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型破りな探偵達   作者: 黒猫レオ
4 かっ飛ばせ。
18/26

search 13.

「……ニカ」

「……はい」

「……何やった」

「何にもやってないよー!」

「嘘つけ」

「いや、ホントに!」

正座させられ、キルに睨みつけられているのはニカである。

「てか何で俺だけ!?」

「なんかやるっつったらお前だろニカ!!!!! 日ごろの行いが悪いんだよ!!!!」

「俺何もしてないよー! ていうか指名手配されるとしたらキルの方でしょっ!」

「なぜ?」

「おかしなプログラムとか作ってるもん!」

「おかしなって言うな! 仕事に必要なんだから仕方ないだろうが!」

ぱしーん、と炸裂する黄金の右手。ニカは頭を押さえてのたうちまわった。

「……私たち何にもしてないのに……」

と泣きそうなのはミイ。

「いや、思い当たることが多すぎて逆に……」

と言うのはエヌ。

「……何が……ばれたんだろうね……」

「チシャ、その言葉がおかしいから!」

キルは即刻ツッコむ。

「いやでも本当に」

ミイが言う。

「何した? 私たち……」

「分からん」

エヌが答える。

「何でいまさら……」

「だから、答えがおかしいからチシャ」

言いながら、キルも腕を組んだ。

おかしい。なぜ自分たちが指名手配されているのか。しかも、警察が来るわけでもなく、指名手配書だけが貼られている。

「……指名手配の理由って……手配書に書いてあったっけ……?」

「あぁ。確かあったはず」

「ネットで……見れるかな……」

「出してみる」

キルはパソコンを立ち上げて、すごいスピードで何か打ち込む。

「……あった。私たちやっぱり出てる」

「有名人だねー。俺達」

「悪い方にな」

エヌの言葉に、キルはがっくりと肩を落とす。

「……理由……書いてある?」

「あぁ、ちょっと待てよ。えーと……」

キルは自分たちの項目をクリックする。

「読むぞ。えーっと……『びーわん、かんよの疑い』……何これ」

チシャが、は? というような顔をした。

「……何それ」

ミイも首を傾げる。

「聞いたことないよ? びーわん?」

「あぁ。英語の『B』に『1』で」

「それでB1」

あぁ、と答えるも、納得がいかない。というか、B1って何だ? 

「なぁ、この中で『B1』の意味が分かる奴、いたりする?」

キルが聞く。

ミイは首を傾げたままフリーズ。チシャは眠いらしく、首がかくんと折れている。エヌはピコーン、とゲームの音をたてているし、ニカに至っては頭の上にハテナとお花と小鳥が飛んでいる。どうやら考えすぎてパニックになっているようだ。

「……ですよねー」

キルは机に突っ伏した。

残念なことに、この事務所にはテレビというものがない。あったのはあったのだが、ニカとエヌがゲームをするためだけに使って、キルが怒って捨てて以来買っていない。

「テレビとかじゃ有名だったりすんのかな、『B1』」

「さぁな。もっかい調べてみるか」

キルがパソコンに手を伸ばした時、だった。


どんどん!


