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型破りな探偵達   作者: 黒猫レオ
1 Black One、始動。
5/26

search 4.

「……で? 結局寝たんだ、リーダー」

「……いいからそこどけミイ。重いんだよ」

キルは言う。

聞き込みが終わった途端に夢の中へと旅行しに行ったチシャは、いくら揺すってもつねっても座席から転がり落としても起きず、仕方なくキルが背負って上がってきたのだ。

「普通逆だぜ? 私女だしよ」

「見えないから大丈夫、キル」

苦笑しながら、ミイはドアを開けてくれた。どかどかと事務所に入ったキルは、チシャの部屋のベッドに本人を振り落とす。ふぎ、とおかしな声が聞こえたが、あれくらいでは起きないだろう。

「おかえりーキル」

「……またゲームをしているガキがいるぞ」

「もう俺二十二になったもーん」

「精神年齢は五歳だ、ガキ」

キルはソファで寝転がっているニカを転がして落とす。

ごぅん、と鈍い音がした。

「……あぁぁぁ……」

「ソファ占領すんな」

「電源切れちゃったぁぁぁ……」

「一からやり直せ」

キルはソファに三角座りをした。

「荒れてるね、キル」

「まぁな。花笠はなんか隠してるぞ」

え、とミイが口を開けた。

「……隠してる?」

「あぁ。何か知らねぇけど、もう柴原を犯人って決めつけてる」

隠してるな、とエヌが言った。

「お、エヌもそう思うか?」

「あぁ。多分」

「何隠してんのー?」

「それを今考えてんだよ、五歳児」

キルはニカの首根っこをつかむと、ずるずる引きずって《お仕置き部屋》にぽいと放りこんだ。

『わー! 暗いよ何も見えないよー!』

「ゲームで照らしとけ。黙って聞いてろ」

がちゃん! と鍵が閉まる音。キルのケチーと言っているニカは、全く反省していない。ミイはため息交じりに苦笑いした。

「……ミイんとこの収穫は」

「間宮さんって人に話聞いてきた。大学の生徒さんだよ」

「へぇ、どんな奴だった?」

「んーとね……金髪でー、ネックレスつけててー、手の甲にタトゥー入れた、男の人!」

「……お前本当に大学行ってきたんだよな?」

「うん! めちゃくちゃいい人だったよ? 私とニカにコーヒーおごってくれて、詳しく話してくれたの」

「……見た目それで?」

「笑った顔とか素敵だったよ」

「つか、笑うんだ」

「その人は、アップルティー飲んでた」

「可愛いな間宮さん」

キルは頭をかく。ミイの人懐っこさには毎回度肝を抜かれる。

「で、柴原がどんな人か聞いたの。じゃあ、うっとおしい奴だったってさ」

ミイが言う。

「うっとおしい?」

「うん。勉強できるから、他の人たちのこと使ってたらしい」


「あいつはよ」

間宮、と名乗った金髪男は、可愛らしい小さなカップに入ったアップルティーを飲んで言った。

「確かに勉強はトップだった。大学で一番だ。俺も初めは仲良くしようとしてた。上手くやったら勉強教えてもらえるかもしんねぇだろ? だからあいつに話しかけたんだ」

間宮は、一人で弁当を食べる柴原に話しかけた。

「んじゃ、あいつ何て言ったと思う?」

ぎろり、と睨まれたが、その、可愛らしいカップが……。ミイは笑いをこらえながら首を左右に振った。ニカは、大きめのコーヒーカップの中身の熱さと格闘している。

「あんたとは釣り合わない、だとよ」

それだけではなかった。笑顔で、どういうことだ、と尋ねると、柴原は無表情でこう返したという。

『お前の順位だよ。間宮健介、大学内の生徒五百人中、お前は三百十二番。つまり、五百人中一位の俺とは釣り合わない。何か反論はあるか?』と。

「俺はそいつと話すのは一生ごめんだ」

間宮はカップを口に近付けた。

「あいつは、教授しか知らないはずの順位をなぜか知ってる。しかも、あいつは上から五番目までとしか話をしない。だから嫌われんのも当然だろ」


「……最低じゃねぇか、柴原」

キルが言うと、エヌもうんうんとうなづいた。

多分ここにいる奴らなんて、中学生レベルの頭しかないだろう。相手になんかしてもらえない。

「それで、五位の人知ってるって間宮さんが言うから、その人紹介してもらったの」

「へぇ。どうやって会ったんだ?」

「んーと、間宮さんが電話してくれて。『十秒で来い』って言ったら、十一秒で来た」

「……すげーな。間宮さんもすげーけど、むしろ来た人の方尊敬するわ」

「その人の名前が、梶さん。間宮さんの、中学校時代の同級生なんだって」

ミイが言った。


「こいつは、五位らしい。教授に無理言って教えてもらったんだ」

脅した、の間違いではないのか。ここまで出かかった言葉を、危うく飲み込む。ニカは恐る恐るコーヒーを飲もうとしたが、熱くて断念し、ひたすらふーふーしている。本当に二十を過ぎた成人男性だろうか。

