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魔導士ユーナは止まらない4

 ジユウガ丘。オンラインゲーム「RINE-リンネ-」に初めてログインしたプレイヤー達が、初心者用の街であるトーキョーである程度の知識を得た後に来るであろう、初心者用の草原である。


 小高い丘もいくつかあり、名前の通り魔物達が自由に闊歩する場所でもある。

 ここでゲームならばプレイヤー達はボタン一つ二つで魔物を倒してアイテム収集やお金を稼ぐのである。


 夕焼けに染まる草の絨毯は赤く、レッドカーペットが広がっているような臨場感。

 そう、ゲームと現実が混ざったこの世界で、わたくし魔導士ユーナは目の前に広がる本物のフィールドにただ呆けていた。


 ゲームと現実が混ざってしまったのは阿修羅という存在が、この世界にオンラインゲーム「RINE-リンネ-」のあるイベントで遊んでいたわたくし達を引き込んだため。

 どうやら黒幕であろう彼は修羅道、つまり闘いの世界を形成するためにゲームとわたくし達の現実を混ぜたのだろう。


 街である程度の現実とゲームが混ざったのを確認し、コージさんというフレンド、わたくしが所属しているギルド「流星の旗」のリーダーと一緒に今度はどこまで戦闘において現実とゲームが混ざっているか確認しに来たのだ。


 しかしコージさんの一番の目的はギルドルームの拡張を行使するための資金稼ぎだ。生真面目で堅物の彼はわたくしと一晩同じ部屋で眠るのすら禁忌と言わんばかりに拡張を決めたのだ。

 わたくしはそんなコージさんだから一晩くらいなら同じ部屋で眠っても良いのだが、融通が利かないので仕方なく日が傾いた草原に足を踏み入れたのだ。


 もしかしてコージさん、同じ部屋で眠るのを勘違いしてるんじゃないだろうな…同じ部屋で眠ると言っても同じ布団で寝るとは一言も言ってないのだが。


 しかし戦闘確認はいずれにしろ現実に戻るためのレアアイテム宝玉天照入手のため不可欠である。訓練と今後のために経験を積むとするかとわたくしは決めた。


 この世界でわたくし達は死なない。肉体がアバターのため、何度も再生できるから。それでも何度も死んで生き返るなんてわたくしはごめんだ。



 ★



 結果。魔導士は恥ずかしい。


 魔法を使うためには呪文が必要である。これは街で手に入れた「キビシスデバイス」というゲーム上でメニューとして使っていた機能を補うための、タッチパネル携帯電話を模倣したような道具で確認済みである。


 簡単な攻撃だけなら頭の中で念仏を唱えるように、炎と念じれば簡単な炎が出せる。しかし大きな魔法となると目の前に浮かぶ文字列を読み上げないと魔法が発動しないらしい。


 文字列はわたくしの周囲を筒のように包み込む、いわゆるアニメで魔法少女が魔法陣から浮かび上がる文字を身にまとうような感じの演出の文字を読まなくてはいけない。


 そこまではいい。しかし明らかにこの文字列が魔法ファンタジーらしいというか、一歩見方を誤ればただの若い頃の黒歴史、うっかりノリで作り上げた魔法呪文に酷似しているのだ。冥府めいふの炎と聞いて、何人のたうち回るだろうか。

 淵獄えんごくの暗き炎という単語を声に出して読み上げなければ魔法が発動しない。わたくしの恥ずかしさを理解して頂けただろうか。


 魔導士はゲーム内設定では杖を使わずに魔宝石の力で戦う上級職である。わたくしの場合は紫色の短髪につけている黄金の蝶の髪飾りが魔宝石、武器である。

 魔法を使いたいという思念を感じ取ると、髪飾りが淡く黄金色に輝いて光が溢れる。その光が文字となってわたくしを包み込んでいくので、わたくしはその文字を読み上げなくてはいけない。


