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質問
今まで俺の右横にはいつも彼女がいた。
そうはいっても、教室のなかだけの話だった。
しかし今日は違う。
いつもは独りの帰路の右横にも彼女がいるのだ。
なんと言う幸せだろう。
こういうのを筆舌に尽くしがたい幸福とでもいうのだろう。
俺は最近国語の授業で習ったこの言葉を噛み締めていた。
本当に幸せだ。
だが幸せは永久には続かないのだ。
本題に入らねばならない。
俺は変人と思われるのを承知で尋ねた。
「あのっさぁ、中井さんって日本人だよね?」
これが脆弱なコミュ力をもつ俺の精一杯の遠回しだった。
さあ、なんと返してくるのか。
それだけが心配だ。




