第十二話 スカーレットの伝説
スカーレットの話は独自設定で穴だらけです。
あと読む人によってはあることに気づく人もいるかも。
はい、更新遅れて申し訳ありませんでした。
なんか前もこんな話しましたね、
今回は純粋にまとめ忘れてただけですが…
スカーレット家、
近世ヨーロッパ時代のイギリスの山奥に、没落した貴族の一人が逃げた。
彼は自らに最期まで着いて行くと誓った数人の男女……臣下と、逃亡を決行する数日前に街で一人で居たところを保護した少女の指示の通り三日三晩歩き続け、発見した館は真っ赤に染まっていた。
最初こそは気味悪がり、中々入ろうとしなかったが、ついに痺れを切らした案内した少女が館に突入してしまった。
慌てて少女を追いかけ、中に入るとその館で働いていた者皆で歓迎された。
その後、主人の執務室に通されると、そこにいたのは館へ突入した少女だった。
少女は自らを最期のスカーレット家と言い、ヴァンパイアである事も公言した彼女は、子孫ができない故に力を失いつつあることを告げ、
スカーレット家再興の為に協力してほしいと頭を下げた。
当然、貴族の彼は街に帰っても何かある訳ではない、むしろ処刑されてしまう、そう思い、彼は彼女に協力することを決めた。
協力の仕方は単純である、子供を沢山産めば、次の世代には強くなれる。
最初に産まれた子をレミリアと呼ぶことに決め、その次に産まれた子をフランドールと呼ぶことにした。
二人ともスクスクと育ち、レミリアが二十歳になった時、スカーレット家を目の敵にしていた他の吸血鬼達が一斉に攻めてきた。
主人である少女が当然撃破数は多かったのだが、
レミリアとフランドールが共に少女の撃破数の二分の一ほどだったことを知った少女はフランドールに魔法を教えた。
レミリアには既にスカーレット家を維持する為のいわゆる帝国学を既に学んでいた為、新たにマンツーマンの戦術を学ばせた。
そして、再び攻め込んだ時、
少女は敵の主将を倒したが、自爆に巻き込まれ、この世を去ってしまった。
、レミリアが、母親が死んだことにショックを受け、他の吸血鬼達に宣戦布告をした。
当時レミリアは百歳を越えようとしていた。貴族の彼はレミリアが五十歳を超える前に寿命で死んでしまった。
当時吸血鬼としてはまだ子供であったが為に他の吸血鬼は油断していた。
しかし、レミリアが道を作り、フランドールがレミリアを攻撃する者を文字通り一人づつ握りつぶしていったせいで、いつの間にか宣戦布告していた敵を全て潰していた。
「で、今でもスカーレット家はイギリスでも信じられていて、泣き止まない子供に『泣き止まないとスカーレットが来て血を吸われちゃうよ?』
って言うんだって」
全ての説明を終えた蓮子がメリーに笑いかける。
「よくそんなこと知ってるわね、本にでも書いてあったの?」
メリーは冗談半分に蓮子に尋ねた、すると、蓮子は真面目な顔で。
「実はあるのよ、スカーレット伝説ってのが、著者はイギリスのボワロ・R・チャーチル、実在する人物よ、日本でも発売されたけど、あまり人気は出なかった様ね、夢見過ぎって思ったんじゃない?」
このチャーチルはイギリスの議員ではなく、ただの中年の親父である、そして……ネタバレになってしまうのでここまでにしよう。
イギリスでは今でも精霊の存在を信じている者が多い、よって、他の国が御伽噺とする話を真面目に信じている者もいる。
まぁ、そんなことどうでもいいけどね、と蓮子は呟く。
メリーが紅茶に手をかけようとしたその時。
パァァァン……
「今のは……銃声?!」
あまり大きくない破裂音がメリーの耳に入る。
「あっちから聞こえた、望遠鏡はある?」
蓮子が咲夜に尋ねる。
咲夜はどこからともなく装飾品の付いた金色の望遠鏡を渡してきた。
蓮子はそれを受け取り、食堂の窓から見える湖の周辺を探す。
湖から岸辺へ大量の犬の様な生き物が動いて行く。
その先を見ると二人の人、一人は青い服に青い髪、もう一人は緑の髪をした者が崖へ逃げて行く。
「もう少し手前かしら」
少女が逃げて来た方向のもう少し後ろを見ると、そこには後ろを向きながら拳銃を撃っている亮を発見した。
「メリー!亮君よ!助けに来た様ね」
「蓮子!私にも見せて!」
メリーは蓮子から半ば奪い取る様に望遠鏡を取り、亮がいた方向を見る。
「何かに追われている様ね、何かしら、犬?犬なら大丈夫に思えるけど」
蓮子がそうつぶやく、
犬は遥か昔、日本がまだ竪穴式住居に住んでいた時、自ら人間に近づいた生き物の一つだ、人間に好意的で共に狩りをするパートナーでもある。
しかし、それは犬が人間になついていることが前提である。
