤツしか居なかったな。
だがしかし、課長の方程式はこの惑星で音になります。
と言っても作るのは京都の土産で定番の篠笛だ。
数字は解っているので、さくさく指穴を開ける。
小さめに作って音程調整で大きくする。
幾つか作るが3個目で試作完成品が出来て、4個目で先行量産試作型が出来た。
痩せたおっさんの話では毎朝、広場で市場が在るそうだ。
参加費用が必要だが誰でも物を売ることが出来る。
なるほど、コレ来ます。
異惑星フリマだ。
甲羅を買ってしまってお金が無いのだ。
参加したい旨、おっさんにお願いする。
笛を一個あげたら了解してもらえた。
話が決まれば量産だ、形は決まっているので、後は同じ物を作るだけだ。
試作完成品をほそいおっさんが吹いているが音が出ない。
お土産あるあ話だ。
最後に蜜蝋が有ったので防水ワックスに使う。
と言っても染込んだウェスで磨いて終わりだ。
完成検査で”蛍の光”を演奏するが…。
未だほそいおっさんは音が出せないでいる。
30本完成したので次の作業に入る。
おっさんの話では笛はそんなに高く売れないらしい。
まあ、民芸品だ高くは売れないのは解る。
日銭を稼ぐ為に他に何かを作る。
ナニを作ろうか…。
背の低いお爺さんが火を着けるのに苦労していたのを思い出す。
まあ、作ってみよう。
(´・ω・`)横笛の計算を真面目にやると凄い大変な話になるのでサクッと終わらせます。




