第十三話 break the shell
おまたせ(二回目くらい)
どうしてもまとめ忘れちゃうんですよね……
どうしよ、一本にまとめるか、定期でまとめるか……?
※break the shell=殻を破る
次の日……
落下から18時間経過
side 亮
突然、扉を叩く音が響き、すぐに目が覚める。
ホルスターに入れていたハンドガンを抜き、扉に向ける。
ドンドンと鋼鉄製の扉が叩かれる。
よく耳を澄ますと、外側から呼ぶ声が聞こえる。
少しだけ開いた隙間から銃口を覗かせ、外側を警戒しながら覗く。
「亮様、でしょうか?」
そこには俺を地下に叩き落とした本人がいた。
「こんなところに何の用だ、突き落とした本人が」
女性の相手は苦手で、確実に敬語になってしまうが、例外がある、それは子供とこちらに危害を加えた者だ。
それらに対しては少しだけ強気に出られる。
「それは違います、あなたは偽物に騙されたのです!」
詳しく聞けば、この館にそっくりになれる【偽物】が紛れ込んでいた。
入り口の門の前で戦っていたのはどちらかが偽物だったのだ。
偽物は魔力によってその姿を偽っているようだ。
「それで、咲夜さんはどうしたいんだ?」
「先ずはあなた達をこの部屋から出します、そちらから押してください!」
「わかった、321でいくぞ、321!」
両手を扉につけ、力いっぱい押すが、少しも動かない。
「やはり人間2人では無理か…何時もはどうしている」
「レミリア様に開けてもらっています」
「そのレミリアはどこに」
「今は病気で寝込んでおられます」
静かに亮は舌打ちをした、妹が吸血鬼なら姉もそうなるが、そこまでしなければ開かない扉なら、たかが人間2人で押しても無駄であると彼は判断した。
むしろ昨日妖精2人と人間1人でよく開いたものだ。
「何してるの亮、扉を開くの?」
後ろから声がかかる、後ろを振り向くと、フラン、チルノ、大妖精の3人が並んで立っていた。
「手伝ってくれるのか?頼むぞ!」
チルノと大妖精が扉に体当たりするように扉に力をいれる。
「少し動いた!チルノ達なら通れる!三人とも出てくれ!」
チルノ、大妖精の順に身体を無理矢理扉の隙間にねじ込むように部屋からでる。
フランが出ようとした時、突然扉に描かれている魔法陣が光り、フランを部屋の端まで弾き飛ばした。
「大丈夫か?!」
倒れているフランに手を貸す。
「ははは……私はここから出られないみたい、亮、先にいって……」
壁近くまで吹き飛ばされたフランのそばまで移動して、フラン目の前に手を差し出す。
その影に気づいたフランが顔を上げる。
「…………なんで私に構うの……私は史上最悪の吸血鬼なんだよ!」
再びうつむくフラン。
「それがどうかしたか?それに決めたんだ、あの時から、誰一人として見捨てないって……一つだけ方法がある」
それを聞いてフランは顔を驚いたように上げた。
「左手にある力で扉の隙間から向こうへ飛ぶ。距離を壊せられれば途中で障害物があろうと関係ない」
「……その方法で行った時のメリットは?」
フランが泣き出しそうな顔で聞く。
「また俺たちが力を合わせて扉を開けなくて済む、フランは無傷でここから出られる。デメリットは失敗すると壁の中に吹き飛ばされるかもな」
フランが口を開きかけたが、次早に口を開く。
「さあ、右手を握ってくれ」
右手をフランの顔の前に差し出し、フランはその手を握った。
手を繋いだまま、扉の前まで歩き、左手を前に突き出す。
視界にある移動する地点の光が丁度扉の隙間に通るように左手を動かす。
失敗すれば死ぬのと同義のこの状況で緊張してしまい、腕が震えているせいでなかなか隙間に収まらない。
