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型破りな探偵達   作者: 黒猫レオ
1 Black One、始動。
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search 3.

捜査が本格的にスタート!…と思いきや…

やっぱりこいつらはさらっと捜査も出来ません。


「……とりあえず、これだな」

キルはパソコンのキーボードを叩いていた。

「花笠さんの助手。調べたら出てきた」

「……これってさ、キルのプログラムだよね?」

「そうだけど?」

「犯罪だからね、これも!」

「分かってるよ!」

キルのプログラム。日本の全人口分のデータが入っている。もちろん、許可は得ていないので犯罪である。

「名前は?」

エヌが口を開いた。

「柴原陽介。二十三歳。……わっか」

「俺たちとおんなじくらいだねー」

ソファに寝転がって、今流行りのゲームをしながらニカが言った。

「っ……あー! また負けた!」

「比べ物にならん」

「ちょっとは手加減してよ、エヌ!」

「……お前ら真剣にやれよ」

「俺らいつだって真剣だもーん」

ばしん。

キルの黄金の右手が炸裂する。

「いっ……たーい! 何すんのキル! 暴力反対っ!」

「ゲームの電源を切れ、ゲーマー達め! 真面目にやってないのはお前らだけだぞ⁉︎」

「えー、チシャは?」

「目ぇ覚ましてよく見ろ。ちゃんと真面目に……」

振り向いたキルが、固まった。

「……んごー……」

……寝て、いる。イビキをかいて。

「……真面目に……やってねえわ」

「キルと私だけだね、ちゃんとしてるの……」

「一人じゃないだけマシじゃね? ミイはいい奴だよな、本当に……」

言ってて悲しくなってくるのが、このネガティブ組である。

「もー分かったよー。ちゃんとするからゲーム返して!」

「返したらするだろ、ゲーム」

「しないしない」

「心入ってねぇぞ」

「しないったらー! それ高かったんだよー!?」

「値段の問題じゃねぇ!」

黄金の右手が顔面に炸裂する。ソファに叩きつけられたニカは、顔を押さえてのたうちまわっている。……うるさくて仕方ない。

「とにかく! 芝原を探すぞ。まずは聞き込みが手っ取り早いだろうから、ニカとミイは大学で柴原の人物像とか探って。私とチシャは、花笠さんに聞いてくる」

「俺は?」

のっそり起き上がったのは、大男である。

「……お前は、新武器作りに全力注げ」

「何で俺だけ?」

「今回……何かヤバそうだから」

しん……と全体が静まりかえった。

「……ヤバい、泣きそう」

言ったのはミイである。

「……キル、俺が死んだらこのゲーム代わりにクリアしてね」

縁起でもないことを言うのは、もちろんニカ。

「……俺一人生き残る可能性あるよな」

今度はエヌである。

そして、眠るチシャ。

「……ごめん、頑張れとしか言えねぇわ。私」

キルは肩を落として、頼りなさそうなチシャに舌打ちを浴びせた。


「柴原ぁ?」

低い声に、身が縮こまりそうになる。

ミイとニカは、花笠の大学に来ていた。芝原のことを聞こうと、大学を出てきた一番最初の人に声をかけたのだが……

「んなこと聞いてどうすんだ、お前ら」

……あきらかに、聞く人を間違えた。

何で大学に入れたのかが、ただただ知りたい。金髪に、じゃらじゃらした銀色のネックレス。いかつい目つきに、手の甲のタトゥー。

……絶対に、大学生じゃないだろあんた!

「今調べてる途中だからなんとも言えないけどー」

しかし、空気の読めない男ニカ。いつもの、人をバカにしたようなトーンで本題に入ろうとする。ますます、相手の目つきが悪くなった。

こっ……わ! ミイは思わずニカの首根っこをつかみ、後ろへ引きずる。

「……何でもいいんです。なにか知りませんか?」

ここは、押し切るしかない。相手は、じろじろとミイを眺めた。

……確かに、私も大学に来るような格好じゃないですけど! でも、あなたも相当ですからね!?

しばらく睨んでいた相手の男が、渋々というように口を開いた。

「あいつは……いつも俺らの敵だ」

「……敵?」

あぁ、とうなづく。

「……詳しく教えていただけますか?」

「いいがよ。お前の後ろの奴、どうにかしなくていいのか?」

言われて、はっと振り向いた。

ハトを追いかけて散らしている、ニカの姿が、そこにはあった。


「彼は優秀な人でした」

花笠のもとに来ていたキルとチシャも、芝原について聞いていた。

「何をさせても、全て完璧にこなしました。掃除のような下っ端の仕事から、私の研究の助手のような専門的なことまで、全て忠実にしました」

はわわ……と、興味がないチシャが隣であくびをする。放っておけば寝ると思ったので、さりげなく腰に手を回し、渾身の力で腰をつねる。ひぇっ、という声と共に、軽く飛び上がるチシャ。これでしばらくはこりるだろう。

「じゃあ、評判も良く?」

キルが聞く。隣でチシャがむくれるのが分かった。

「……いえ。完璧だと評判も良くなるわけではないですから」

ほぉ、とキルは言った。

そうだな、私たちも仕事は完璧にこなすけど嫌われ者だし。

「……評判……悪かったのか?」

チシャが口を開いたことに驚く。

「悪いなんてもんじゃないです。友達はいませんしいつも一人でした。人を嫌ってるみたいで、講義もあまり来ませんでした」

「……じゃあ勉強は?」

「家で一人でやってたんでしょう。そうでもしないと、あの点数はとれませんから」

キルはうなづいた。ポケットの中のレコーダーをいじる。

何かあった時に、と、チシャはいつもレコーダーを回す指示をしていた。こういうところはリーダーらしいと思う。

……まぁ、今までこのレコーダーが役立ったことはないが。

「何で評判がよくなかったんですか」

「さぁ……。私はそこまで彼と親しいわけではありませんし」

「助手……なんですよね?」

「助手といっても、個人的な話なんてしませんよ。終わったらすぐ帰るような人ですし、別に私も知りたいと思いませんでしたし」

「……毒舌ですね、教授」

キルが言うと、花笠は笑った。

「でも、こんなことになるとは思いませんでした」

急にしゅんとする。

「親しくないとは言っても、信頼はしていました。まさか彼が裏切るとは……」

花笠がわなわなと震えだす。怒りが頂点に達したようだ。

「……でも、彼がやったと断定は……」

「あいつだ!」

ダン! という音とともに、花笠の拳が机に叩きつけられた。キルもチシャも、びくっと後ろに飛びのく。

「あいつしかいないんだ。あいつが犯人なんだ! 早く探し出して取り返してくれ!」

大声にぽかんとするキルと、面倒くさそうにあくびを連発するチシャ。花笠は、はっと我に返ったように目を見開いた。

「……すみません。つい取り乱しました……」

「……いえ……お気持ちはよく分かります」

キルは無理やり頬を緩め、ひきつった笑顔を見せた。



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