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型破りな探偵達   作者: 黒猫レオ
4 かっ飛ばせ。
20/26

search 15.

ホントにお待たせしました!

遅くなり、申し訳ありません!

今回少し長めではありますが、よろしくお願いします。

さて。

黒沼が事務所から出て行ってからのことである。


「んー……いい匂いだねー」

匂いにつられて台所にやってきたのはニカである。

「ん……もう少し……待ってて」

「今日の当番、チシャだったんだねー。嬉しいな」

「そう……言ってもらえると……嬉しい」

じゅうっ、という音がして、チシャはフライパンの中を覗き込んだ。

「ハンバーグの匂いだー」

「ん……ほんと……ニカはハンバーグ……好きだよね」

「大好きだよー! 特にチシャのハンバーグ好きだなー」

ふふっ、とチシャが微笑む。閉められた蓋の間から洩れる湯気が匂いを部屋中に広げていく。

「おー、ハンバーグの匂いがする」

次に入ってきたのはキル。風呂上がりのようで、体から湯気がたっている。

「美味そう。さすが洋食専門のチシャ」

「ん……ありがと……。けど俺……キルの和食も……好きかな」

「マジ? 嬉しいわそれ」

「俺もキルの味噌汁好きー。あと、エヌの餃子も好き」

「あー、あれは絶品だわ。店出せんじゃねぇかってくらいうめぇもん」

「お前ら、それ本人がいる時に言えよ」

がちゃ、とドアが開き、猫背の大男が顔を出した。

「お、エヌだ」

「餃子は研究しまくったからな。美味いのは当たり前だ」

「さっすが」

「……ちょっと、私の話が出てないんだけどー?」

タオルを首から垂らし、ドピンクのパジャマで台所に入ってきたのはミイ。

「匂いにつられて、部屋から出てきたよ。チシャの当番、いっつも楽しみなの」

「ふふっ……みんな……褒めすぎ」

照れくさそうに肩をすくめて見せたチシャを横目に、キルは手際よく皿を並べていく。

「ミイのケーキ、そろそろ食べたいねー」

にこにこしながらニカが言う。

「ほんとだよ。無塩バター買ったのに使わずに期限切らしたの誰だよ」

キルが睨みつけると、そっと目をそらす全身ピンクの少女。

「だって、時間ないもん」

「分かってるけどな、ただでさえ金欠なんだよ。無塩バター、結構高いんだぜ?」

「うぅ……明日作るもん!」

じゅっ、という音。開く蓋から飛び出す湯気。

おぉっと一同から歓声が起こる。

「んじゃ……食べよっか」

チシャの声と同時に、全員が席に着いた。


「……これが最後の晩餐になるかもしんねぇしな」

「縁起でもないこと言うな、エヌ!」

ぱしんっ、と手が飛ぶ。

「ちょっと……食べてる時は……右手禁止……」

チシャに言われて、キルは渋々手を茶碗に持っていった。

「……さっき、いろいろ調べたんだよ」

キルは箸を置いた。ハンバーグは切り分けられたまま、手がつけられていない。

「私たちが何で指名手配されてるのか」

ニカは顔を上げるが、食べる手は止まらない。ミイも無心でハンバーグをがっついている。

……さすがチシャだ。

「『B1』っての調べたら、すぐ出てきたよ。数年前に警察署の爆破事件あったろ? あれの犯人らしいんだ。もちろん、まだ捕まってないから警察も捜索中」

ふうん、と気の抜けた返事をするチシャ。半分残ったサラダを眺めながらうとうとしている。久しぶりの料理で眠くなったらしい。

「私たちがそいつらに関わってるっていう電話のタレコミで、急に指名手配したみたい。名前とかは電話で言ったから分かったらしい。指名手配の似顔絵は、後日送られてきたみたいだ」

