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型破りな探偵達   作者: 黒猫レオ
4 かっ飛ばせ。
21/26

search 16.

お久しぶりです!

お待たせしました。遅くなってしまい、本当に申し訳ありません(-。-;

「……まだ頭痛いんだけど」

「うっせ。私の好意を無駄にしやがって」

「ちゃんと遊んでたよー!」

「使い方盛大に間違ってたろうが!」

盛大なビンタの音。

車が軽く揺れる。

「緊張感無さすぎだよ、2人とも……。下手したら戻って来れないんだよ?」

「うるせぇミイ。俺が今大事なのは、俺が買ってやったチェス盤だ」

「ヤバイな、キレすぎて一人称が『俺』になってる」

ミイとエヌは顔を見合わせて苦笑した。キレると一人称が変わるクセがあるのは、もちろんキルである。

「だいたいな、あれいくらしたと思ってんだ。3000円だぞ、3000円! 俺の自腹! 分かってんのかニカ、あぁ⁉︎」

「ごめんってー! そんな高いと思わなかったし。第一、俺が見た物全部積むクセあるの知ってるでしょー!」

「知らねぇわ、んなもん!」

また響く乾いた音。ミイは肩をすくめてから、運転席のエヌを見る。

「ねぇ、私たちちゃんと帰って来れると思う?」

「……まだ言ってんのかお前は。ここまで来たんだったら腹くくれよ」

「それはそうなんだけど」

ミイは背もたれに体を預けた。古くなったシートが音をたてる。

「……離れ離れになるの、嫌なんだもん」

ため息の声。呆れた顔をしたエヌが、ミラー越しにミイと目を合わせた。

「それを俺に言うな」

「じゃあ誰に言うのよ」

「当たり前だろ、チシャに言え」

かっと顔が真っ赤になる。素早く助手席のチシャを確認するが、寝息をたてて眠っていた。

「な……何言ってんの⁉︎ わっけ分かんない」

「分かりやすすぎんだよお前は……。何なんだ、根本的にバカなのか」

「はぁ⁉︎ エヌに言われたくないし!」

「俺はバカなんじゃない。お前らと脳の造りが違うだけだ」

何よカッコつけて、とミイが膨れるのを見て、エヌは吹き出した。

窓の外はまだ薄暗い。

午前5時34分。

5人を乗せた傷だらけの車は、宏圀組へと向かっていた。

頭を押さえてやっと静かになったニカを横目に、キルはパソコンを立ち上げた。昨日徹夜でプログラムを改良したせいで、あくびが止まらない。

「ふぁぁ……。えーと、昨日改良したプログラムの準備整えるからチシャ起こして」

「何のプログラム?」

「家の間取りを瞬時に出してくれるプログラム」

ふぁ、とまたあくびが出た。おぉ、とミイが目を輝かせている。

「あれすごいよね。何を改良したの?」

「もっと早く間取りが出るようにした」

キルはノートパソコンのキーを叩く。

「基本は今までと同じ。窓とか屋根の形とか家の形、玄関の場所から大体の間取りを特定するやつだよ。それに幾つかの例をあらかじめ入れておいて、もっと早く出るようにした」

さすがぁ、とミイが手を出す。キルも手を出す。

無言でハイタッチ。

「……うん、えーと。住所さえ入れれば、ネット検索でその家が出るようにしてある。そっから間取りの特定するから、ちょっと遅かったんだよ。でも今回はかなり危険だしさ……指示が遅くなると致命的だから」

ニカは苦笑した。いじけていたニカもくるりと振り向いて、パソコンを触ろうとする。

「おいニカ、触るな」

「えー、ケチ」

「うるさい機械音痴。幾つのプログラム破壊すりゃ気が済むんだよ」

「破壊はしたことないよー? ブラックアウトはさせちゃったけど」

「それで一回パソコン初期化したの誰だ、ガキ」

バタン! と勢いよくパソコンを閉じると、パソコンはキーボードに触れようとしていたニカの手に噛み付いた。

「いっ……たーい! 最低だ! 暴力反対!」

「おーおー勝手に言ってろガキが。もう2度とゲームのカセット買ってやんねぇ」

「え、ちょっと、それはヤダー!」

「だったら黙って車に乗るくらい出来るようになれ!」

本日何度目かの右手が炸裂し、ニカはしゅんと小さくなった。

「……分かったよぉ、ちゃんと静かにするからさぁ……」

「……何だよ」

何かを言いたそうにしているニカを睨みつける。

「……今度の土曜日発売のニューゲーム……欲しーなー……なんて」

フェードアウトしていく声。

キルはため息交じりに軽くニカの頭をこづく。

「上目遣いしても無駄だ。私は男じゃねぇから通用しない。残念だったな」

むぅ、と唇を尖らすニカを見る。

……おい。可愛すぎるぞ。ホントに男か、コイツ?

「普通の男だったら間違いなくオチてたよ、今の表情……」

ミイも思わず呆れた声になる。

「私もかなり今危なかったもん」

「オチかけた?」

「オチてぎりぎり今帰還した」

「一回オチてんじゃねぇか」

もちろん、キルは自分もオチかけたことを言わない。

「おい、もうすぐ着くぞ」

『目的地周辺です。音声案内を終了します』

まるでこれから旅行にでも行くかのような呑気なカーナビが、戦場が近いことを告げた。

「……よーし、やるよ!」

ミイはウエストポーチをつけ、モノクロの手袋をはめた。

「……手袋くらい普通のをしろよ」

「だって服に合わないじゃん? 見て。この服可愛くない?」

メイドのような服。黒チェックのスカートはいつも通り短い。ミイの細くて長い足によく似合っている。

「……まぁいいんじゃないか?」

ようやく絞り出したキルなりの褒め言葉を吐き出し、キルは靴紐を結び直した。

「楽しみだねー。どんな人がいるのかな?」

「ヤクザしかいない。てか人に会うなって言われてるだろうが」

黒一色の手袋をはめるニカと、デカいリュックを軽々と背負うエヌ。

「んん……着いた?」

ようやく、とろんとした目をこすりながらチシャが起きてきた。

「おぅ、着いた。パソコン使い方分かる?」

「ん……分かる」

「じゃよろしく。寝るなよ、司令塔」

キルはピンマイクをシャツの襟に、イヤホンを耳に押し込んだ。

「ピンチになったら……呼んで。すぐ……行くから」

「了解。イヤホン外すなよ」

車のドアを開け、全員で飛び出す。


長い長い1日が始まろうとしていた。




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