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新木くんのねんきんせいかつ  作者: 王石 勉
第2章:新木くんのねんきんせいかつ(失楽園)
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14.ついほう

PiPi、こちら新木…、大佐、聞こえるか?

『良好だ新木、状況はどうだ?』

やはり地表への本坑ルートは氷に閉ざされていて使用不能だ。

『そうか…。予定どうり非常用脱出坑を使って地上に出るしかないか。』

脳内大佐がイイ声で答える。

いや、もう、正直言って飽きたので、この穴倉から出たい。

ここ数日、リビングの地熱温度から暖かい日が続いているのが解る。

だが肝心の本坑ルートに溶けた雪が進入、再凍結してカチンカチンの閉塞状態です。

自慢の甲羅2号改3型Hは氷の中である回収は不可能だ。


まあ、暖かくなったら掘り返せば良いので。

ドカンと一発!脱出で行こうと思います。

裏口に移動して、久しぶりのウン棒一発、打ち上げますよ?


圧縮率を上げて壁に放出!

大音響と共に岩が崩壊して。新鮮な外気と眩しい日の光がメタルなボティをなでる。


久しぶりに眼下に見下ろす、下界の新緑の緑。

長い間、狭い地中に埋まっていたので開放感が半端無い。

まるで全裸で街中を歩いているような、

頭がフットーしちゃう!!

体内のアクチュエータを使用して盛大に身体を伸ばす。

う~ん太陽光線サイコー、チムドンドンすぎるだろ。(意訳:ドキがムネムネ)

晩春の青空を望み、脳内大佐に答える。


待たせたな!!


「あっ!!」

立ちポーズにキメ笑顔をしていると。

春一番の突風が暴力的な揚力を発揮して、俺から重力を奪った。

気が付いた時には、眼下のゴラン高原のルピア色の大地と眩しい残雪の白色がめまぐるしく回転し。

風に乗った俺は高原の麓に広がる樹海へとスピンしながら滑空していった。



とっさにムササビの様な滑空と垂直尾翼をイメージを創造すると回転が停止して、落下が安定しはじめた。

位置エネルギーすげー。

俺こんなに高いところに居たんだ。

何故か落ちる恐怖より感心した。

視界が360度だからであろうか。

コレが重力井戸の底なのか?

加速した俺の身体は水平飛行に入る。

緑の森が途絶え、キラキラ光る湖面が眼前に迫る。

俺、空飛んでるわー。これ、うまくやれば海面効果で飛距離伸ばせる?鳶人間コンテスト?

しかし身を切る風により体温の下がった俺は。徐々に意識が下がっていくのを感じた。

あ、しまった、甲羅を置いてきた。

そのまま、意識をうしなった。


おぼろげながら記憶を辿ると。

どうやら着水せずに岸にたどり着いたらしい。

かなり高度が低い。

一回の圧縮でかなりの熱量が取れる。

なんて比エンタルピーが良いんだ。

流石下界。良い仕事してますね~。

木の枝に引っかかったままの体を動かす。

う~ん。体が熱い。

放熱が多い気がする。

コレでは赤外線放射が多すぎる、夜には放熱係数で負けてしまう。

甲羅があれば…。

地面を見て判断する。

この地面は有機物が多すぎて俺に必要な無機物と廃棄物(主に雲母)が採取できない。

劣化花崗岩質なら何とかなった。

どうしよう?

空気圧縮で圧縮サイクル効率が良いのが幸いだ。

しかし、空気中の蒸気が圧縮サイクルの妨げになるだろう。

結露するとノッキングするかもしれない。

冷凍機械の触媒ならISOSVオイルの添加物が俺の高圧な酸素と炭素をイイ感じに処理してくれるはずだが。

残念ながら俺の体に油脂は無い。

体脂肪率は恐らく0パーセントだろう。

なんと言っても三段腹ではない。

かといってムキムキでもない。

困ったコトは脱出する時に体内のうん棒を全部使用してしまった。

(ウン)が無い。

補充できそうな岩も無い…。

岩場を探す必要が有る…。

折角なのでもっと探検してみるべきだ…。

しかし、地面に降りるのは怖すぎる。

引っかかった木の枝を移動する。

おお…。まるで蛇の様に移動できる…。

濃い空気は最高だな!!

試しに枝の葉を一枚毟って消化をイメージする。

ダメだ…。消化出来そうに無い。

毟った葉を捨て隣の木に移動…。

おおっ!枝が下がる!!

揺れて怖い!!

俺、意外に重いのか?

