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新木くんのねんきんせいかつ  作者: 王石 勉
第1章:新木くんのねんきんせいかつ(楽園の高原)
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1.かくせい

まどろみの中で初めて感じたのは。

明るい時と暗い時があるということだ。

頭がうまく働かない、何か別のモノの目を借りているような…。

ただ、寝起きの様な、漫然と解像度の悪いモニターの流れる雲と太陽の動きを無心で眺めている。

そんな日常を幾度か過ごしてきた。


そんな気がする。


初めて頭がハッキリしたのは。

もう起きなくてはナニかに遅れる。

そんな考えが沸き起こったからである…。


ナニかって何だ?


おお、もう太陽が直上でお昼だ。

いくら休日といえ寝すぎだ。

岩場の上で硬くなった身体を起こす。

が、視界に入って来たのは、真っ蒼な空と眼下に広がる雄大な自然である。

そして自分の身体が手足の無い、まるでつるつる。

水銀の塊の様なザマである。


ナンジャコリャー!俺はいつの間に山に登ったんだ?

ナンジャコリャー!!身体が思う様に動かん!

ナンジャコリャー!!!目がないのになんで景色が判るんだ!

ナンジャコリャー!!!!俺はいつの間に未来からやって来た殺戮ロボット(続編の方)になったんだ?



意外と混乱した時間は長くは無かった。

そういうものだと頭の片隅の記憶(ゴースト)が囁いたのだ。

おい!だれだよ!!処理(ゴースト)が残ってんぞ!!メモリとリソース圧迫するだろ。


ああ、太陽が黄色い、青空が眩しい、眼下に見下ろす緑が濃い。

地面はルピア色の岩場で、俺は銀色ダルマ大師。

俺は目がないのにどうやって可視光線を受光して映像処理しているんだ。

俺は口がないのにどうやって栄養を補給しているんだ。

俺は耳がないので音は聞こえないが地面からの振動や砂の動きで風が吹いているのではないか?と推察はできる。


無感動に疑問を並べていると。太陽が傾き始めた、ソレと共に俺の思考にモヤが掛かり始め。

俺の意識はまどろみの中に沈んでいった。



また意識がしっかりしたのは太陽が直上に来たときだった。

やれやれ、今日も晴天か、山の上なのに晴れが多いな。

そうだ、山の上なのである、天気も変わりやすい、雨も降る、霧も掛かるのだ。

しかし、記憶にあるのは何時も青空。

逆を言えば、夜と天気の悪い日は眠っていて、墓場の運動会にも参加できないのではないか?

俺はどうやって活動に必要なエネルギーを吸収しているんだ?

何時も起きると太陽が直上なのは体温が上がるのに時間が掛かるからではないか?

それ以外の低体温状態ではスリープモードの省エネ運転中なのではないか?


ウォン。俺はまるで銀色ダルマ大師(変温動物)だ!

体温を上げて何時でも活動できるようにしなければ!!

しかし、どうやって?

おれはまるで岩場に張り付く地衣類の様だ。

太陽光の光を吸収するならもっと吸収効率の良い色に成らなければ。

まて、光を吸収しているなら、太陽が昇った時点で活性化しているはずだ。

紫外線や赤外線を吸収しているわけでは無いのだ。

ソレならもっと効率の良い、黒い色になるハズだ。

地面の熱を吸収して活性化しているのは間違い無い。

変温動物は糖分を酸素で分解して温度を維持しているが。

この身体では糖分が吸収できるか不明である、肺に該当する器官が無いので酸素を吸収しているとは思えない。



赤い国の探査機のように自己崩壊熱を発生させる物質を確保できれば無敵だが、暗闇でほんのり身体が光りそうだな。

思わずタメ息を付くぜ、肺が無いのにどうやってタメ息付くんだよ!!

と自分でノリツッコミを入れるが。その瞬間、閃く!

そうだ!空気にも熱は在るんだ(意味深)

音は聞こえないが風が吹いているからには、大気が在って、雲があって、緑の光合成する植物がある。

ならば、空気を圧縮して熱だけ頂いて体温を維持するんだ。

大きく息を吸って~身体を膨らまして~ (吸入)

身体を縮めて~ (圧縮)

熱が体に移動するのを待って~ (伝導)

空気を外に出す! (排気)


おお、総統(マイン・フューラー)!!動きます!!()がみなぎってきますwww


よーし!お兄さんがんばちゃうぞ~!!

ヒッヒッフー、ヒッヒッフー、太陽が傾いてきた、外気温低下なんかに負けない!!暗くなっても頑張るぞ~!!

徐々に思考にモヤが掛かり始め、ナニやってんだ俺?と文字どうりクールダウンした俺は、そのままスリープモードに突入した。


放熱量には勝てなかったよ!!

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