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第17話『覚悟の夜』

「よく来たな。これから20分後にうちの連中が襲撃をかける手筈になっている。最後に聞いておくが、お前たちはどうする?」

 フェデラル・ホール向かいのアパートメントにたどり着くと、すぐそばに潜んでいたバイナムの部下に部屋まで案内をされた。10㎡程度の部屋にバイナムを含めた4人の男が各々の銃を点検している。

「俺は乗り掛かった船というか、既に飛び込んじまってるしな。それに、此処まで来てネタを取り損ねちまったら文屋失格だろ」

 マーカスの問いに、俺は肩をすくめて答える。もっとも、ネタを取ったところでおそらく記事にはできないだろうが。それでも、此処まで首を突っ込んで最後の瞬間を降りて居るなんていう選択肢は最初から俺には存在していない。

「マーカス、お前はどうする。まさか俺たちをこの場でしょっ引くとは言わねぇだろうな」

 部屋にいた男たちがちらりとマーカスに視線をやる。それでもなお、マーカスは顔色一つ変えずにバイナムの視線を真っ向からとらえていた。

「そうしてやりたいのは山々なんだがな。だが生憎と今は休職中で手帳も何もねぇからな。それに、俺は国家権力や警察の使命に仕えてるわけじゃない。俺は俺の正義に従うまでだ」

「はっ、良い答えだ。お前らの分の獲物も用意してある。表面は別の連中が突っ込むから、俺たちは裏門から行くぞ」

 バイナムが顎で示した場所に置いてある拳銃と手榴弾をそれぞれ受け取り、部屋を後にする。アパートメントを出たところにバイナムの部下8人と合流し、トリニティ教会の裏手を目指す。

「連中の警備はどうなってるんだ?」

 周囲を警戒し教会の裏を目指しながら、バイナムに状況を確認する。

「見張らせてたやつらからの報告じゃぁ、そこまで厳重にはなっていないとのことだ。俺たちは表の連中が突入したのを合図に裏から強襲をかけるぞ」


 教会の裏手にまわりこみ、12.人の集団をさらに6人2組に分ける。

 ウィルとバイナムとは違うチームになり、バイナムの部下に案内されるままに教会の裏手が見える路地裏に身を潜ませる。

 胸ポケットから懐中時計を取り出して時間を確認すると、突撃の予定時刻まであと7分ほど。俺は煙草に火をつけて、ゆっくりと紫煙を吐き出す。

 そっとホルスターに入っている拳銃に手を当てる。バイナムから受け取った銃は、自分で用意したものよりも口径が大きく、ずしりと存在感を主張してくる。

 早鐘のようになる心臓を落ちつけようと、深呼吸を二度。その時轟音が響いた。

「合図だ、行くぞ」

「まったく、派手な合図もあったもんだ」

 一人小さく悪態をついて、タバコを路地に捨て他の連中の後に続くように駆けだした。


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