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型破りな探偵達   作者: 黒猫レオ
1 Black One、始動。
8/26

search 7.

「……と、いうわけで」

事務所に再び帰ってきたニカ、キル、ミイの三人は、チシャに収穫を報告していた。

エヌはというと、まだこもったままで出てこない。

「まずは、私から。柴原は友達がいないって言ってたけど、一人はいるみたい。電話の相手が、柴原に関係してるかも。あと、服大量購入してたのは、もしかしたら、これからなるべく外に出ないためかも。同じ商店街のスーパーで、食料大量購入してたっていう情報から推理。以上!」

すとん、と座る。国語では90点以下を取ったことがなく、まとめて話すのが得意なミイ。さすがだ。

「次は、私」

キルは立ち上がった。そして、眉間にシワを寄せる。目線の先には…

「ぐー……」

寝る、チシャ。

「……起きろチシャぁぁっ!!!!!」

バチーン!と右手が宙を舞う。

「……ん……ごめん」

「ごめんで済むか、この眠り姫! そんなに私の話は退屈か!」

「……うん……退屈……」

「さらっと言うな! ちょっと傷付くわ!」

まとめて話すのが不得意なキル。ちなみに、国語の平均点数は、10点。大半は漢字問題で丸がつく。

「……とにかく! 話すから。……寝るなニカ!」

「だってさー、長いんだもん、キルの話」

「校長先生よりは短いと、私は自負してる」

「……どんぐりの背比べ、かな」

ミイにまで言われ、がっくりと肩を落とす。

うん……分かってるよ? 話し下手なのはさ……

「……気を取り直して。私は、花笠に研究結果がどんなものなのかを聞きに行ってきた」

ばさっと資料を机に広げる。

「簡単に言うと、爆弾だな」

その一言に、チシャが過剰反応する。

「……爆弾」

「そう。私も専門的なことはよく分かんねぇけど、ここに書いてある通り」

資料の一番下を指差した。

「金属ナトリウム……って物質があるんだ。水に浮くくらい軽くて、カッターで切れるくらい柔らかいらしいな。んで、水と反応しやすいらしい」

「……キル、やっぱり分かりにくい」

「それは私の説明力じゃなくて、科学的な話だからだろ!?」

ニカを怒鳴りつけ、キルは説明を続ける。

「水と反応すると、金属ナトリウムは燃え始めて、しばらくすると爆発する。この性質を利用した爆弾らしい」

「……チョー危険じゃん」

「そうだな。空気中の水蒸気にまで反応するらしいから、扱いは難しいと私は思う。普段金属ナトリウムは空気に触れないように石油の中で保存するらしいんだけど、花笠は、全く空気を入れないカプセルの発明をしたらしいんだ」

「キル、『らしい』ばっかりで分かりにくい」

「しょうがねぇだろ。私だってバカな頭フル回転させて説明してんだから。……でも、そのカプセルは空気を入れないのに水には溶けやすい。つまり、そのカプセルの中に金属ナトリウムを入れて水に投げ込めば爆発……って感じだろ」

チシャは腕を組んだまま動かない。頭の上にハテナマークを飛ばしているのはミイで、早々と諦めて『ピコーン』と1UPの音をたてているのはニカ。……どうせ説明力足りませんよーだ。

「それが……柴原に奪われた……」

「あぁ。研究結果っつーのはそのカプセルみたいだ。資料だけかと思ってたから驚いたな」

キルはソファにとすんと腰を落とした。

「そんなのを奪うなんて……柴原は何企んでんでるのかな」

「分かんねぇ。今の時点じゃ、情報が少なすぎんだ」

チシャが腕組みしたまま動かない。しかも、眠っているわけでもなさそうだ。

「……リーダー?」

「……ん……みんな……大丈夫かなと……思って……」

かちゃかちゃとゲームのボタンを押していたニカの動きまでもが、止まった。

「どういう意味だよ、それ……」

キルが聞く。でも、答えなんて聞きたくない。誰もが聞きたくない。

嫌な予感しかしないんだ。

「……ヘタしたら……最悪の状況だって……あり得る」

ぼーっとした、チシャの言葉。でも、いつものチシャではない。重い何かが、喉を絞めつけているような、そんな声だった。

その途端。

バタン!!

「ぐぅおっ……!!!! げほっ……げほ……」

いきなり部屋のドアが勢いよく開き、大量の煙と共に、ドアから『人のようなデカイもの』が吐き出された。

「エヌ!?」

「ちょ、どしたのエヌ!?」

『人のようなもの』はもちろん人で、煙にまみれてヒゲが伸び放題になったエヌだった。

「うわ、ひでー顔……」

「すご、何このケムリ!」

「はっ……げほ……はしゃぐなニカ……危険だぞ……」

むせかえりながら窓まで這うように進んだ大男は、壁にもたれかかりながら窓を全開に開けた。煙がもうもうと部屋の外へ逃げていく。

「……どうした……エヌ……」

「はぁっ……大変なものを作ったな、俺は。威力バツグンだ」

「今度は何作ったんだ、エヌ」

「はぁ……はぁ……まぁもうすぐ使う時もくるだろ。けほ……これは最高傑作だな。レールのマスターにお礼を言わないと……」

ごほごほ咳をしながら、エヌはソファに転がった。ぎし、という悲惨な音がする。

「いいのを作ったのか」

「あぁ。早く試したくて仕方ない。何しろ作った俺でさえダメージがデカい」

「そりゃ大変だ」

キルは苦笑した。

「そういえば、まだニカの報告が終わってないよ?」

ミイが言った。ニカは、あ、そうだっけー? と言いつつ、この時ばかりはゲームの電源を切った。

「えっとねー、柴原の家みっけたよ」

さらっと言い、地図を広げるニカ。

「……お前いろいろすごいよな」

「意外と探偵向きなのかもね、ニカ」

キルとミイが交互に言う。

「んっと、ここが柴原の家。こっからちょっと遠いけど、電車だったら5駅乗り換えなしで行けるからラクチンだね」

「新しい家に引っ越すみたいに気軽に言うなニカ。潜入すんだぞ」

「うん。でも俺ほら」

自分を指差し、いたずら好きの子供のように笑う。

「俺、天才だからさ」

「……返す言葉がねぇの悔しい」

「うん。潜入に関しては確かに天才……」

キルも上手いが、ニカはかなりの技術を持っている。計算して動いているのか本能なのかは、誰にも分からない。

「……ん……じゃニカは……柴原の家へ……三日後潜入……ミイは同行して……キルは俺と……司令塔。エヌは……実験時間いる?」

「いや、必要ない」

「じゃ……潜入で使っていいよ……安全には気をつけて……」

「おう。人体には影響はない。……多分」

「ちょっと待て。今ちっちゃい声で『多分』っつったろ。聞こえてんぞ」

「えー! ちょ、やめてよエヌ!」

「えー、俺まだ死にたくないよ?」

エヌは頭をかいた。

「まぁ死にはしない。……精神的にはどうかと思う。もしかしたら、くらったら立ち直れないかもしれない。だから、くらうな」

「無茶苦茶だよエヌ!」

「じゃー俺大丈夫だなー」

「うん。ミイはムリでもニカは大丈夫だ。そんだけポジティブだからな」

キルが苦笑混じりに言うと、ミイは膨れてすねてしまった。



さて、三日後。

5人の乗った車は街を走り、はしゃぐニカを怒鳴りつける声が、午前5時の街なかに響いていた。


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