自己紹介
ああ、今日もか。
本音を語るやつなんていないんだ。
俺の名は山倉健。
いたって普通の男子高校生だ。
学校と家の往復を繰り返す日々を送ってる。しかしながら、俺には大きな悩みがある。
いや、あったと言った方が語弊がないだろう。
俺は人の本音を知る事が出来るんだ。
どういう事かというと、人の思っている事が俺には聞こえてしまうんだ。
これを便利だと思う人もいるだろう。
好きな子の考えてることがわかったり、テストの時は賢い人の本音を聞いてカンニング出来るとか。
冗談じゃない。全然違うから。
前述したが、俺には人の思ってる事が聞こえる。
ただ、聞きたい人の本音を限定しては聞けない。
つまり近くにいる人全員の本音を聞くことになる。
これがどういうことかお分かりになるだろうか。
言うなれば、無秩序な保育園にいるようなものである。
誰もが好き勝手に、他人のことなど考えもせずしゃべっている。
そんな状況じゃテストどころでないのは分かって頂けるだろう。
好きな子の気持ちだって、その子が他の男に夢中なのが分かり、ハッピーな気分になる奴なんているのだろうか。
そんな感じで、ろくでもない能力(病気とでも言ったほうがいい気もするが)であるのは明白だ。
だが、そんなひどい能力にも救いがあった。
スイッチ機能があるのだ。
左耳を触る事で、本音を聞こえるようにしたり本音を遮断出来る。
これのおかげで俺の精神は安定を保つ事が出来る。
もしこれがなかったら、間違いなく精神科に直行していただろう。
感謝、感謝。
そんなわけで、俺はスイッチ機能をいかんなく発揮している。
つまり、ずっとオフにしてる。
オンにする、人の本音を知りたいなんて決して思ってたりはしないだろう、永遠に。