それに気づいたのか知らないが、フランが右手を強く握る。
少しだけ、勇気づけられた、こんな小さな子供に勇気づけられるとは、と思ったが、彼女は495歳、この中で誰よりも年長だろう。
そして、意を決して左手を握る。
ガラスが割れるような音を立てて、目の前が真っ暗になった。
どれほど長い間目の前が暗かっただろう、それほど時間が経って居ないかもしれない、目を覚ますと、俺は床に寝っ転がっていて、フランが丁度腹の上に乗っていた。
周りは廊下で、頭のすぐ上は階段だ。
助かった、そう思うと、自然と笑みがこぼれる。
起き上がる前に、フランを腹の上から降ろして、頬を軽く叩いて起こす。
「ん………何、ここは?部屋の外?私助かったの?」
「ああ、その通りだ、助かったんだよ」
「……すごく怖かったよ………!」
そう言うと、フランは泣き出し、俺に抱きついた。
俺は、フランの背中を軽く叩いてあやす。
フランが泣き止むまで、長い間あやしつづけた。
ようやく泣き止み、これからのことを咲夜と話す。
そこで咲夜の仕える主人が病気によって死にかけていること、その時、蓮子先輩達が俺の血を使えば治るのではないかという提案がなされたことを聞いた。
「なるほど、それならあと一本しかないが、こいつをもっていってくれ、俺は全員を連れて向かうから遅くなる、身軽なあんたが行ってくれ」
「ですが、1人で行くなら結局あなたが行った方がよろしいのでは?」
「時間が止められるんだろ、止めて全力で走ればいい、それに……」
チルノ達の方を振り返ってこう言う。
「こいつらを絶対に俺の手で守って見せると決めたからな……」
その言葉を聞いて諦めたのか、咲夜は深いため息をつく。
「わかりました、これは私がレミリア様に責任をもって渡します、ですが忠告です、
今現在、紅魔館には働いている者に化けて催眠魔法を掛け、洗脳紛いの事をしている輩が内部に居ます、
そのためメイド妖精があなたに対して攻撃する恐れがあります、十分に警戒してください、
あと、これを渡しておきます、活用してください」
そういってフレアガンとハンドガン一丁ずつ置いて目の前から消えた。
時間を止めて移動したのだろう。
置いていったハンドガンはSIG SAUER P220の.45ACPモデルだ、ただ、弾丸が銀の弾丸だ、吸血鬼に対して効果抜群と聞いたことがある、うまく使おう。
基本的に護衛する対象が一人の場合、安全に素早く運ぶため、屈ませてその上に乗るように護衛する。
そうすることで、敵に遭遇した時に押し倒して無理矢理伏せさせて戦闘できる、対象がビビって逃げることができなくなるのである。
(ただし対象の扱いが雑であるが。
よく海外でははっ倒したり体当たりして吹き飛ばしたりと本当に守る気があるのか疑問に持つ人も多い)
だが、今回は守るべき対象が3人もいる、まず俺が先行して安全を確保してからついて来させる。
地下室を抜けると、そこは高い天井の近くまで本棚が積み上げられている図書館だった。
ただ、図書館には人の気配が一切無く、安全と考え、早くここから離れるべきと思い、周囲を警戒しつつも早めにこの場を離れる。
正面玄関にたどり着くと、ようやく外が確認できた。
すでに真っ暗だ。どうやら俺は昼間に寝て夜中に起きたようだ。暗すぎる、かけられている松明がなければ4m先まで見えない。
今は全く敵の気配が感じられない。
「安全だ!こっちへ来てくれ!」
チルノ達を呼び、中央の階段を登ろうとすると、突然何もなかった空間から光の弾が飛び出す。
すぐに下がり、俺とチルノは今まで歩いてきた図書館側の廊下の壁、
フランと大妖精は反対側の本館に続く廊下に隠れた。