「蓮子、それは間違いよ、犬は人間とは比べ物にならないくらい強力な噛みつきで人間の喉を食いちぎるわ、それに下手すると狂犬病にかかるわ」
人に懐かない犬は集団で動き、全員で獲物を噛み殺し、みんなで分ける、それほど凶暴なのだ、
さらに飼い犬でない野犬は狂犬病の様な人間にとって危険な病気を持っていることもある、
だから保健所は【野犬狩り】と呼ばれる野良犬の保護をしているのだ。
この館は崖の上にあり、降りると登れない、本当は登れるのだが、相当な筋力がなければ登ることかできない。
そのことを咲夜から説明を受けると、蓮子は一つ質問をした。
「ねえ、ここの主って誰なの、できれば会ってみたいんだけど、私達客人でしょ?」
客人にしては傍若無人な振る舞いではあるが、無理矢理押し通すのは蓮子のお家芸なので、メリーは咎めない。
「承知しました、ではこちらです」
咲夜が一礼したと思えば、蓮子の目の前からカップがなくなった。
彼女の言うとおりに廊下にでてから咲夜について行くと、一見豪華そうな扉の前に着いた。
「レミリアお嬢様、連れて来ました」
ノックを三回したのち、咲夜は扉を開けて中に入っていった、
蓮子とメリーは互いの目を見て、咲夜に続いて中に入った。
そこには、ベッドに横たわり、真っ赤な顔をしてうなされている少女がいた。
よく見ると鋭い犬歯が覗いている。
背中にはコウモリのような羽が布団からはみ出している。
「レミリアスカーレット、やはりあなただったのね」
「蓮子、もしかしてこの人があの話の……2人で大量の敵を相手したっていう…」
メリーの質問に真剣な表情で蓮子は答える
「そうよ、スカーレット家の次期当主のレミリアよ、その次期当主が、なんでこんなことになってるのかしらね」
咲夜が言うには全く知らない病気なのだそうだ。
風邪にしては異常な程の高熱だ。
咲夜から許可をもらい、額に手を乗せた瞬間、凄まじい熱が手を焼いた。
「吸血鬼よね、風邪とは違う症状の様ね、なら一つだけ心当たりがあるわ、質問に答えてね、この病気にかかってから血を飲んだことは?」
それに咲夜が答える。
「いえ、血が身体に付くとそこが膿んで血が出るんです」
「なら決まりね、この病気は
拒血病よ」
拒血病とは、現代ヨーロッパにて発見された未知の病気である。
この病気は人間に感染しても風邪の症状が出るだけで数日後にウイルスは死滅する。
その為、人間の中ではあまり危険視されなかった。
が、吸血鬼だけはそうではなかった。
吸血鬼がこの拒血病にかかった人間、所謂キャリアーと呼ばれる者の血を吸うと感染する。
初期は軽い熱と軽いめまいで、血が皮膚に触れるとかぶれる。
病気が進行すると、凄まじい熱と吐き気で立てなくなる。
吸血鬼の食料でもある血を飲むと、激しく吐血する。
重症になると全身の穴という穴から出血し、やがて失血死する。
治療法は一切無く、一度感染すると死ぬまでその病気に苦しめられる。
吸血鬼の間では死の病として恐れられている……という噂だ。
拒血病は確かに存在する、しかし、吸血鬼の話は出典が御伽噺の為、信憑性が全く無いのだ。
「よくそんなこと覚えてるわね、あなた本当に文系?」
「この前図書館の読み聞かせボランティアで本探ししてた時に偶然子ども用のエリアで見つけたのよ、明らかに子ども用じゃないから司書さんに渡しておいたのよ」
「文系らしい覚え方ね」
蓮子は伝説を知っていて、メリーは病気を知っている。
本来二人とも逆であるが、彼女たちはやりたいことはずっと覚えている様な人間である。
たとえそれが嫌いな人との思い出だとしても。
「本当に治療法はないのですか?」
咲夜がレミリアの頭に乗せたおしぼりを変えて尋ねる。
「確かに無いわ、通常の方法ではね」
「その通常の方法以外にあるのですか?」
咲夜がかなり押し気味に聞いてくる。
当然である、彼女はレミリアの従者であり、レミリアが死亡すれば真っ先に疑われる存在なのだ、同時に最も仕えている者の身体を心配するのも当然、治す方法があれば、自分の命を顧みず取りにいくであろう。
「その方法は簡単よ、亮君の血を飲ませればいいのよ」
「亮…とはどなたでしょうか」
「そうね、そこに今からやってくる人がそうよ」
メリーが外に目を向けると、丁度塀を乗り越えて敷地内に入ろうとしている亮がいた。
その瞬間、レミリアの口が動いた
「すぐにお迎えに参ります!」
口元で聞いていた咲夜が部屋を飛び出していった。
「さて、私達はここで待っていましょう」
そういって蓮子は近くの長椅子に腰掛けた。
なお、彼女達が次に亮と出会うのは十二時間後であった
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