「く、暗き夜明けの闇をもや…燃やし尽くす…たける炎…」

「ゆ、ユーナくん!!早く呪文の詠唱を!!」


 目の前で黒豹が角を生やしたような魔物の牙を避けているコージさんが焦ったように告げてくる。コージさんのような戦士職業の場合は必殺技を使う場合は呪文の代わりに動作が必要となる。


 そのシステムに慣れてないコージさんは大剣を振り回すか盾で身を守るくらいしか行動できていない。それでは大したダメージを与えられないので、わたくしの魔法による援護が必要なのはわかる。

 わかるが、この呪文システムは明らかに恥ずかしい。まず呪文のセンスが問題なのである。これなら技名である「あかつきの炎」と叫んだ方が楽なのに、誰だこのシステムにした奴。おそらく阿修羅だ。


 そう思うとわたくしはやけくそ気味に呪文の詠唱を早口で進めていく。内心では阿修羅とか修羅道とか存在自体の黒歴史野郎がと叫びまくっている。


「我が炎は暁!!刹那せつなきらめき!!くらいなさい、こんちくしょうがぁあああああああああああ!!!」


 最後の一言というか叫びは呪文ではない。わたくしの本音である。


 それでも魔法は立派に発動したらしく黒豹に角を生やしたような魔物「パンサー」を燃やした。この魔法は弾のように飛んでいくのではなく、対象を直接燃やす。

 つまり魔物自身が発火したように見えるのだ。


 黒と赤が混じったような炎に身を焼かれて、魔物は呻き声を上げながら光の粒子となって消えた。断末魔はこちらが気分を害するほどの生々しさだったのに、死体は残らない。その場に倒した際に貰える金貨袋やアイテムが残っている所がやはり現実とゲームが混ざっている証拠。


 魔導士であるため遠距離で無傷のわたくしと違って、聖騎士である近接攻撃をしていたコージさんは傷だらけだ。かすり傷や軽い出血が切り傷から流れ出ている。どうやら死なない代わりに出血はあるようだ。


 わたくしは「キビシスデバイス」を胸ポケットから取り出して、アイコンをタッチしてHPを確認する。

 コージさんのHPは十分の一ほど減っている。初心者用の草原で元のゲームでは高レベルであったわたくし達はあまりダメージを受けないらしい。


 しかしコージさんのすり傷や切り傷を見ていると、これだけ傷ついているのに今より十倍の傷を受けないと教会に送られないのかと絶句してしまう。

 それくらいコージさんは傷ついているように見えた。


「回復薬…使います?」

「いや、いい。見た目より全然痛みがない…不思議な気持ちだ」


 真面目な顔でコージさんは言う。確かにデバイスで確認した時にわたくし達の痛覚は鈍くなっているとあった。しかし傷だらけの姿で全く痛みがないとはある意味恐ろしい。

 コージさんは自分のデバイスを取り出して必殺技に必要な動作を確認している。わたくしのデバイスは紫色であるが、コージさんのデバイスは人柄に寄り添うような真っ白である。しかし汚れやすそうだ。

 銀色の鎧では動きにくそうなのにコージさんは予想以上に動けている。これもやはり重力が軽いせいなのだろう。

 現実とゲームが混ざったこの世界ではわたくしでさえ二階ほどの高さまでジャンプできてしまう。


 疲れもあまり感じない。今夜はずっと動いていられそうなほどである。


「コージさん、わたくしの呪文は思い浮かべれば目の前に文字列が出てきますわ」

「そうだな。まるで文字が光となって魔法陣を作っているようで綺麗…」

「そういう与太話は後にして、コージさんも思い浮かべれば必殺技の動作が出てくるのでは?」


 コージさんは目を丸くし、顎に手を当ててその手があったかと言わんばかりに頷いている。まさか本当に気づいていなかったとは恐れ入る。


 普通に考えてゲームをしていたプレイヤー達にいくら重力の制限がほぼ無いと言っても、インドア派が多いであろう彼らにそんな達人のような動きを求められても真似できるはずがない。

