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型破りな探偵達   作者: 黒猫レオ
1 Black One、始動。
7/26

search 6.

ニカ、ついに変装します。

女子力高い。

何の進展もなく、過ぎていく日。ニカは一つゲームをクリアしてしまい、キルはパソコンに疲れてブルーライト遮断のメガネを買い、エヌは新しい何かを作るらしく部屋に閉じこもったきり出てこず、ミイはこの期間に服を5着買った。さて、チシャはというと、何をしているのかあまり寝ないで街へ出かけることが多くなった。そんなある日、久しぶりにチシャが椅子に座った時のお話である。


「おかえり、リーダー!」

「何やってたんだよ、わざわざ街まで」

「ん……まぁいろいろ。それよりこれ……」

力なく投げられる、一枚の紙。

「……何これ」

「見たら分かると……思う」

机を少し滑ったその紙を持ちあげる。少し分厚い、独特の手触り。これは……

「写真?」

「ん……これで撮ったから……あんまり画像よくは……無い……けど……」

「チシャ眠すぎて言葉ぶっちぶち切れてんぞ」

チシャが差し出したのは、エヌが作った本型のカメラだった。作った、といっても、ハードカバーの本の背表紙に穴をぶち開けて、キルお手製の小型カメラをぶち込んだだけである。

「……誰、これ」

ミイが言った。

「男の人だねー、若いみたいだけど」

「……柴原……」

ふうん、と、ミイがぼそっと呟く。

ん?

違和感を感じて、止まる。

一秒、二秒、三秒。

…………

「『「……え……ええええええええええ!!!!!????」』」

大声を上げたのは、チシャとエヌ以外の全員。

「ししししし柴原!? は!? 何で!?」

「ん……街で柴原って呼ばれてたから何となく……」

「え、でもそれじゃあ別の柴原かも……」

「いや……写真撮ったのは……二日前。……ずっと……本物か確かめ……て……た」

「駄目だ、もう充電切れる」

キルの言葉通り、ピー……という音でもしそうなくらいあっけなく、チシャは首をかくんと折った。

くー、くー、という、平和この上ない寝息。

「……リーダー、すごいよね……」

「耳のよさは俺よりすごいもーん」

「ニカも相当だけどな……チシャがここまでとは知らなかったわ……」

キルはまた写真を見る。男、若い、ということまでは分かるが、詳しい顔までは分からない。

「解析してみるか……じゃあ詳しく顔とか分かるかな」

「やっと本格的に仕事出来るねー」

「……待って、キル」

ミイがパソコンに向かおうとするキルを止めた。

「どした?」

「リーダーは……どこで柴原を見つけたんだろ?」

……やべ。それ聞くの忘れてんじゃん!

「あと……柴原って呼んだ人って一体誰?」

……リーダー、ヒントだけくれるのそろそろやめてくれ!


死んだように眠るチシャを叩き起こし、写真の場所を聞き出したキル、ミイ、ニカの三人は、キルの解析した写真を持って、街で聞き込みを始めていた。

「あー、来たわよ、来た来た! この人、大量に服を買ってった人よ!」

街の古着屋の店主のおばさんが言う。ミイはガッツポーズをした。

「服を大量に?」

「そうなのよ。お店の半分くらい買い占めて。大きな紙袋三つ提げて帰ってったわ。そうそう、この人よ。間違いなく!」

「そんなにハッキリ覚えてるんですか?」

ミイが聞くと、そりゃもちろん、と堂々とした答え。

「この人、電話で訳の分からないこと言ってたのよ。確か……破壊だの30だのって。焦ったみたいに電話してて。しばらくしたら、外に知り合いが来たみたいで走ってっちゃったけど」

「どっちへ行ったか分かりますか?」

「そこまではねぇ……あ、でもあんなに同じ紙袋提げてる人なんて滅多に見ないだろうから、商店街の誰かは見てるんじゃないかい?」

「そうですね! ありがとうございます!」

ミイは頭がちぎれるんじゃないかというくらいの勢いで頭を下げて、店を飛び出した。


「電話?」

「そう。破壊とか30とか言ってたって」

「……何の話だ?」

「分かんない。でも多分、その電話の相手が柴原を呼んだ人かもね」

ミイは近くの喫茶店でキルと落ち合い、話をしていた。

キルは電話の内容が気になるらしく、破壊……と呟く。

「……まぁ、研究結果のことと見て間違いねぇな。ただ、言葉が物騒なのがどうしても気になる」

「どういうこと?」

「……危ないものかもしれないってことだ。というか、もう危ないものは確定なんだけどな」

ブルーライト遮断のメガネを拭きながら、キルは遠い目をした。


同じ頃。ニカは、一人で柴原の家を探していた。男が男の家を一人で探していると怪しまれることが多い。というわけで、今ニカは女に変装中だ。

「この男の家かい?」

「そうなの。誰か知ってるといいんだけど……」

うつむき、少し口を尖らせた。この顔に、男は弱いことをニカは知っている。

「……俺は知らねぇなぁ。何かあったの?」

「ちょっと、ね。でも、知らないならいいの。ごめんなさい、足とめちゃって」

「いやいや、全然いいよ! ……あ、俺の友達に古くからここにいる奴がいるんだ。もしかしたらそいつが知ってるかもしれない」

案内するよ、と男が手招きした。

ラッキー。

ニカは、男には見えない角度で舌を出した。

「ありがと。すっごく助かるな」

少し甘い声を出すと、相手の顔が赤く染まるのが見えた。

これだから、分かりやすい。

ニカはにやりと口角を上げ、ひょこひょこと男の後をついて行った。



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