思い切りドアを叩く音。というか、ドアを殴る音。

「開けろ!」

「ひいっ!!!!!!!」

珍しくミイが飛び跳ねた。

「ちちちちちちょっとキル!」

「大声出すな、落ち着け」

「けけけけけけけけ警察だったりするの? あんな強引に来るの? ……やだやだやだ、まだ捕まりたくない!」

「ちょ、捕まる前提で話すんな! つか『まだ』捕まりたくないって言うな!」

「もーやだ! じしゅする。もう私じしゅするぅっ!」

「早まるなミイ! 落ち着けっつってんの!」

「んー……警察じゃないみたいだよー?」

呑気な声が、緊迫した空気を切り裂いた。

「ニカ?」

「けーさつじゃなさそう。でも、もっとヤバい気がする。やな臭いしかしないなー」

「どけ」

ニカを押しのけ、キルはガラスの向こう側に目を凝らす。

――嫌な予感しかしない。

「……なぁチシャ」

「……ん……何……」

「普通警察ってさ」

「うん……」

「こんなカラフルな格好しないよな?」

磨りガラスの向こうにうごめく集団。しかしそれは、赤やら青やらいろんな色が混じった服を着ている。

大体、服の柄は想像がつく。

「……龍……みたいな柄……」

チシャが言った時、外の集団がまた怒鳴りつけてきた。

「さっさと開けろコラぁ!! 依頼に来たんだよ!」

「え、依頼?」

「あー……もう頼むから仕事のことに反応するの止めてくれニカ……」

「依頼だってー! 仕事じゃんキル! 開けて開けて!」

「いや」

「何でー?」

「よく考えろ、ニカ。外にいる人たちはどういう人か、落ち着いて推理するんだ。まずあの話し方。次にあの服そ……」

「あー、ヤクザね!」

「ちょっ……」

思わず黄金の右腕が炸裂する。ニカの鼻に、水平チョップがクリーンヒット。

「いっ……たーいっ!」

「お前バカっ……」

「おいゴラぁっ!!!!」

「そら見ろよ、思った通りだ。『コラ』が『ゴラ』になったろ?」

ほぼ泣く寸前の顔で、キルはニカに言った。

「聞こえてんぞ全部ゴラぁ!!!!!」

「もーやだぁ……高いビルの上から命綱ナシでバンジージャンプがしたい」

「ミイ、それ死ぬから」

キルはチシャの方を見た。チシャは少し考えた後、キルの目を見て渋々うなづいた。考えていることは同じのようだ。

「ミイ」

「何ぃ……もー私は死ぬんだ……みんな、短い間ありがt」

「分かったから。部屋に戻れ。怖いならコイツも連れてけ」

「えー、俺ー?」

「お前。お前いても変にあの人達を刺激するだけだから」

「えー、本物のヤクザ見たかっ」

「お前は大学で会った間宮さんで十分だ」

ぷうと膨れるニカとミイをミイの部屋に首根っこを掴んで投げ込む。ふこーへいだふこーへいだ、とニカの騒ぐ声がするが、無視。

「……いいか、チシャ」

「……ん……死ぬときは……一緒だ」

「……ごめん、すっげーいい事言ってんだけど、今はシャレになんないから」

「俺も巻き込まれてんだが」

「うん。エヌは死なない。大丈夫」

「根拠はどこから」

「そのデカさ」

「関係ないと思うが」

不満げなエヌをとりあえずソファに座らせ、ドアノブに手をかける。

「……お待たせいたしましたー……」

「あぁ?」

ひいっ、と声が出そうになる。思い切り睨まれ、キルは一回り小さく縮む。

「すいません。こちらへどうぞ」

「ったく、急いでんだこっちはよぉ!」

「まぁまぁ。お騒がせしてすまない」

一番後ろから、ひときわオーラのある人が出てきた。どうやらこの人が依頼にきたらしい。他の人は付き人なのだろう。

「お忙しいだろうとは思ったんだがね。少しいいかね」

「はい。どうぞ」

「ありがとう」

そのオーラのある人は、事務所に入ってきた。数人入ってこようとした付き人を身振りだけで制して、自分一人だけ入ってくる。

「すまんね。若いもんたちは短気なんだ。困ったもんだよ」

「いや……本当に驚きましたよ」

バックバクする心臓をなんとか落ち着かせ、キルは言う。

「なんかされるのかと……」

「いやいや、本当に依頼に来ただけだ。そんなに怯えんでいい」

男はエヌとチシャに会釈し、もう一度キルに目を向ける。

「申し遅れた。私は『黒沼組』の黒沼 せんという。君たちのことは最近知ったんだが、ずいぶんと優秀な探偵のようだ」

「いやー……そんなことないです」

キルは冷たい汗が背中に伝うのを感じた。犯罪ぎりぎりラインをさまよう探偵なんて、優秀と言えるんだろうか?

「……黒沼さん……でいいですかね?」

チシャが口を開いた。相変わらず、緊張しているのかいないのか分からない顔だ。

「あぁ、かまわんよ」

「あの……僕らのことは……どこで……?」

「掲示板だよ」

微かに黒沼の口元に笑みが浮かぶ。

「掲示板?」

「あぁ。警察署の前の」

「あぁ……え?」

キルの額に、またどっと汗が噴き出る。

「えーっと……と、言いますと?」

「かなり危ないことをしているようだな、君たち」

「あー……それはその」

「まぁいい。私は別に警察に突き出そうなんて考えちゃおらんよ。依頼に来ただけだ」

黒沼は両手を上げて目を閉じ、首を左右に振る。

「何で指名手配されてるような私たちのところに来たんですか?」

「考えてみろ、少年」

黒沼はキルに向かって言う。

「あの、私男じゃなくて……」

「こんな奴が、警察と仲間だと思うか?」

「すいません、今私結構重要な話をして……」

「警察に嫌われるような若造がいるなら、そいつに会ってみたいと思うのが私の癖でね」

「あの……」

「とにかく、依頼を聞いてくれないか。少年」

……もういいや。

キルはうなだれた後、黒沼に向き直った。

「……はい。何でしょう?」

「少し危ない仕事にはなると思うが、いいかね?」

うっ、と言葉を詰まらせた時だった。

『危ない仕事ー!? 何何ー?』

げっ、と声が出る。

「てめ……っ、ニカおい!!!!!!!」

「ほう……」

ヤバい。確実にヤバい。

ゆっくり黒沼の方を向く。

黒沼は関心したような顔で、声がした方のドアを見ていた。

「君んとこには、かなり好奇心のある若いのもいるようだね」

「……はい、そうなんです」

もう本気で、泣きそうだ。






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