 しかし阿修羅はこの世界を戦い続ける修羅道のように言った。ならば戦うための技術が必要になってくるはず。


 だからこそコージさんのような戦士職も魔導士のような補助機能があると思っていたが、正解のようだ。


 コージさんは試し切りと言わんばかりに近くにあった大木に向かい、盾を構えて走り出す。そして大木を揺らすほどの衝撃を盾で与えて、大剣で真っ二つに斬る。大木は光の粒子となって消えて、その場に素材アイテムだけが残った。


 素材アイテムはレアアイテム生成や売って換金もできる有用なアイテムだ。コージさんはデバイスを操作してその素材アイテムをデバイスの中にあるアイテム袋の中にしまう。

 デバイスのおかげでわたくし達は荷物袋という邪魔な存在に煩わされることがない。便利だがファンタジーに重きを抱いているこの世界でそれはどうなのかとツッコミたい気持ちは今でもある。


 ちなみにコージさんが大木を斬った技は「衝撃斬しょうげきぎり」といって、あまり多くの動作を必要としない基本的な聖騎士のスキルである。


「ユーナくんの言ったとおりだ。確かに技を思い浮かべれば、体が自動的に動いた」

「…自動的に?」

「ああ。意識するよりも楽に動けた」

「それはつまり…意識的に動く必殺技と無意識的に動く必殺技があるということですわよね」


 わたくしは少し考える。意識的に動く場合は動作を途中で止めることができる。しかし無意識、しかも自動的に動くという動作は途中で止めることができないのでは、と。

 すると大技を使う時に無意識的ではキャンセルが効かないということだ。それは相手が一撃必殺の技を使ったとしても避けれないのと同義語だ。


 コージさんは聖騎士という近接的な攻撃を主とした職業である。やろうと思えば魔法も使えるが普段のプレイを見ていると、基本突撃するプレイスタイルだったはず。

 相手の間近に迫って視線を惹きつけ、後方で戦闘するわたくし達を守る。それがコージさんの戦い方で、これからもきっと変わることはないだろう。

 だからこそわたくしは安心して後ろで呑気に呪文を呟けるが、代わりにコージさんがいなくなるとわたくしは魔法が呟けなくなる可能性が高くなる。


 最悪二人共教会送りにされるだろう。だからこそコージさんには悪いが、近接として前線に残り続けて貰わなければ困る。


「コージさん、なるべく多くの技を意識的に使えるようにしてくださいな」

「了解した。いざという時に私がいないのではユーナくんが危ないからな」


 快活な笑みを浮かべてコージさんは前を向く。真面目で堅物だがコージさんは頭は悪くない。察しは悪いが知恵はある方だ。

 だからわたくしと同じことを考えて、今言ったことも理解してくれたのだろう。やはりコージさんをギルドリーダーにして良かった。この人なら大丈夫だという安心感を周りに与えてくれる貴重な人である。


 ギルド「流星の旗」を作ろうと言ったのはわたくしだが、リーダーには向いてないことをわたくし自身が一番理解している。わたくしは行動することは得意でも立ち止まって人をまとめるということができない。しかしコージさんは周囲を確認してはぐれている人がいたら見つけてまとめてくれる。


 わたくしが猟犬としたら、コージさんは牧羊犬といったところだろう。同じ犬でも全く役割が違うのだ。


「しかし…このままでは拡張機能も遠いな」


 コージさんとわたくしが一時間かけて稼いだ金貨の数字をデバイスで確認してコージさんが項垂れる。なにせギルドルームを拡張するにはこの百倍、つまり百時間は必要となってくるのだ。


 休まず戦ったとしても四日以上はかかる。途方もない話だ。


 まずこのジユウガ丘という場所自体が初心者用の草原だ。素材もアイテムも金貨も微々たるものである。

 もう少し稼ぐなら遠出しなくてはいけないが、魔物達の断末魔や慣れない戦闘で体力的に余裕があっても精神的には辛い。


 この世界は現実とゲームが混ざっている。しかしわたくし達はまだこの世界に来て一日目で、混乱は続いているし見つからない法則も多数ある。つまり慣れてない環境で動き続けているのだ。


