第3話『散策』
クリスと別れてから、俺は事件現場の一つであるセントラルパークへと足を運んだ。
最初の犠牲者が見つかったのは、この公園のほぼ中央のあたり。当然ながら既にその面影は残っておらず、警察による封鎖もとっくに解除されている。
死体があったであろう場所まで歩いていき、周囲を見渡す。排煙による曇天の下、身なりの良いやつらが昼のひと時を楽しんでいた。
「さすがに目ぼしいものは何もないよな」
事件から時間が立っていることもあり、いつもと何ら変わりない光景が広がっていた。
この場で事件が起こったのは、今からおよそ半年ほど前。早朝の薄暗い時間帯に、ここいらを寝床としている浮浪者の一人が首から上の無い死体を発見した。
所持品等から、死体はマンハッタンの製紙工場で働く労働者の一人と言うことが判明した。そして、その後月に一人のペースで同じような死体がニューヨークの各地で発見されている。
被害者に共通点はなく、場末の労働者だったり娼婦だったり、浮浪者だったかと思えばブルジョワ層の老紳士の死体も先週発見された。
警察はやっきになって犯人を探して入るが、現在手掛かりすら見つかっていない状況だ。
「まだまだ続くとしたら、おそらくそろそろか」
第三の死体が発見されてから、警察による夜間外出の注意がされているがどれほどの意味があるのだろうか。
「まぁ、おかげで飯の種に困らないと言うのは皮肉な話か」
新聞記者の大半は、真実なんて追い求めちゃいない。死肉があれば、群がるだけだ。
俺も、誰もかれも。
「マフィアの関与か……」
先ほどのクリストの会話を思い出す。
正直、今回の件にマフィアが絡んでいるという可能性を、俺はほとんど考えていなかった。おそらく、警察にしても考えてはいあないだろう。
基本的に、マフィアと言うのは死体を隠すものだ。いくら警察に対して賄賂を掴ませようと、そこに決定的な証拠があれば警察とて庇えるものではない。
だから、基本は闇から闇へ。
首の無い死体と言う状況から、警察当局や俺たちマスコミはカルト集団と言う線で考えていたが、何やら雲行きが怪しそうだ。