自分のサイズがイマイチ解らない…。

俺はドレ位の比重なのだろうか?

湖は在るので水に浮けば良いのだが…。

沈んだらそのままゲームオーバーだ。

熱源が無いからな。

触手を伸ばし隣の枝を掴もうとするが枝が揺れる。

ガサガサと枝同士が擦れ葉が落ちる…。

すると荒い息をする音と共に茂みから牛の様な生物が出てきた!

デカイな、牛だがツノが多い。

見た事が無い生物だ!

いや!羽トカゲ母さんの土産に有った牛だ!

動きを止め息を殺して隠れていると…。

ツノの多い牛は周囲を見渡し何かを探して要る様子だ。

しかし、しばらく待つと何かに警戒しながら四足歩行で立ち去った。

おおう、こえええええぇ。地上こえぇ。

あんなのうようよ居るのかよ!!

深呼吸して体の温度を上げる。

しかし困った。

木の上では石が取れない。

見た所、地上は森の腐葉土で俺は消化できない有機物で覆われている。

確信できる!アレは美味そうに見えない!!

何処か岩場を探さないと…。

険しい谷の岩肌なら大型生物は近づけないハズだ!!

少なくとも肉食獣は!!

俺の身体が肉なのか?は未だ不明だがな!!

触手を伸ばして移動する作業に掛かる。

触手が隣の木の枝に掛かった!

イイゾ俺!

このまま隣の木に移動だ!!

ドキドキしながら木を移る。

すばらしい!心臓は無いけど胸がドキドキだ!!

さて…次の隣の木に。

身体が一部動かなくなる。

触手を振り返ると…。デカイ蛇の頭が俺の伸びた身体に噛み付いてた…。

目が合った!ウンウン発射!!

しまった!!ウンウンは種切れだ!何も出無い!

スカシッ屁だ!!

大蛇の口腔にスカシッ屁を喰らわしたが…。

木の枝に絡みついた蛇の身体が一瞬膨れて痙攣した。

丸い瞳孔の色が変わり。

口や目から血が滲み出した…。

ゆっくり力の無くなった大蛇のアギトから脱出した。

メタルな身体を確認する。

良かった怪我してない!毒へびじゃ無かった!

しかし凄いなスカシッ屁。

まあ、体内に圧縮空気を入れればこんな物か?

大蛇の鎌首が力なく枝からぶら下がる。

滴る血。

完全に死んだのか?

思わず触手でトントンする。

反応は無い。

このデカイ蛇は何故俺を見つけたんだ?

少し考えて思い出す。

そう言えば蛇は赤外線を感知できるのだったな。

俺は地衣類だが熱圧縮で高温だ。

恐らく哺乳類か何かだと思って噛み付いたのだろう。

試しに触手で叩いてみる。

うむ…。堅い鱗だ。

強く叩く。

揺れる枝…。

堅いなこの鱗。

触手の先を尖らせエアシリンダーで加速しながら突き刺す。

流石に鱗と皮を貫き、さきっちょから空気が抜けて蛇の胴体が膨らみ破裂する。

おお、血飛沫が凄い。

力を抜いたら先っちょから漏れた。

偶然だが、コレで大蛇に勝つる。

思わず触手()を握る。

大蛇は内臓をむき出しに枝からぶら下がり…。

うむ、内臓器官は地球と同じだな…。

思わず観察する。

そういえば生き物を殺したのに何も思わないな…。

初めてでは無いが…。

まあ攻撃されたので反撃したんだ。

コイツの縄張りに俺が入って来たので攻撃したのか?

いや…。この大蛇が枝に止まる鳥か何かを待ち伏せしていたのかも。

お互いウンが悪かったと言う事で…。申し訳ない。

取りあえず謝罪する。

美味そうな物が有るな…。

(有機物)食は放棄したが内臓の一部に食べられそうな物がある…。

触手を尖らせ切り裂く。

膜が切れると石が顔を覗かせる。

何だろ?砂肝かペレットかな?

良い石だ。

食べられると俺のゴーストがささやいている。

触手で体内に取り込んだ石はうま味成分が溢れている…。

おお、美味しい。力が漲ってきます!!

身体が軽くなる。

ひゃっほー!!

枝から枝にらくらく飛び移るぜ。

昼も夜も関係ないぜ!24時間戦えます!

調子こいて飛び回って居たら…。

次の日の夕方には身体が重くなり始め。

夜には完全に蛇玉の味が無くなりました…。


コレがお腹が空くという事か…。

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