本心
品行方正、容姿端麗で控えめな性格で、自分より皆を尊重するそんな優しい女の子は建前だった。
決して嘘をついてきたわけではない、というより嘘をついているという意識はなかった。人を傷つけないため、人に傷つけられないために必死だった。
でも、今目の前にいる人にはもう建前は通じない。私の心が、ないはずの心が読める人が現れたのだ。
怖い男だ。こんなぬぼっとして、女の子の気持ちなんてわかりそうにもない、いかにももてなさそうな男の子なのに、人は見た目じゃないとはよく言ったものだ。
たぶん、彼はこんな病気なんて関係ないんだ。だってこの力を使わなくても、他人の心が読めるのだから。
卑怯だ。
そんなのもはや、調節うんぬん、スイッチがどうとか関係ないじゃん。結局、私の心が弱かったに過ぎない。
「そんなことないよ、俺が読めるはずのに人の心が読めたのは、君だったからだよ。精一杯内側で自身と戦っていた君だからこそ、俺はいつの間にか引かれて君に興味を持てたんだ。俺、この能力なしだったら、ほんと空気読めないからさ、ねっ、いつもぼっちだったろ?」
確かに、そうかもね。
だったら、やっぱり私は頑張ってきたんだろうか。
もう疲れた。考えるというのは疲れるな。
今日はゆっくり休もう、久しぶりに頭を使った気がする。
「それがいい、今までの分、きょうはゆっくりしなよ、お風呂にでも入ってさ。」
私は山倉君に言う、心からの言葉を。
「やっぱり、心を読まれるってきもいね、いや山倉君がきもいだけか。」