「梶です。柴原さんのことでしたよね?」

梶は席に着くなり、ウエイターにレモンティーを注文して、砂糖も頼んだ。

「お前まだ砂糖入れてんのか。子供だな」

あっはっは、と笑う間宮。

いやいや……あなたも負けてませんからね?

「柴原は、教授から評価されてましてね。よく僕らもペア組まされましたよ。ただ、一緒に組むとやっかいでね……」

「やっかい?」

「はい。とにかく細かいんです。実験の仕方が違うとか、ビーカーに洗い残しがあるとか。小さいことまで言うんです。そりゃ一緒にいたくなんてないですよ」

梶はそう言って、銀縁のメガネをずり上げた。


「……で、梶さんにもいろいろと聞いてきたと」

「うん」

「……で?」

キルは先を促した。なんだか嫌な予感がする。

「うん。キルの予想の通りかな」

「……と、言うと……?」

「終わり」

マジかー……! と、キルはソファに倒れこむ。

「……何も情報増えてねぇよ。嫌われもんってことしか分かんねぇよ」

「だってみんな話さないらしいんだもん!」

「仲いい奴とかは?」

「いないみたい。親にも嫌われてるみたいで、彼女もナシ」

「何か後半は可哀そうだけど、そこは置いといて。居場所が知りてぇの、私は! 潜入行こうにも行けないだろ場所が分かんなかったら!」

「もっと広範囲にした方が……いいかもな」

「うん。何かエヌらしくないから正論言わないで?」

『えー、めんどくさーい』

「みんな面倒なのは一緒だから、わざわざ口に出すな」

「でもニカ、よく考えよ? やったら1000万だよ?」

『やるー』

「単純な奴だよな、お前」

キルはパソコンを立ち上げた。あるソフトを開く。

「何やってんの?」

「新しいプログラム。一回そいつにあったら、もうずっと居場所が分かるソフト。まあ簡単に言うと、発信器だな」

かち、とクリックすると、日本地図がぽんと出る。

「テスト用に、私につけてあるから。これの特徴は、電波の届かない地下とかに行っても居場所が分かることだな。あと、ずーっと見ていなくても記録しておけるから、いつどこへ行ったかってのも分かる」

かたかたとキーボードを操作する。ミイがモニターを覗き込んだ。

「あっ、何かオレンジ色の線が出てる!」

「これは、俺が歩いた道だな。ほら、花笠教授の家に入ってる」

「この赤い星印は?」

「現在のターゲットの居場所。この星印はBlack Oneにあるだろ?私の居場所」

「すごいね、これ! 楽にアジトとか見つけられそう!」

ミイがはしゃいだ。そう、アジトを探すことほど面倒なことはなかったのだ。これならかなり時間を短縮出来る。

「あと、この星印の速度とかを計算すれば、徒歩なのか車なのか自転車なのか、移動手段も分かるようにしておいた。じゃあ持ち物も大体分かるからな」

「……さすがキルだな……」

「天才だよね! ……犯罪の方に」

「ごめん、後半で全部の褒め言葉ぶっ壊された」

キルは靴下に手をやると、ぺりぺりと透明のシールのようなものを剥がしてきた。

「……これが、発信機」

「キル……こんなのも作れたのか」

「すご、うっすい」

「かなりじっくり見ないと分からないように、透明に出来るだけ近づけた。まぁちょっとコード見えるけど、靴の裏とかだったらそんなに見ないだろうから」

キルは発信機を机に置いた。

「これを、柴原を見つけてつける。んで、あいつの動きを監視する。……ってやりたいんだよ、私は」

「やろうよ! いいじゃんコレ!」

「そうだな……はやくこの精度を試したい」

「落ち着け、ミイとエヌ。お前ら大事なことを忘れてる」

キルは二人を制した。

「……まずは、柴原を探さないと」

…………。

またの、沈黙。

「……キル」

口を開いたのは、エヌだった。

「……どうした?」

「……名前を入れただけで居場所が分かるプログラムを作ってくれないか」


もちろん、その願いが叶うはずもなく、キルとミイとエヌの『まだ真面目なほう組』は、頭を悩ませることになった。




今回ちょっと長めだったかも…

すいません。


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