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謎と恐怖
「うーん、今はいないよ」
それが中井さんが渡さんに返した言葉だった。
「そうなんだ」
恋愛トーク終了。
彼女達はスイーツの話に移行し、盛り上がっていた。
かくゆう俺は、愕然としていた。
というか、驚いていた。
それは彼女、中井さんに彼氏がいたからでも、いなかったからでもない(あんな可愛い子に彼氏がいないのは不自然と考えることもできる)。
彼女の声が聞き取れなかったからだ。
いや、これでは語弊がある。
聞き取れなかったのではない。
きこえなかったのだ。
彼女の心の声は発されていなかったのだ。
俺はそのことに恐怖を覚えた。
彼女はもしかしたら、人ではないのかもしれない。