光の弾の密度はドンドン増していく。
「くそっ、奴らどこに潜んでやがったんだ、気配なんて感じなかったぞ…」
「妖精は自然そのもの、一回休みになってもまた自然から復活する、でも、一度一回休みにすればしばらくは大丈夫」
つまり、ここで一度倒しておかないとまた何処かで復活するということか。
そうだ、あの二階に飛ぼう。
今、奴らはこちらに対して注目している、注意していない方向から攻撃すれば、必ず対応が遅れる。
「チルノ!大妖精!フラン!あいつらに攻撃できるか?!」
「できるよ!」
「二階に弾を飛ばすなよ!」
首元のチョーカーの陰陽玉をはじき、左手を突き出して、二階に向けて左手を握る。
ガラスが割れた音がして、次の瞬間には二階にいた。
こちらには気づいていない、コルトガバメントを構え、奴らに向かって撃つ。
一発撃つだけで奴らが倒れる、倒れる時に、妙に電子的なピチューンという音が聞こえてくるが、気にする必要はないようだ。
敵が一瞬こっちを見た瞬間に、フラン達の放った光の弾が敵の一人に命中する。
そこから一気に混乱して、あっという間に連携がきれてしまった。
一人ずつ撃破され、全滅してしまった。
奴らがいたところは死体すらなく、結局落ちているものは薬莢しかなかった。
おそらく自然に返ったのだろう、しばらくすれば復活するのであればここを早く離れなければならない。
一階にいるフラン達に来るように支持すると、突然玄関の扉からあの狼達がやってきてフラン達を襲い出した。
あまり使いたくなかったが、使うしかない。
「目を閉じろ!」
フレアガンを構え、丁度フラン達と狼の間に照準を合わせ、引き金を引く。
直径4cmの照明弾は弧を描いて赤い光を撒き散らして飛んで行き、着弾地点で燃焼が進み、60万カンデラ
(LEDの家庭用スポットライトが100万カンデラ)の光度は一瞬ではあるが、敵の視界を眩ませた。
その隙にハンドガンを構えて狙い撃つ。光と銃声に驚いたのかすぐに逃げていった。
「フラン!大丈夫か?」
チルノ達は先ほど狼と戦っているから恐らく大丈夫だろう。フランも特に怪我もなく。全員目立った怪我はないようだ。
とにかく急がなければ、咲夜は既に到着しているだろう、もしくは、騙して回ってるという偽物に捕まったか。
階段の上を警戒しながら登り、階段の頂点の前で体が出ないように覗く。
五人ほどぼーっと浮いている妖精がいる、目には光が宿っていないことを見ると、操られているようだ。
発見される前に攻撃して先手を取ろう。
一人にハンドガンのサイトを合わせ、こちらに背を向けた瞬間に引き金を引く。
放たれた弾丸は正確にメイド妖精の頭に当たり、電子音と共に消えていった。
銃声に気づいた彼女達はすぐに反転してこちらに攻撃を始めた。
反応からこちらに反転、攻撃が速すぎる、廊下の棚に隠れる隙が無い。
階段からすこし身を乗り出すようにして戦闘する。
頭を下げると、頭上を光弾が飛んでいく。あの弾がどのくらいの威力かわからないが、当たりたくはない。
再び顔を出して攻撃しようとした瞬間に光弾が目の前に飛んでくる。
とっさに頭を下げることでよけることに成功したが、階段を背中から落ちてしまう。
「ちょっと!大丈夫?!」
チルノが大声で心配してこちらに降りてくる。
「あぁ!大丈夫だ「危ない!後ろ!」ッ!!」
叫ばれた瞬間に右に転がる。
転がった先は玄関ホール。しかも二階で柵は先ほどの戦闘で壊されている。
そのまま一階に落ち、背中から地面に叩きつけられる。
衝撃で視界が眩む。
二階からこちらを覗く者がいた。先ほど後ろから攻撃しようとしたやつだろう。
しかし、それは人間とは思えない容姿をしていた。