キルはハンバーグを右に寄せたり左に戻したりしながら続けた。

「情報は全部電話。だからこの事務所の場所は電話の相手も知らなかったみたいで、まだばれてないんだ。ばれるのも時間の問題だけど」

「何で警察に言いに行かないのー? 俺達関係ないですって」

「んなこと言えるかよ。証拠もねぇし、こっちだってだいぶ大変な仕事してたし、信じてもらえないに決まってんだろ」

ごちそうさま、と静かな声がして、ミイが箸を置いた。皿の中身はない。綺麗に完食している。

「タレコミの相手が誰なのかも分からねぇ、証拠もねぇ、警察は私たちの敵ってわけで。私たちの味方はナシ」

「あーあ。やっぱりねー」

ニカが白米をかきこむ。音立てちゃダメ、とチシャに叱られているが、あまり聞いていないようだ。

「……どうするよ、リーダー」

「急に振られても……」

チシャが困った顔をした。

「どうにも……ならないよ……。でも……一度受けた依頼は……断れないよ?」

どうやらチシャも言いたいことは分かったようだ。

今回の依頼はあまりに危険なんじゃないか。キルは言いかけていた言葉を、水と一緒に喉に流し込んだ。

「うん。美味かった」

これまで一言も発さずに食べていたエヌが茶碗を置いた。

「さすがはチシャ。店出せんぞ」

「ん……ありがと……」

「こらエヌ。私ら今すごい大事な話をしてた途中だ。そしてチシャも照れるな」

顔を赤くして頭をかいているチシャに言い、キルは初めてハンバーグに手をつけた。

口に入れ、噛む。じゅわっと広がる肉汁。タレの味。

「……あー、美味いわこれは」

さらに照れるチシャを眺めて、キルは苦笑した。

これが頼れる私たちのリーダーだなんて、信じられない。


エヌはドアをノックした。ひょこりと顔を出したのは、おなじみの顔である。

「おー、エヌだ」

「おう。ちょっと一戦やらないか」

片手を持ちあげる。そこには傷だらけのゲーム機。ニカの目が輝いた。

「やるー! 待って、俺どこに置いたっけ」

部屋の中に視線を移したニカに続いて、エヌは中に入った。

「……お前、少し片付けろ」

「えー、めんどくさいよ。エヌの部屋も汚いじゃん。お互い様だよー」

「あのな、俺の部屋が汚いのは、道具の配線だらけだからだ。この服と紙クズの山とはわけが違うぞ」

うず高く積み上がった服。そして、前回の依頼の時に必要だった偽書類の失敗作。隅でホコリをかぶっているのは、見間違いでなければいつかニカが無くした水筒だ。

「お前……ひどいぞこの部屋」

「んー? 住めてるから大丈夫」

「そういう問題じゃないだろう……」

エヌは足元を見ながら部屋に足を踏み入れる。ニカが飛び乗っているベッドだけは、いつも使うからなのか綺麗なままだ。ほらここ、とベッドをぽんぽん叩いているが、そこに行くまでに時間がかかる。

……こいつはいつもどこで生活してるんだ!

「何やるー? 久しぶりにチェスでもするー?」

「何でわざわざゲーム機でチェスだ」

「だってやりたくなったんだもん」

がしゃがしゃ、と山の中からカセットを引っ張り出す。途端、雪崩が起きる。

ガラガラガラ……

「あーあ、また崩れた。これどれだけ高く積めるかやってたのにー」

「そんな汚い遊びはするな。あと、お前こないだキルに本物のチェス盤ねだって買ってもらったろ」

「うん。クリスタルの透明のやつねー」

「それどこいった」

「あれもねー、どれだけ高く積めるかやったの」

「チェスの遊び方をことごとく間違ってるぞ。んでどうした」

「うん。結構高く積んでー、テンション上がってさー。調子乗ってもう一個積めそうだから、積んだんだよ」

「んで」

「崩れた」

「だろうな。そういう風に遊ぶように業者は作ってないからな。んで?」

「結構勢いよく倒れちゃってさー。半分割れちゃった」

「お前……」

カセットをゲーム機にセットしながら、エヌは唖然とする。あっはっは、と笑うニカ。

ため息しか出ない。あれで俺もチェスしようと思ってたのに。

「キルに大目玉くらうぞ」

「うん。怖いからまだ言ってない」

「お前そんなことばっかするから小遣い止められんだよ」

「そーなんだよー。小遣い一年くらい止められてる」

「懲りないな、お前も」

ピアノのおしゃれな音がして、黒と白のチェス盤が画面に現れた。

「さーて。俺がこれに勝ったらチェス盤のことキルに言えよ」

え、と口を開けるニカ。エヌはにやりと笑う。

「そ……それはずるいよー! だってエヌチェス強いじゃんか!」

「抗議しても無駄だ。始めるぞ」

「やだやだやだ! 俺怒られんのやだ!」

「自業自得だ。行くぞ」

エヌはボタンを押し始めた。






チシャはご飯中のマナーに厳しいです。ちなみに

チシャ→洋食担当。ハンバーグ得意。

キル→和食担当。味噌汁と肉じゃがが得意。

エヌ→中華? 担当。餃子を研究しまくって極めた。

ミイ→デザート担当。飾り付けがめちゃ上手い。

ニカ→料理名はないが、美味いものを作る担当。一度作ったものは、二度と作れない。

……意外とみんな料理できる設定です。

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