「コージさん、今日はこのくらいにして…」

「いやしかし男女二人が同じ部屋で眠るのは教育的に良くないし第一ユーナくんはもっと危機感を持って真摯な対応をするべきだと思うしその前に意外と出会ったら胸が小さいことには驚いたが可愛…ではなくてなんにせよ知り合いとはいえ如何なる緊急時においてもそんな同じ部屋で眠るなんて言語道断というかつまり私が言いたいのは」


 あまりに長い口上にわたくしは少し苛つき、半分ほど聞き流してから問いかける。


「コージさんはわたくしを襲いますの?」

「神に誓ってもいい。決して襲わない!!」

「なら安心ですわ。もし襲ったなら…神様の元に即時逝けるように潰してあげますわ」


 どこをとは言わなかったが、コージさんは理解したらしく青い顔をして内股になる。

 男性だったらなんて惨いことをと言うだろうが残念ながらわたくしは女性であるため、男性のその痛みは理解できない。


 この世界でなら痛覚も鈍っていることだし、わたくしのようなか弱い女性の一撃などさほど問題にならないだろう。

 ええ、わたくしはか弱い女性なのだからそんな悪鬼を見るような目で見ないでほしい。


 デバイスでお互いギルドアイコンからギルドルームに戻るの項目をクリックする。すると背景だけが変わったようにわたくし達は一歩も動かないまま、ギルドルームに瞬間移動した。

 何の違和感も重力も移動も感じなかった。本当に場所だけが変わった感覚で一瞬呆けてしまった。


 コージさんも同じらしくデバイスを眺めたまま硬直している。


「便利ですけど…慣れそうにありませんわね」


 わたくしは欠伸を噛み殺しながら家具が出せるギルドルーム付属のデバイスを使い、かなり前の、まだゲームで遊んでいた頃手に入れたベットを操作して出す。

 その際に気をつけなくてはいけないことはデバイスの近くにベットが出てくるのだ。


 しかもコージさんが二回ほど頭の上に壺をぶつけたことを鑑みるに、頭上から出てくることがわかる。つまりベットも頭上から出てくるはず。

 いくら痛覚が鈍くなっていて重力が軽いという面があっても、わたくしはベットに押し潰されるのはごめんだ。


 デバイスで操作してベットを二つ取り出すを選択して、重力が軽くなっているのを利用して壁を勢いよく蹴る。そうすれば反対側への壁に向かう、しかも現実ではありえない飛距離と速度でだ。

 予想通り先程までわたくしが立っていた場所に積み重なるようにベットが二つ現れる。わたくしは空中で軽く回転して浮くように着地する。重力が軽いのは思ったより便利だ。


 しかしコージさん、なぜ顔を赤くして鼻元を押さえているのか。




「…ユーナくん、スカートなのだから…その、派手な行動は…」




 わたくしは自分の格好を思い出す。魔法学校をイメージしたようなミニスカートの制服。

 可愛いからという理由でゲームでも着ていたお気に入りの服装で、ゲームの時は角度調整やポリゴン操作によって黒くぼかされていた。


 しかし今は現実とゲームが混ざってしまっている。スカートは風に吹かれたら翻るし、ポリゴンでぼかしていたところも再現されているということで…


「っぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 色気も何もない声でわたくしはコージさんが記憶を喪失できるように何度も殴ったり、ベットをぶつけたり、魔法を出して攻撃したりしてしまった。

 そしてある程度コージさんが動けなくなるまで殴ったところで我に返り、冷や汗をかく。


 別にPKのつもりではなかった。それでも行為としてはPKそのものである。このままではNPCによる教会送りするための兵士がわたくしを殺しにやってくるのではないか。

 慌てて周囲を見回すが、ギルドルームは静寂そのものでなにも起きない。わたくしは鼓動が不気味なほど静まるのを感じながら胸ポケットに入れていた「キビシスデバイス」を取り出して確認する。


