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帰路
「話したいことがあるんだ。ちょっといいかな?」
俺の人生で一番はっきりと意思をだした言葉だった。
「いいよ、でもその様子だと長くなるよね?帰り一緒に帰らない?」
それから、放課後になるまでの時間俺はただただ美しい横顔を眺めた。
これが最後になるかもしれないから。
「さっ、帰ろっか。」
彼女の声には感情がこもっていなかった。もはや一緒に帰ることに楽しみや恥ずかしさなどはないのだろう。
「俺が言いたいことは一つだよ、中井さん。」
「そうだよ、私は人間じゃないよ、騙してごめんね、山倉くん。」
すべては彼女の手の中だった。