 ギルドルームの項目にわたくしの考えそのものの答えが載っていた。


「ギルドルーム内での行動は全てが容認される……それって、つまりは…」


 PKは恐ろしい。でもアバターという肉体を得たわたくし達は何度でも生き返る。失うのはアイテム全部と所持金額半分。

 この世にはそれよりも恐ろしいことなどいくつもある。性暴行、監禁、拷問、誘拐、犯罪だって突き詰めれば人間を飼い殺しできる。肉体が死ななくても精神が死ぬことだってある。

 コージさんが起き上がってわたくしが注視している画面を横から覗いて同じ顔をする。


 希望をいくつ見つけても絶望が湧いて出てくるような、おぞましい蟲達が噴き出て止まない穴を見つめるような底なしの闇。

 それを眺めている人間の顔はきっと醜い。そんな顔を二人揃ってわたくし達は並べている。


 ギルドルームは個人で所有することも、集団で所有することもできる。またやろうと思えば安全圏の街以外、フィールド内にも隠れ家としてギルドルームを洞穴に作れるゲームシステムもあった。

 わたくし達は宝玉天照を見つけなければ現実には戻れない。そのためには魔物と戦うしかない、さらには同じ意志を持った人間達と奪い合わなくてはいけない。

 奪い合って殺し合って、きっとそれで心折られる人間もいるだろう。


 そんな人間はきっとこの世界で好きなことを始める。法も何もない世界でできる限りの残虐を楽しみ始める。

 わたくし達はそんな人間とも戦わなくてはいけないだろう。


 全部阿修羅の思惑通りの世界。戦い続ける世界。


「ユーナくん、その…」

「………せんわ」

「え?」


 コージさんが慰めようとした言葉を途中で遮ったわたくしの声はきっと低い。響くような低音でどこか熱を感じるような揺らめきを含んだ声。

 燃え盛る炎を見つめるようにコージさんはわたくしを見ている。


「止まりませんわ、わたくしは!こんなところで止まってやるもんですか!!絶対阿修羅に一泡吹かせてやりますわよ、コージさん!!」

「は、はい!!」

「まずはギルドメンバー収集しますわよ!!かつてゲームで遊んだ方達ですわ!!彼らもきっとこの世界で戦い続けてるはず!!ならば、わたくし達は集まってギルド流星の旗として反旗を翻すべきですわ!!あんな三面六臂野郎の思惑通りに戦うなんてまっぴらごめんですわ、いいですわね、コージさん!!!」


 目標を決めた。十数人いたギルド「流星の旗」、わたくし達が一緒にゲームして通じ合ってきた繋がり。

 何人かゲームできなくなったが在籍しているのを含めるともっと人数は少ないが、わたくしがイベントでこの世界に来た時には、少なくとも他に五人仲間がいた。


 あのゲーム内イベントで謎のアイテムカルマを手に入れたのが始まり。その業によってわたくし達はこの世界で戦うしかなくなった。

 ならばあのイベントで遊んでいた仲間五人は必ず同じ世界に来ているはず。


 その仲間を集めて戦う。宝玉天照を奪い合う戦いじゃない、こんな馬鹿げた世界を作った神様をぶん殴るための戦いだ。

 ゲームと現実が混ざったこの世界で、人間が神様に戦いを挑んたっていいだろう。現実ではありえないことが起こる、ゲームのようなこんな世界なのだから、こちらも利用させてもらう。


「まずは寝て英気を養いましょう!!いいですわね、コージさん!!」

「あ、ああ」


 わたくしは軽々とはいかずともベットを一人で壁に隣接するように移動させ、すぐにおやすみと伝えて布団の中で眠りの世界に落ちる。

 目が覚めて現実に戻っていたという夢オチはわたくしはいらない。絶対に同じゲームと現実が混ざったこの世界で目を覚まして、阿修羅を殴るための準備を始めてやると意気込みながら、気持ちいい羽毛に包まれて瞼を閉じた。

20140828(改)

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